dia-top.gif (8184 バイト)

【 ローグ、ニケ その3・パーティー結成 】
〜Diablo Story No3〜



 明け方近くトリストラムに着いたニケとキリーは、宿、日の出屋にそれぞれの部屋をとり落ち着いた。思ったより疲れ切っていたニケはそのまま寝入り、目が醒めたのは、その翌朝だった。

 宿の階下にある食堂兼酒場へ行く。
戦士風の男が数人、それぞれ食事を取っている。ニケはテーブルにはつかず、宿の主人がいるカウンターに座った。
「おはよう、よく眠れました?」
キョロキョロしながら座ろうとしているニケに、主人のオグデンが声をかける。
「あ、おはようございます。はい、おかげさまで、ぐっすり!」
主人に顔を向け、にこっと微笑む。
「えっとー、黒パンとあったかいミルクお願い。」
「はい、はい、黒パンとミルクね。少々お待ちください。ハムエッグなんかもどうです?」
「いいですね。ください。」
「はい。」
ニケの屈託のない笑顔に、主人も思わず微笑み返す。
「なんだ、おチビちゃんじゃないか?ホントにやって来たのか?」
聞き覚えのあるその低い声にニケは振り返る。
そこには、思ったとおり、彼女が今一番逢いたくない人物、荒野で逢った大男が立っていた。
その言い方にまたしても気分を壊したニケは、じろっと睨むと向きを変え、素知らぬ顔をする。
「おいおい、まさかもう忘れちまったってわけじゃあるまい?」
男はどかっと横のイスに座る。
「ま、まさか!あ・・あなたが失礼な事言うから!」
かっとなって男を見る。
「チビだからチビって言っただけだ。」
「・・・・・」
そう言われては、返す言葉のないニケはむっとした顔つきで、そっぽを向く。
男が指で棚のビンを指すと、オグデンはすっとグラスを置き、並々とビールを注ぐ。
「ニケはニケでもあいつじゃない・・・。」
「え?」
小声で一人呟くように言ったのだが、ニケには確かに聞こえた。
「あいつじゃないって?」
思わず、男を見る。
男は一気にグラスを干すと、目配せで追加を要求する。
−コポポポポ・・・−
ニケの問いに答えず、男は何かにその想いを馳せているかのように、グラスがビールで一杯になるのをじっと見つめている。
「あのぉ・・・」
「なんだ?」
ようやくニケに応える。
「あいつじゃないって?」
「ん?・・ああ、その事か・・。ま、俺の知っているニケじゃないってことさ。」
「あたし以外にもニケっていう人を知ってるんですか?」
「まぁな。」
「あの、もしかしてその人もローグですか?あたしより15、6歳位年上の?背は190センチくらいで、女にしては高くって・・あたしに似た・・」
ニケには心当たりがあった。
「そうだな、ちょうどおチビちゃんをもっと大きくして女っぽくした感じだな。」
「あ、あの・・この街にいるんですか、その人?」
ガタっとイスを勢いよくはねて立ち上がる。彼女の顔は怒りでなく、興奮して赤みがさしている。
「ん?そんな事より、早く故郷へ帰んな、おチビちゃん。なんなら途中まで送ってってやってもいいんだぞ?」
「はぐらかさないで下さい!その人はこの街にいるんですか?」
「さあ?」
知らないというような素振りに、がっかりしてニケは再び腰掛ける。
「知り合いか?」
それ以上、もう一人のニケの話はするまいと思ったのだが、くってかかってきた時とは対照的に、あまりにもしおれているニケに、男は思わず声をかける。
「・・・姉なんです、その人。あたしが生まれる前に弓探しに出掛けて、逢ったことはありませんけど・・でも、話には聞いてるんです。すっごく弓が上手くて頭も切れてて、次の族長になるに違いないって村のみんなから言われてたって。」
「ふーん・・まぁ同一人物かはどうか知らねぇが、確か、ニケ・コラソードとか名乗ってたな。戦士としても女としても上等だった。」
「間違いありません!姉です!その人!」
興奮して叫び、男の目を見つめる。
「そうか・・・姉か・・・。」
そんなニケの視線を避け、男はぐいっとビールを呑み干す。
「それで、姉は?この街にはいないんですか?」
「・・・・。」
それには答えず、男は立て続けに呑み続ける。
なんとなく声をかける気配ではないと感じたニケは、じっとそんな男を見つめていた。

 「性懲りもなく、またニケちゃんをからかってやがるのか?」
その声に振り向くと、いつの間にかキリーがニケの後ろに来ていた。
「よ!おはようさん!よく眠れたか?」
敵意丸出しの顔つきが、ニケと目が合った途端に笑顔に変わる。
「はい、ぐっすり!」
つられたニケも笑みを返す。
「そっか、それはよかった。」
キリーはニケの隣、大男とは反対側のイスに座る。
「で、ホントにニケちゃんも修道院の地下に潜るのか?」
「キリーさんまでそんな事言うんですか?」
きっとキリーを睨むニケ。
「ごめんごめん・・別にニケちゃんを馬鹿にしてじゃないのさ。ただ、昨日一日街を歩き回っていろいろ情報を集めてたら、ちょっとやばいんじゃないかなあ、って思ってさ。少なくとも興味本位に潜るところじゃない。」
「あたしは、自分の弓を見つける為に来たんです。絶対ここにあるって思うんです。それに、魔王の復活も阻止しなきゃ!」
「はははははっ!威勢のいいおチビちゃんだぜ!身の程知らずも大概にしとくんだな!」
酒場中に響くような大笑いをし、男は立ち上がる。
「俺はここで呑んだくれている腰抜け集団よりいいと思うな。ニケちゃんがその気なら、俺はとことん付き合ってやるぜ。ま、大船に乗ったつもりでいていいよ、ニケちゃん。俺様が守ってやるから!」
「ほうほう、大したナイト振りだ。ま、せいぜい頑張りな、と知らん顔できりゃいいんだがな、俺も結構お節介でな・・魔導士とローグだけじゃ、やばいぜ。なんなら、俺がついて行ってやらんこともないが?」
男は再びイスに座り、ニケの頭越しにキリーに話しかける。
「結構毛だらけ、猫灰だらけ!と言いたい所だが、戦士がいると助かる事は確かだ。この際、好みを言ってても仕方ないし・・あんた、腕が立ちそうだしな・・」
前日、一日中一緒に潜る仲間を捜し回ったが、いまいち仲間に欲しいと思うような戦士は見つからず、キリーは腕は立つらしいこの男で手を打つことにした。
「俺としても、地下深くまで潜るにゃ、腕の立つ魔導士が必要なんだ。ま、お互いさまってとこだな。おまけは・・、我慢しとくか・・。今ここにゃ他に腕の立ちそうな魔導士はいないしな・・ま、仕方ないか・・。」
ちらっとニケを見て言う。
「おまけって、もしかして、あたしの事?」
「他に誰がいるってんだ?」
男は、大仰に両手を広げてみせる。
「まぁまぁ、ニケちゃん、そうかっかしないでさ。俺たちにとっちゃ、このだんなの方がおまけなんだし。」
くってかかろうとしていたニケを制止し、キリーはニケにウインクする。
「よく言うぜ。」
男は、半分呆れ気味に苦笑いする。
「ま、ここまで来たんだし、あのニケの妹なら少しは使えるだろう。だが、覚えておけ、他人を充てにするな!自分の身は自分で守れ!下に行けば行くほど、他人のことなど構っていられなくなる。分かったな?それができないようなら、さっさと帰るこった。」
「できます!」
まだ半分小馬鹿にしている顔つきの男をニケは睨み付ける。
「よーし、その言葉を忘れるな!」
そんなニケににやっとし、そして、キリーと視線を合わせる。
「じゃ、そういう事で、商談成立だ!よろしくな。俺は、アルバート。アルって呼んでくれ。」
「よろしくな、アルのだんな。」
二人は、お互いの力を測るかのように、しっかと握手をした。



<<Back>> <<Next>>

【DIABLO】