オリジナル絵本 
  -CGとショートショート-
 
 帰 郷 
  

お絵描き掲示板に描き始めた頃、私が描いたものです。/^^;
  

 「遅かったのか?・・・・・全てが・・もう・・・・・・・」
色とりどりの草花が咲き誇る庭先、花に囲まれたその家の片隅にある小さな窓。
男は、窓辺に並ぶ花をじっと見つめていた。

名をあげると、大陸一の戦士になると言って男が生まれ故郷を離れたのは数年前。
だが、それは男が期待していたものではなかった。不毛な戦いに明け暮れる日々。いつしか男は大陸一の戦士というものに疑問を持ち始めた。

そして、ようやく本当のやすらぎというものがどこにあるのか、自分の場所が分かった男が帰ってきたそこには、男を迎える恋人の笑顔はなかった。

男の脳裏に別れの日の恋人の顔が映る。
「今思えば・・・引き留めたかったのだろう・・それを、オレの気持ちを大切にして、精一杯の笑顔を・・・・。」
別れの日は気づきもしなかったこと。それに男は気づいた。
己の未来のみ見つめ、期待に胸を膨らませて村を後にしたその日、恋人のそんな気持ちなど気づきもしなかった。
「いってらっしゃい。身体を大切にしてね。」
涙を堪えて笑顔で言ったと思われるその言葉が、男の胸を突き刺す。

「オレは・・・・・・」
ダン!と窓辺を拳で叩き、男は思いを吐く。形に、言葉にするにはせつないほど苦しいほどの思い。例えようがない後悔。

「お帰りなさい。」
ふと男は恋人の声がしたような気がして振り返る。
が、そこに、やはり恋人の姿はなかった。
ただ、花好きだった恋人が大切に育てていた花々たちが、風に吹かれ揺れていた。まるで男をやさしく抱擁しようとしているかのように。
荒れ果ててしまったその庭先で、雑草に埋もれながらも、精一杯咲き誇っている花たちが。

男はゆっくりとそこを離れる。それ以上そこにはいられなかった。
失ってしまったものの大きさに心は死んでしまっていた。
男は心を引きずるように、再び村を後にした・・・。
   


お絵描き掲示板に描き始めた頃、私が描いたものです。/^^;
  



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