その壱 謎の浮遊大陸での再会


 新宇宙の女王として、親友でもあり補佐官であるレイチェルと多忙な日々を送っていたアンジェリーク。
創世の女王として、徐々にできていく宇宙を守り導いていく。忙しくはあったが、充実した日々を送っていた。そんなある日、突然アンジェリークを包み込み連れ去った白い霧。
そして、突如現れた謎の浮遊大陸。
アンジェリークだけでなく、もう1つの宇宙の女王、金の髪のアンジェリークや守護聖らをも巻き込み、彼らは、その謎の大陸で再会した。
破滅へと向かう大陸・・その大陸に金の髪の女王は「アルカディア」と命名。
そして、破滅をさけるべくその地の育成を担ったのは、新宇宙の女王、茶色の髪のアンジェリークだった。
残された時はわずか115日。それまでに大陸を育成し、破滅を阻止しなくてはならない。阻止できなければ、アルカディアの大地とともに、住民のみならず、アンジェリークたちも次元の狭間に引き込まれてしまう。そんなことはあってはいけない。

「何がなんでもそんなことにはさせない。」
そう思いつつも、宇宙の女王とはいえ、まだ17歳のアンジェリーク。やはり不安を覚えないわけはなかった。
アルカディアでの初めての夜、アンジェリークは自室の窓辺に立ち、じっと外に広がる闇の中の景色を見つめていた。


 「明日からがんばらなくっちゃ・・・・」
外の景色を見つめていたアンジェリークの口から小さく言葉がこぼれる。
「でも・・・やっぱり陛下はすごいわ。同じ女王なのに私はまだまだね・・・・。」
『陛下』とは、もう一人のアンジェリーク、通称(?)金の髪のアンジェ。正しくは、アンジェリーク・リモージュ。呟いているアンジェリーク・コレットのいわば先輩女王(?)にあたる・・・といっていいのかもしれない・・・。/^^;

白い霧によって、一瞬のうちに浮遊大陸へと連れてこられたアンジェリークたち。どうしたらいいのか考えがまとまらなかったアンジェリークとは反対に、リモージュは、てきぱきとその大陸を結界によって守り、全員が住めるようにそれぞれの館の修復もした。・・・しかも一瞬といっていいほどの手際さ・・といおうか、ミラクルマジック!
さすが宇宙の女王。その力にアンジェリークは圧倒されていた。
「私もいつか陛下のように女王らしくなれるのかしら?」
思わずため息がでる。気弱なことを言ってる場合ではないことも、重々承知している。が、同じ宇宙の女王でありながら・・・・。

「ううん・・・もうよしましょう。」
アンジェリークは、静かに首を横に振ると、自分に言い聞かせた。
「今は、私にできることを精一杯しなくては!」
『そうだ!心を強くもつんだ!出来ないことは何もない!』
ふと、女王試験の時、精神の教官であったヴィクトールの声がアンジェリークの頭に響く。
「・・・・ヴィクトール様・・・・・・・」
遠くの闇を見つめていた瞳をそっと閉じ、アンジェリークは今一度その声を思い出していた。声をそして脳裏に浮かんだその姿を抱きしめる想いで。
「まさか、またヴィクトール様とお会いできるなんて・・・ううん、育成の為とはいえ、今一度ご指導を受けることができるなんて・・・。」
聖地での女王試験。その間にアンジェリークはいつの間にかヴィクトールに淡い恋心を抱くようになっていた。
それに気づいたのは、試験も終わりの頃、ほぼ宇宙の女王の座は自分に決まりかけていたときだった。
加えて、王立派遣軍の将軍でもあるヴィクトールは、アンジェリークよりずっと年上の大人である。自分のような子供が相手にされることはない、とアンジェリークはその想いを秘めたまま、女王となり別れた。
「不謹慎かもしれないけど・・でも、・・・・・ヴィクトール様のことを思うと、またこうしてお会いできると思うと、感謝したいような気もするわ。」
未来への不安と共に、それはアンジェリークの素直な気持ちだった。
幻聴でもなんでも、ふと聞こえたその声で、アンジェリークの心から、不安さが幾分消えたように思われた。
「明日はヴィクトール様のところへ行こう。」
アンジェリークはヴィクトールの館の方向を見つめるとカーテンをそっと閉めベッドへと入った。


そして、翌日・・・・
一緒に挨拶に行こうというレイチェルの言葉をさえぎるようにして、アンジェリークはまっすぐヴィクトールの館をめざした。
「おはようございます、ヴィクトール様♪」
「おお、早いな、アンジェリーク。」
「は、はい、ヴィクトール様。またよろしくお願い致します。」
ヴィクトールの笑顔に思わず涙がこぼれそうになるのを必死でこらえ、アンジェリークはいつもよりゆっくりと丁寧にお辞儀をする。涙をごまかすのにちょうどよかったことだし。
「こうしてまたお前の指導をするようになるとは思わなかったが、お前には期待してるぞ。頑張ってくれよ。」
「はい、ヴィクトール様。」
「では、さっそく講義に入るとしよう。」
「はい。」
少しは普通の会話がしたい、そう思うアンジェリークの気持ちなど根っからの軍人であるヴィクトールは全く思いもしないようにみえた。
「変わってない、ヴィクトール様。」
ヴィクトールの講義を受けながら、アンジェリークは心が浮き立つのを感じていた。

その日、アンジェリークはヴィクトールの講義を一日中受けていた。



_Index_ .....Next→

...Contents...