「先に行くのじゃ。わしは後から行く!」 「必ずいらしてくださいね、陛下。」 不意の急襲に城は一気に燃え上がっていた。 その王城を後にし、数名の護衛と女官と共に王妃は地下通路を通って落ち延びた。 王城を見下ろすことの出来る山腹へと続いていたその通路の先。質素な造りの祠から見えたのは、城のみならず、街をも焼き尽くさんと勢い良く燃え立つ炎。 戦果は誰の目にも明らかだった。
「陛下!」 「女王陛下!」 数日後、国都から離れた田舎街に集結した臣下、臣民に請われた王妃は決意する。 (今は嘆き悲しんでいる場合ではない。蹂躙されている民を救わなければ。そして、陛下の仇を・・・・) 悲しみを胸の底にぐっと押し込め、王妃は、毅然と立ち上がる。 「兵士たちよ、そして、我が愛する民よ、我に続け!この手に自由を!我らの家族を取り戻そうぞ!」 「おおーー!!」 着慣れたドレスを脱ぎ捨て、宝冠を置き、その身を鎧で包み、彼女は戦場を駆ける。 誰のためでもない、彼女自身を取り戻すため。
【絵本INDEX】