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【 ローグ、ニケ エンディング2 】
〜Diablo Story No3〜



 「・・誰か・・・誰か、あたしを殺してぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!」
心の奥から絞り出すかのようなその叫びを、キリーは微かな意識の下で感じ取った。
「ニ・・・ニケちゃ・・ん・・・?」
その声は確かにニケのもの。愛する少女のもの。
気の遠くなるような痛みの中、キリーはそれでも全身の力を振り絞って立ち上がる。ともすれば倒れそうな身体に満身の力を込め、立つ。
(ニ、ニケちゃんは・・・ディアブロのところ・・か?)
目にとまったスタッフを杖代わりにし、周囲を見渡す。闇魔導士を誘導してきた為、ディアブロのいる洞窟とは随分離れている。
(い・・行かないと・・・ニケちゃん・・・・)
「ふーーーーー」
大きく深呼吸をする。すでに魔導力も尽き、それを回復させるポーションも、もう手元にはない。それでも行かなくてはならない。キリーは精神を集中すると最後の生命力をそれに変える。
キリーの意識は、ニケを探す。ニケの気を探って彼女の元に移動する為に。
−シュン!−

 そして、移動後、キリーが見たものは・・・
「ニ・・ニケちゃん・・・・?」
目の前に仁王立ちしているのは、確かにニケだった。が、その頭部に、キリーの愛したあの可愛らしい顔はない。身体こそはまだニケのものだった。が、その頭部は、ディアブロのものへと変化しつつあった。森の妖精を思わせる薄緑の瞳は、今や邪悪の赤色に染まり、その顔は悪魔の形相へと変わっていく。
「殺してーーっ、キリーーーッ!!」
再びキリーの心にニケの叫び声が聴こえたように思えた。
「ニ・・ニケーーーーっ!」
全てを悟ったキリーは、足下に転がっていたニケのものと思われる短剣を両手でぐっと握りしめると、最後の力を振り絞り、ニケに突進していった。

−ザシュッ!−
変化途中であったディアブロに抵抗する間はない。
その憎むべき魔王の頭部は、ニケの身体から切り放された。
「ニ、ニケ・・ごめん・・・お、俺・・守りきれなかった・・・」
飛び散る鮮血を浴び、それでもキリーはかまわずニケの身体に駆け寄り、そっと抱き起こす。キリーの瞳から涙が後から後から止めどなく溢れ出、頭部を失くしたニケの身体を濡らす。
「ありがとう、キリー・・・」
ふと、キリーには、満足そうに微笑むニケの顔が、まるでそこにあるかのように見えた。
「ニケ・・・」
そして、ふっと消える。
「ニケーーーーッ!」
洞窟の中を何処までも、キリーの悲痛な叫び声がこだましていた。



 数年後、再び平和な街に戻ったトリストラム。地下迷宮は、何人も二度と足を踏み入れないようその道を塞がれ、取り壊された悪夢の修道院の跡地には、大聖堂が建立された。
 ディアブロは、ソウルストーンは、ニケの頭部にささったまま、地下深く封印されていた。もはやこれ以上他の宿主を求めることのないように。
 地下16階の小さな祠。幾重にも封印されたそこには、そのニケの頭部を愛おしそうに膝に抱く、魔導士キリーのミイラがあった。ニケと共に魔王を封印し続ける為に。

 そして、街の広場にある噴水の中央には、頭部のない少女の彫像が立っている。弓を引き絞り、今にも空に向けて矢を放たんとしている一人のローグの。
その彫像を見る時、人々は、その首の上に自分自身の理想の女性の顔を思い浮かべる。

 ・・・願わくば、あなたの目に映る顔、それが、魔王のものでない事を。



<<THE END>>

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【DIABLO】