精霊のささやき

そ の 2



 「ナメナメ〜〜・・・。(あ〜れ〜・・・。)」
D.Sにはたき跳ばされたナメナメ、つまりバ・ソリーは、運良く(?)湖にポチャーーン!と落ちたのだった。
(ふーーー・・D.Sの奴・・何てことしてくれるんだ?湖だったからまだよかったものの・・・何て言ってる場合じゃないぞ!シェラは大丈夫なのか?)
独り(一匹)焦り、岸を探してキョロキョロするナメナメ。精一杯その目を伸ばして。が、何と言っても今はナメクジ。普通ならさほど大きくない湖も海のように広い。
「ナメ〜!(シェラ〜!)」
浮き沈みしつつ、泳ぐこともできず、ナメナメは水面を漂っていた。
(くっそーー!なんでナメクジなんかにぃ・・・!)
自分が非力なナメクジであることがこれほど悔やまれた事はなかった。つい少し前までは、シェラの肩や膝の上で上機嫌だったはずなのに・・この雲泥の差。
と、その時、湖底から黒い影が急激に浮上してきた。
(ん?)
その影に気づいたナメナメは、ピンチが自分にも迫りつつある事を悟った。
「ナメェーーーーー!(ギェーーーーー!)」
その黒い影は、巨大な鮒・・大きく開いたその口にナメナメを飲み込もうというつもりだと言うことは、容易に判断できた。
(くっそぉーー!人間でさえいれば、反対に奴を喰ってやるのに!)
地団駄踏みながら(実際には踏めないが)必死で暴れたつもりのナメナメ。しかし、そこは、水面。自由がきくはずもなく、あっさりと鮒のお腹の中。
「ナメナメ〜〜・・。(シェラ〜、助けてくれ〜。)」
(こんな所で死にたくない〜!)
真っ暗な鮒の胃袋の中、ナメナメは、絶望感に打ちのめされていた。

 −ザクッ!−
(ん?!)
迫り来る胃液との鬼ごっこの果て、いつの間にか寝てしまったのか、はたまた気絶したのかは覚えがなかったが、とにかく、ナメナメは、刃物を入れる音と、急に差し込んだ明かりで、目を開けた。
どうやら鮒は網に掛かったらしく、船の上、一人の漁師が早速食べようと料理していた。
鮒の腹部を裂いたその包丁は、運良くナメナメのいた胃壁まで達していたのだった。
(おおーーー!天の助けだー!)
ナメナメは、漁師に注意を払いながら、無我夢中でそこから這い出た。
と、一難去ってまた一難。漁師には気づかれずに鮒の身体から出たものの、目敏くナメナメに気づいていたものがいた。
それは、子育て真っ最中の一羽の鳥。彼女は、ナメナメを見つけるとすかさず急降下!
「ナ、ナメーーー!(ギ、ギャーーー!)」
黒い影が全身を覆ったと思うが早く、ナメナメは再びさらわれ人(?)となった。
「ナ、ナメーッ!ナメ、ナメッ!!(こ、こら!離せぇ!あほう鳥ぃ!)」
必死で暴れれば暴れるほど、くちばしはきつくナメナメを締め付ける。
(か、身体がちぎれる〜・・・ (TーT  )
ナメナメは、その痛みで暴れるのも止め、観念したその時、眼下の木の幹にその鳥の巣らしいものが見えた。
そこには、5羽の雛鳥の黄色いくちばしが見える。
(お・・おい・・・・冗談だろ?)
ナメナメはもう全身真っ青。青虫状態。(太り気味の)数瞬後には、あのくちばしでズタズタに引き裂かれて、それぞれの胃袋の中。
しかし、またしても幸運な事に、ナメナメはその危機から脱した。
感謝すべきは面倒くさがり屋の親鳥。普通なら巣の縁に留まって与えるのを、彼女は、空中から巣の中へと落とした。
−ヒューーー・・−
(俺様としたことが、こんな死に方を・・。)
落下する中、ナメナメは自分の不幸を呪って、目をぎゅっと瞑った。
−フワリ−
と、急に落下が止み、何かにやさしく包み込まれた気がし、ナメナメは恐るおそる目を開ける。
「こんにちは、バ・ソリーさんですよね?」
宙に浮いた透明な身体、優しげな微笑みで、手のひらのナメナメを見つめているこの人物(?)には、見覚えがあった。
「ナ、ナメッ!(シ、シルフィード!)」
そう、一度だけシェラに逢わせてもらったことがあった。間違いなく、彼こそ風の精霊王、シルフィード、その人。
「シェラに頼まれましてね。ずっとお探ししてたのですよ。まさか鮒のお腹の中とは・・私にも見つける事ができなかったはずです。」
「ナ、ナメナメ〜〜。(あ、ありがと〜〜。)」
ナメナメは、不覚にもほろり、と涙を流してしまった。
「もう少し早くお助けできればよかったのですが、鳥のお母さんに先を越されてしまいましてね。申し訳ありませんでした。」
「ナ、ナメ!(そ、そんなこと!)」
「さー、後少しの辛抱です。一足飛びにシェラのところへお連れしますよ。」
−ヒューーー−
優しげな風の音の中、ナメナメは、しばし空中旅行を楽しんだのだった。

と、突然、シルフィードが空中停止する。
「ナメ?(どうしたんだ?)」
透明で空の色が透けて見えるシルフィードの身体。その身体がゆっくりとだが、闇色に染まってきていた。
「ナメー?!(大丈夫か?!)」
「す、すみません、誰かが私を召還しているのです。
私をその意で操ろうとしているのです。」
「ナメ?(え?)」
「魔の波動を感じます・・シ、シェラの波調を上回って・・・あ、ああーーーー・・」
全身を震わせ叫び声を上げたシルフィードが、再び落ち着きを取り戻した時、もはや彼は、先ほどまでの精霊王ではなかった。半透明な闇色の身体を持つ魔に染まった風の精霊王となっていた。
「ナ、ナメナメ?(お、おい、どうしたんだ?)」
−ヒューーーーーー!−
「ナメナメーーーー!(ギャォーーーー!)」
優しげな風は冷たい強風となり、シルフィードは、しっかりナメナメを握り、ひたすら魔の波動の主の所へと向かっていた。
ナメナメがその風圧で押しつぶされそうになっているのも構わず。

 そして、着いたところは、なんとダイ・アモン伯爵の居城。
「ご苦労。」
気絶しているナメナメを受け取り、伯爵はほくそ笑む。
「ふふふ・・これで、私をバカにしたシェラを誘い出す事ができる。小娘のくせに、この美しい私より、血を吸う事しか能のない、トランシルバニアのど田舎に住むドラキュラ伯爵の方がいいとか言いいおって・・。この償いは、その血で贖ってもらうとしよう。
そして・・ふふふ・・永久にこの私の下僕にして、こき使ってやるのだー!わーはっはっはっは!」

 


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*実は・・・ダイ・アモン伯爵よりドラキュラ伯爵の方がいいと言ったのは・・、
私がその昔(笑)BBSにカキコした言葉なのです。

   /(^-^;


 

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