### エンディング(おまけ)・スーパー大団円・至福の中(2) ###

 ・・・・・月日は流れ・・・・・

「落ち着けって、アレク!」
「そんなこと言われてもだなー・・・・」
産屋の前であっちへ行ったりこっちへ来たりしてうろうろしているアレクシードを、シャムフェスが笑う。
「お前のお嬢ちゃんなら大丈夫さ。」
「そうだろうがな〜・・・・・」
心配は心配だぞ?とアレクシードは目でシャムフェスに言う。
「ったく・・・本当にお嬢ちゃんのことになるとお前は昔っから・・・」
「悪かったな・・・」
「そんなに心配なら傍についていてやればいいじゃないか?結構夫婦で経験するっていうのも流行ってるらしいぞ?痛みを分かち合い、新しい命との出会いの瞬間を喜び合うというのも。」
今からでも遅くはないから、入って行け、と言うようにシャムフェスは笑いながらアレクシードに言った。
「そんなことは・・・い、いや、オレはそうしたいのはやまやまだが・・・傍で力づけていてやりたいんだが・・・・」
「だが?」
「お嬢ちゃんが恥ずかしいからいやだって言うんだ。」
「恥ず・・・・・」
思わずアレクシードとシャムフェスは顔を見合わせる。
「・・・そうかもしれんな。」


「おぎゃ〜!おぎゃ〜!」
「お!」
「う、産まれたか?」
シャムフェスとそんなことやあれこれと話しているうちに、元気な産声が聞こえ、2人はほっとする。

「旦那様、かわいらしい女の子でございますよ。」
しばらくして助産婦が産まれたばかりの赤ん坊をその腕に抱いてくる。
「おお、可愛い子だ。」
アレクシードはその子をのぞき込み、そして未だ心配げな表情で彼女に聞く。
「で、セクァヌは?」
「はい、姫様もお疲れにはなってますが、お元気ですよ。」
「そうか。よかった。」
「あ!今少しお待ち下さい。」
すぐにでも入っていこうとするアレクシードを、助産婦は引き留める。
「なぜだ?」
「いえ、あの・・・きちんとしてからでないと恥ずかしいからと。」
「そ、そうか・・。」


そして、数分後、母子用に用意された明るい部屋に移ったセクァヌと赤ん坊の元をアレクシードは訪れる。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。」
「可愛いいもんだな。」
「アレク・・」
セクァヌのすぐ横に眠る赤ん坊をのぞき込んで、アレクシードは微笑む。
その子はセクァヌの失くした黒髪とアレクシードの瞳を持っていた。


翌日、シャムフェスから山のような祝いが届き、アレクシードは、2人の仲でそんな形式張ったものはいらないのに、とお礼を言いがてら文句を言いにシャムフェスの屋敷へ出向いていた。
「なんだ、あれは?」
「あれとは?」
「あれだ!あの山のようなものはなんだ?あれほどのことする必要もないだろ?」
「ああ、そのことか・・・まーな、普通の誕生祝いならそんなこともしないけどな。」
「なんだ、そりゃ?」
笑いながら答えたシャムフェスに、アレクシードはどういう意味だ、と聞く。
「将来の妻に送るプレゼントとしては、まだまだ足らないとオレは思ってるんだが?」
「は?し、将来の・・・・何だって?」
アレクシードは自分の耳を疑って思わず大声を出す。
「いいだろ?恋愛は自由だ。お嬢ちゃんはきっぱりと諦めたんだから、その代わりな。」
「おい!冗談も・・」
「冗談じゃないさ。」
アレクシードの言いかけた言葉を切って、シャムフェスは真顔で言う。
「安心しろ。無理強いはしない。あの子がオレを気に入ってくれたらということでいい。」
「おい、ちょっと待てよ。オレの子なんだぞ?」
「分かってるさ。」
「産まれたばかりなんだぞ?」
「ああ。」
「まだどんな子になるかもわからないんだぞ。・・・そ、その・・かわいいかどうかも?」
「なるさ。」
「オレ似だったらどうする?」
「いや、ぜったいお嬢ちゃんに似てるさ。」
「じ、自信たっぷりだな?」
「そりゃそうだ。お前に似ちゃかわいそうだろ?」
「おいっ!?」
はははははっと朗らかに笑ってシャムフェスは続ける。
「冗談だ。お前に似てもいけるんじゃないか?ともかく、お前とお嬢ちゃんの子だ。いい子に決まってるさ。どっちに似ようとも。」
「ったく・・・・それはいいとしてだな・・・」
「ん?」
ぐいっとシャムフェスに近づいて睨むアレクシード。
「なんでお前の嫁さんなんだ?・・・・・まったく・・・どこかの巫女さんの世界の僧侶だったかなんだったかと同じ事するんじゃないっ!」
「は?」
「まさかここまで意図してたわけじゃないだろうな・・・髪と目の色も同じだなどと・・・」
(実際、本当の事実として、これは偶然です。意図的ではないです!<作者断言!これを書いた今その事実に気づいたおばかな作者です、はい。/^^;)
「なんだそりゃ?」
「ま、まー、そんなことはどうでもいいが・・・とにかく産まれたばかりなのに、早くも嫁に出す父親の気持ちを味あわせなくてもいいだろ?!だいたいオレとお嬢ちゃんでも歳が離れてるっていうのに・・・オレの娘とお前とじゃ・・・いくつ違うと思ってるんだ?!」
怒りのまま怒鳴るアレクシードに、シャムフェスはあくまで飄々としている。
「いいじゃないか。愛に歳の差は関係ない。それに、お前には散々苦い汁を飲まされ続けたからな。このくらいのお返しがあってもいいと思うな。」
「なんだ、そりゃ?」
「・・・お前にはお嬢ちゃんがいれば、それで十分だろ?」

その言葉の中に、セクァヌへの想いが籠もっていることを感じ、アレクシードはそれ以上言うことが躊躇われた。人を愛しく思う気持ちは、恋いこがれる気持ちは、アレクシードにも痛いほどよくわかっている。そして、シャムフェスが真剣だったということも。

「ほら、オレはもういいから、お嬢ちゃんの傍についていてやれ。あ・・それから・・」
「なんだ?」
「いい加減「お嬢ちゃん」はやめるんだぞ?」

シャムフェスのからかうような笑みに、アレクシードは照れ笑いのような困ったような笑みを返して帰っていった。

「今度も振られるかもしれないが・・・いや、今度こそ心を掴んでみせる。・・・奴は殺しても死にそうもないしな・・・。」
去っていくアレクシードの後ろ姿を見ながら、冗談ともそうでないとも思える独り言を、シャムフェスは呟いていた。



 銀の鷹姫と呼ばれた少女がいた。
軍を率い、強国から一族を解放し、新天地に新たなる国を興したスパルキアの姫。銀の飛翔、彼女の進軍の様を人はそう呼んだ。

 月光を反射し銀色に輝く鋭い視線、馬を駆り、その馬上で躍動する銀の髪。心まで射抜くかのような鋭さと、安らぎを湛えた穏やかさとの2つの顔を持つ銀色に輝くの瞳。誰しもその不思議な輝きを放つ銀色の瞳に囚われ魅了される。

セクァヌのその伝承はいつまでもいつまでも長く伝えられていった。
・・・その生涯の辛い時期も、そして、幸せな時期も長く分かち合った、歴戦の勇者アレクシードの名前と共に。


***Fin***

 【銀の鷹】、最後の最後までお読みくださりありがとうございました。
心より御礼申し上げます。今後とも私の話をよろしくお願いします。m(_ _)m
尚、ある日突然外伝的なものを思いついたら・・書くかも知れません。/^^;

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