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漆黒の空間に溶け込むかのような黒い沼があった。
−ピチョン・・−
少女が一人、
暗闇に白い姿態を浮かび上がらせ水面にたたずむ。
祈るように胸の上で両手を合わせ
目を固く閉じ、闇に身を任せる。
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−ボコッ・・−
沼が水底から沸き立つ。
それは悲しみの水泡、絶望の水泡、憎しみの水泡・・・
そして、こみ上げる愛しさの気泡・・
−ボコッ・・ボコッ・・− |
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漆黒の静けさの中、広がる波紋の音だけが聞こえ、ゆっくりと時は流れる
ゆっくりと・・・・そして、静かに・・・
全てが止まったかのように
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その永遠に続くかと思われた静寂の中、ゆっくりと少女は目を開く。
黒曜石の輝きを持った瞳は、怪しく紅い輝きを放ち、
艶やかな黒髪を割り醜くねじれた2本の角が、その姿をくっきりと表している
『BIRTH』・・・・・
そこは鬼の生誕地・・・
悪魔の生まれいずるところ・・・
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−バサッ−
艶やかな輝きを持つ漆黒の悪魔の翼を広げ、
あやしげに微笑んで、少女は旅立つ。
愛しい人の・・
そして、憎悪の矛先となった人の元へ・・・・
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