オリジナル絵本 
  -CGとショートショート-
 
 命の灯り 
  

 地底に潜った一族がいた。

暗闇に包まれた地底での暮らしの為には灯りが必要だった。

その灯り取りは神官の役目。
地下に広がった家々へ、そして、一族が集合する要所要所に灯りを配るのも神官の務め。


その昔、戦火を逃れる為、侵略と迫害を逃れる為、戦の嫌いなその一族は、当時一族の長だった魔導師の指示に従って地底へと潜った。

自分の命の一筋の炎と化し、長である魔導師は、一族を地下へ、地下へと導いた。
 

 洞窟の奥深く・・そして、追っ手の追求が決して及ぶようなことはない地底湖の中へと、一族を導いていった。

それは不思議な光景。魔導師の命の灯火は、水中でも決して消えることはなく、一族を守り、奥へ奥へと道を示した。

 
 いつか陽の当たる地上に出られる。人々は地底湖へ潜る前、遠くに見える灯りを振り返り、そう祈っていた。

 が・・・奥のそのまた奥まで導いた灯りは、再び地上まで一族を導いていく力は残っていなかった。

 
 −コトン、コトン・・・−

神官は、今日もその灯りを洞窟のあちこちに配って回る。

いつか、その魔導師の生まれ変わりが現れ、再び地上へ導いてくれることを祈りながら。

その絶大であり奇蹟の力を持つ人物が生まれることを祈りながら、人々は待つ。
地底に広がった町で、その灯りに囲まれ・・・・。

 いつの日か・・・必ず地上へ・・・・・


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