★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  おまけ2 [またしても異世界過去混在パラレル話?]  


 「まったく・・・よりによってカルロスと2人っきりだなんて・・・。」
「ホントにもう・・・トラップに一緒にかかったのがフィーだけだったなんて・・・」
「ん?」
「え?」
森の小道、ばったりと出会った2組のカップル・・・もとい!パーティー。
どちらも男と女、そして・・・その2組は、その顔が酷似していた。まるで双子同士のように。


「へー・・・あなたたちも聖魔の塔を探検してたの?」
「しかし、場所は違うだろ?」
「そうよね?こんなにそっくりなら噂になるはずだから。」
フィーとミルは、またしても過去と遭遇したのだと分かっていた。が、いつものようにミルフィーと、そして、今回過去からとしては初登場(笑)のカルロスも、その事には気づいていない。

聖魔の塔、そこは、世界も次元もそして時をも越え、いや、どういうわけか、繋がるはずのないところも時として繋げてしまう不思議な場所。
ミルフィーとカルロスが未来へ来たのか、はたまた、フィーとミルが過去へ飛ばされたのか・・あるいは、双方の時代でもなく、別の時代そして場所に、双方共が飛ばされたのか、それは、誰も判断できなかった。
が、ともかく、再び出会った。しかも、フィーとミルにとっては興味津々のシチュエーション?、ミルフィーとカルロス冒険者時代である。様子からしてまだカルロスの想いは叶ってないことは確かだった。
彼らが出会ったのは、さっぱりすぎるくらい明るいミルフィー。カルロスに恋をしているとは到底思えなかった。


「でも、こんな偶然ってあるのね?」
「そ、そうですね。」
出会ったときは驚いたが、4人はすぐうち解けた。といっても、1人年が離れているカルロスは、少し浮いているとも思えたが。
当然、一緒に行動することとなった。



「カ、カルロス様?カルロス様ではありませんこと?」
「ん?」
山道を下り、町に入った途端に、声をかけてきた女性が1人。
「まー、カルロス?カルロスじゃなくって?」
「カルロス?・・・・いつ町へ帰ってらしたの?」
(し、しまったっ!)
声をかけてくる女性が1人また1人と増えてきていた。そして、それと同時に、カルロスの顔色が変わる。
(見覚えがある町だと思ったが・・・・)
「は、は〜〜ん・・・・カルロス、以前ここへ飛ばされたことがあるのね?」
「あ・・い、いや・・」
ちろっと軽蔑したような視線をカルロスに流し、ミルフィーはくるっと向こうを向く。
「ここには何人あなたの恋人がいるの・・かな?」
「あ、い、いや・・あのな、ミルフィー?」
「ま、いいわ。私には関係ないから。でも、あまりお盛んなのも考えものよ。中には泣いてる人もいるんじゃない?割り切って遊べられる人ばかりならいいけど、本気の人がいたらかわいそうよ。そう思わない?」
「あ・・いや、だからな・・ミルフィー?」
「カルロス様っ!」
狼狽しつつ、カルロスがミルフィーに言い訳しようとしていたその時、一際大きい声がして、全員の注意はそっちへ飛んだ。
声がした方向には、品のいいドレスに身を包んだ女性が1人。
ドレスの裾をすっとつまみ、彼女は足取りも軽く駆け寄ってきた。
「カルロス様、カルロス様。帰ってきてくださったのですね。どんなに待ちこがれていたことか。急にいなくなってしまわれてから・・私・・私・・・でも、一時たりともカルロス様のことは忘れたことなどありません。イシュディアは、ずっとずっとカルロス様をお待ちして・・。」
「あ、いや・・ちょっと待て・・」
「往生際悪いわよ、カルロス!」
ちろっとミルフィーは蔑視をカルロスに流す。
「これほど想っていてくれる人を残して立ち去ったなんて・・・ひどい人ね、カルロス。」
「あ・・だから・・・あのな、ミルフィー。」
「ここにまた飛ばされたのも何かの縁でしょ。年貢の治め時。ちょうどいいんじゃない?いいかげんプレイボーイの足を洗ったら?」
「だから、ミルフィー!オレは・・・」

女性に囲まれ、焦りまくっているカルロスを尻目に、ミルフィーは、さっさと行くわよ、とでもいうようにミルとフィーに合図した。

「これでやっと気楽な旅ができるわ。」
「え?」
通りにあった宿屋に入り、そこの食堂でミルフィーは上機嫌だった。
「あ、あの・・・カルロスとは恋人同士なんじゃないの?」
控えめにミルが聞いてみた。
「え?私とカルロスが?」
ぷっ!とミルフィーは吹き出して否定した。はっきりと。
「違うわよ。単なる冒険の仲間・・・というより、向こうが無理矢理ついてきててね。いつもは気のあった魔導師と僧侶と3人で冒険してるのよ。今回トラップで離ればなれになってしまったけど。」
「無理矢理?」
「そう。私に惚れたとか言ってるんだけど・・・さっきの見たでしょ?信じられると思う?」
「・・・・・」
フィーもミルも答えようがなかった。
「女剣士が物珍しいからついてきてるだけなのよ、彼は。」
「物珍しい・・・・」
「それとも、落ちなかったから意地になっているのか?・・ともかく私はあんなプレイボーイのコレクションの1つにされるつもりはぜんぜんないのよ。」
「コレクションの1つ・・・。」
「あ!そうそう!だからミルも気を付けた方がいいわよ。」
「え?」
そして、今度はフィーに真顔でミルフィーは言う。
「あなたもしっかり守らないとダメよ。私に興味があるなら、同じ剣士のミルにだってちょっかいださないとも限らないわ。なんといってもカルロスはそっち方面の経験は豊富だから、どうなるかわからないわよ?」
「あ・・・・」
フィーとミルは見合っていた。この現状に呆れ返っていた。2人の関係がそんなのではないと否定することも忘れ、ミルは、そしてフィーも呆然としていた。


そして、そんな訳でカルロスと別々の行動を取って3日が過ぎたその日・・・・
「国王の訪問?・・・こんな小さな町へ?」
「そうなんだ。この先の町が王様が幼少のおり育った町で、時々おみえになるんだよ。」
「ふ〜〜ん・・・。」
酒場でそんな話を聞いたが、そんなものは関係ない。ミルフィーたち3人は、ここへ来たその日から魔物退治を請け負っていたこともあり、次の依頼主に会うため町はずれの丘を歩いていた。

「ミルフィー?・・・その後ろ姿は・・・ひょっとしてミルフィーでは?」
「え?」
不意に背後からかけられた言葉に、驚きをかくせない表情でミルフィーは、そしてミルとフィーも振り向いた。
坂道だったそこで、ちょうど坂の上にいたミルフィーたち3人の目に、坂を上がってくる老人の姿が映った。
「お、お師匠さま?」
「おお〜っ!やはりそうぢゃったか・・・っと・・・こちらは・・・ミルフィア・・ではないな?」
「ち、ちょっと待って・・・お師匠さまがここにいらっしゃるということは・・・・」
「賢者殿!今なんと申された?」
「は、陛下・・・。」
ミルフィーの予感は的中した。ミルフィーがお師匠様と呼んだその老人の背後から質素だが造りの凝った馬車が坂を上ってきていた。
声はその馬車の中から聞こえた。
「ミルフィー・・と申されたような気がするが?」
「は、陛下。」
「それは、あのミルフィーか?」
「は。」
うやうやしく馬車の前で老人は頭を垂れる。
「やば・・・」
くるっと向きを変え走り始めようとしたミルフィーの襟首を、すっと移動した老人が掴む。
「待たんか、ミルフィー。もう遅い。思ってもみなかったところでそなたの姿を見つけ、わしもついうっかり声をかけてしもうたが・・・まー、観念せい。」
「お、お師匠様・・・・」
賢者でありミルフィーの剣の師でもあるタヒトール。さすがのミルフィーもタヒトールには逆らえなかった。


そして、あれよあれよという間に別の馬車に乗せられ、3人は国王一行と共に町長の屋敷へと連れられていった。


「まさか、異世界じゃなかったなんて・・・しかも・・・・・ゴーガナスの領地内?・・・私、知らないわよ、こんな町?」
女官たちの手で、すっかり王女の衣装に着替えさせられ、立派に整えられた部屋に納められた(笑)ミルフィーは、大きなため息をついてから、ミルとフィーに苦笑いを残して、国王との謁見のため、その部屋を後にしていた。
ミルフィーにとっては叔父にあたる国王は、ミルフィーの父の弟である。彼は偶然のその出会いを驚きと共に、心から喜んでいた。その叔父を無視して、即逃げ出すことは、ミルフィーにもできなかった。
幼いとき、叔父夫婦とは数回しか会わなかったが、やさしくしてもらった思い出が彼女にはあった。


「やっぱりおばさまって王女様だったのね?」
「あ、ああ、そうだな。ゴーガナスといえば、山岳地帯の国だけど、結構広大な領土と豊かな国として知られているぞ?」
「うん、確かそうよね。」
ミルフィーがいない間、あれこれと2人は話していた。


「ごめんなさいね、すっかり驚かせちゃったわね。」
「・・・ま、まさか冒険者が一国の王女様だとは想像もできなかったっていうか・・」
謁見がすみ、部屋に戻ってきたミルフィーに、フィーはとぼけて口を合わせていた。
「いろいろあったっていうか・・・ふう・・・」
ミルフィーは苦笑いで応えていた。

−コンコン!−
「はい。どうぞ。」
ミルが返事をする。
「カ・・カル・・ロス?」
「ミルフィー・・・・」
そこにいたのは、予想もしない人物(少なくともミルフィーは)、カルロスだった。
そのカルロスは、ミルフィーの王女姿を目の前にし、目を、そして心を奪われ、戸口に立ちつくす。
「ミルフィー。」
そして、さも嬉しそうにすたすたとミルフィーに歩み寄ったカルロスは、ミルフィーの言葉で立ち止まる。
「恋人達はどうしたの?」
「あ・・いや・・だから、彼女たちは・・」
「知らないとは言わせないわよ?」
「いや・・・だから・・・・」
カルロスはじっとミルフィーを見つめたまま、大きく人呼吸すると言葉を続けた。
「全員話はつけてきた。」
「つけてきたって・・カルロス?」
怪訝そうな表情のミルフィーの前に跪き、カルロスは笑みをみせた。
「身分を誇りそれを盾にしている者たちは、身分に弱いんだ。」
「え?」
「分からないか?」
「だから、何が?」
ふっと笑ってカルロスは右手をミルフィーの頬へ伸ばしながら答える。
「オレの相手が、オレが身も心も捧げている女性がゴーガナスの王女だと分かったとたん、1人残らず身を引いたさ。」
−パン!−
伸びてきたカルロスの手を払い、ミルフィーはぐっと睨む。
「誰が誰の相手ですって?」
「だからオレの相手がミルフィー、お前だってことさ。」
「勝手に決めないでくれる?」
「だがな、オレはたった今国王陛下にも・・」
「え?・・・陛下に?・・・お会いしてきたの?」
さーっと一気に顔から血の気が引いたミルフィーと、そんな彼女とは正反対に満足そうなカルロスの笑顔。
「お前に面会を求めたら、関係を聞かれてな。そうしたら、先に国王のところへ連れて行かれた。」
「聞かれてな、じゃないでしょ?何勝手な事言ったのよ?」
「勝手なって・・・分かり切ったことだろ?オレはお前の恋び・・」
「カルロス?!」
きっとカルロスを睨むとミルフィーはカルロスの言葉を訂正してこようと足早に戸口に歩き始めた。
−ガチャ−
「お師匠様?」
「その様子だとやはり恋人というのはでまかせか?」
「お師匠様!叔父王の誤解を解いてください。」
「ふむ・・・しかし、陛下はすっかりカルロス殿のことを気に入られてな。」
「そ、そんな?」
「国都へ帰りそなたとカルロス殿の婚礼をとおっしゃられておるのじゃが?」
「お師匠様?!もちろん反対・・というより、その前に訂正してくださったんでしょうね?」
「はっはっは・・そ、そう睨むな、ミルフィー。真剣な眼差しでそなたへの想いを口にしたカルロス殿の言葉を疑う方がおかしいというものだぞ?」
「本人に確認しようとは思ってくださらなかったのですか?お師匠様?!」
「じゃから、来たんじゃ・・・・はっはっは・・・」
「笑い事じゃありません!・・だいたいお師匠様が声をかけなかったら・・・お師匠様は、私が冒険家としてこのまま自由に暮らしていくことに賛同してくださったじゃないですか?それを今更・・」
そう、今更王宮へなど戻る気はなかった。かごの中の鳥になどなりたくないし、なれそうもなかった。そして、その事は、すでにタヒトールには連絡済み、そして、彼はそんなミルフィーを理解してくれていたのである。
「分かった分かった・・・きちんと責任は取る。」
「取るって・・・どうやって?」
「ちょうどいい。忘れ路の貝の媚薬を入手したところなんじゃ。ここで使い切ってしまうのももったいないと思うが。」
「忘れ路の貝?」
「ああ、そうじゃ。忘れ路の貝の貝殻を砕き、粉末にした媚薬じゃ。これを吸うととてもいい気持ちになる。そして、その副作用としてここ数日の記憶を失う。が、何かの拍子に思い出すかもしれんが・・まー、いいじゃろ。この場は丸く収まるじゃろうて。」
「え?」
「そなたに恨まれたくないのでの。」
「お師匠様?」
ふっと全員睡魔に襲われていた。
「また日を改めて会うとしよう、ミルフィー。・・・近いうちにの。陛下がそなたのことを思い出した時になるじゃろうが・・。」
遠くからタヒトールの声が聞こえてくるような気を、全員受けていた。
「そして・・・未来からのお2人は・・・いるべき時代にお帰り願おうか。それで、全ては丸く収まる。」
気づいていたのか?とフィーとミルが思う間にも、睡魔は2人をも引き込んでいった。


「う・・ん・・・」
「あ、あれ?ここって・・・?」
そこは聖魔の塔の入口。フィーとミルは重なるようにして眠っていた。
「夢だったのか?」
「夢?・・どんな?」
「うん・・・冒険家時代のお袋と親父に出会った夢。」
「え?」
「え?って・・・まさか・・ミル・・・・き、君も?」
記憶を失くすとタヒトールは言っていたが、時を越えた分、媚薬の効果が薄れたのか効かなかったのか、2人の記憶は鮮明に残っていた。

「あ〜っ!フィーとミル、見〜つけたっ!」
「なんだー、心配して損しちゃった。異世界へでも飛ばされたと思って心配してたのに、入口へ飛ばされてただけだったなんて。」
「カノン、リーリア。」
そこが、塔の入口であることも忘れ、それから当分の間、4人はその夢のような現実(たぶん現実だろうと2人は判断した)の話に花を咲かせていた。

「ねーねー、じゃ、おばさまって王女様のドレス姿のままってことよね?」
「あっ!そ、そうね。」
「ミルとフィーたちと同じように元のところへ飛ばされたのよね?」
「たぶんね。」
「じゃ・・・気が付いたら・・・・ど、どうなってるのかしら、今頃?」
「そんなの決まってるじゃない?」
くすっと笑ってからミルは続けた。
「きっと今頃はおばさまの風術で、おじさまは遙か遠くの空までお散歩・・じゃない?」
「ぷっ・・そ、そうね・・・・たぶん・・・・きゃはははは!」
大笑いするリーリア。
本当にプレイボーイだったことは横において、父、カルロスが真剣だということはその態度から感じたフィーは、気の毒さも感じ、楽しそうに話しているミルとリーリアを見つつ、苦笑いしていた。




♪Thank you so much!(^-^)♪

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