紫檀さんが描いてくださいました。いつもありがとうございます。
尚、リーシャンのイラストが、青空のギャラリー、紫檀さんのコーナーに数点あります。
よかったらそっちもご覧になってくださいね。

話は『金の涙銀の雫』#33の展開を受けています。
あっちこっちごちゃごちゃになっててごめんなさい。

 

−リーン・・ゴーン・・・−
森と湖に囲まれた真っ白な教会。その日はレオンと人間になったリーシャンの結婚式。
もちろん集っているのは、フィー(ミルフィー・兄)、フィア、ミルフィー、レイミアス、チキ、シャイ、おばば、火龍のミリア、そして妖精たちである。
場所は妖精の森。この日のために建てられた簡易的な教会だが、リーシャンのデザインで造ったそれは、周囲を飛び交う妖精たちがその羽根で弾く光の束も相まって、夢の世界のように美しく輝いていた。

「おめでとう、レオン。」
「おめでとう、リーシャン!」
集った全員に祝福され幸せいっぱいの二人。
真っ白なウエディングドレスのリーシャンとタキシード姿のレオン。
計画を聞いたとき、馬子にも衣装っていうか似合わないんじゃないか?と渋った(恥ずかしがった)レオンだが、リーシャンの頼みには弱かった。全て彼女の希望通りの式になった。
そして、これもまたリーシャンの希望で司祭はレイミアスである。
レイミアスもまた、「ぼくなどまだ・・・」といったんは断ったのだが、教会に司祭は必須である。そして、妖精たちにはそういった職業も慣習もない。全員に推され、レイミアスも頭をかきながら引き受けたのである。


「思い出すね、ぼくたちの結婚式。」
「ええ。」
式が終わり、全員で祝う屋外パーティー。幸せそうな二人に、自分たちのときを思い出しているチキとシャイもまた幸せそうである。
「素敵ね。」
「うん、そうだね。」
「あたしもいつかこんな結婚式をあげたいわ。そして、やっぱり司祭様はレイムよね。りりしくて素敵だったもの。」
「え?・・・フィ、フィア?」
司祭の衣装を脱ぎ、みんなと同じように二人を祝っていたレイミアスが驚いたように隣の席にいるフィアを見つめた。
「待って、フィア、それじゃたぶん、司祭様は祝福どころじゃなくなるわ。」
「え?」
くすくすっと軽く笑ってから言ったミルフィーの言葉に、フィアはようやく自分が口にした言葉の意味となぜレイミアスが驚いて自分を見たのかわかった。
「あ・・・・わ、私、司祭のレイムがあまりにも素敵だったから・・・ついそう思ってしまっただけで・・・。」
「わかってるわよ、フィア。でも、一瞬ドキッと心臓が止まりそうだったのよね、司祭様?」
「あ・・・ぼ、ぼくは別に・・・・」
「え?じゃ・・レイムは・・・・レイムは私が他の人と結婚式を挙げてもいいの?・・・レイムは・・司祭様の役でいいと思っ・・・」
「あ、いや、そんなことは!」
「あ〜〜ったく、やってらんね〜ぜ?な?」
「ふふっ、そうね。」
少しふてくされた表情でミルフィーに相槌を求めてから、フィーはフィアとレイミアスのそばから離れ、その視線を森のほうへ飛ばした。

「ん?」
−カツカツカツ−
「誰かまだ呼んだ奴いたっけ?」
鼻の頭を軽くこすり、フィーは近づいてきたミルフィーに聞く。
「え?みんないると思うけど・・・それにあれは男性よ?通りすがりってわけじゃないわよね?妖精の森は結界で守られてるはずだから。」
「ああ・・・・・・」
視線の先は、森が分かれ、細い1本道が茂みの中へと続いている小道がある。その遠く見える始発点からゆっくりと馬を駆って近づいてくる男の影が一つあった。

「あ・・あれは・・・・」
近づいてくるにつれ、その人物が誰なのか認識したフィーが、隣に立っているミルフィーに思わず視線を移す。
「・・・・・・・・・。」
そして、ミルフィーもまた思いがけないその人物に驚いて声もあげず、その影から視線を離せずにじっと見ている。

−カツカツカツ・・・−
「カ・・・・・」
そう、近づき姿がはっきりとしてきたその男は忘れもしない男。フィアかミルフィーかと問われ、そのどちらをも選ぶことができず、傷心をかかえ、彼らの前から姿を消したあのカルロスだった。

−カッ−
「え?」
ミルフィーの前まで来ると、すっと馬から降り、そのまま彼女の前にカルロスは片膝をつき、彼女を見上げる。
「ミルフィー、改めて乞う。傍において・・いや、一緒に行動させてくれないだろうか?この数年間、一人考え続けた。忘れようともした。だが・・・離れて一層お前が恋しくなった。オレの心を占めているのは・・オレが本当に欲しているのは、ミルフィー、お前だとわかったんだ。」
「わ、わかったといわれても・・・・で、でもフィアは?」
「だから、オレの求める女性は・・」
ちらっとフィーに侘びを入れる視線を飛ばしてからカルロスは再びミルフィーを見つめて続けた。
「フィアではない・・・いろいろあった。旅の途中、死と直面したとき、脳裏に浮かぶのはお前の笑顔だった。俺の名を呼び勇気付けてくれる声は、ミルフィー、お前だった。」
「そう・・・言われても・・でも、私とフィア、声も同じよ?」
「いや、違う。それははっきり違っている。」
「そうだな・・・声は同じのはずなんだが、はっきり違うからな。」
フィーがうなずいて言葉を入れた。
「でも、私・・・」
「構わない。たとえオレを男として意識してくれていなくても一向に構わない。オレは、傍にいてお前の笑顔を見ていたい。共にいたいんだ。お前が行くのなら、世界のどこだろうと一緒に行きたい。」
「で、でも・・・」
「今一度誓ってもいい。強引な行動は絶対とらない。仲間としてで十分だ。」
ちらっと隣のフィーと顔を合わせると、ミルフィーはカルロスを見直し、腕組みをして苦笑いした。
「イエスと言うまでそうやって粘るつもりなんでしょ?」
ふっと軽く笑みをみせるカルロス。
「調子のいいこと言って、どうせ、いつかは結ばれるはずだとかなんだとか、心の中では相変わらず自惚れてるんでしょ?」
「ははは」
「もう!笑ってごまかして・・ホントに相変わらずよ!」
軽く笑って立ち上がったカルロスの表情は許可を得たとそれまでの緊張したものから、ようやく柔らかいものになっていた。

「カルロス!どうやってかぎつけたんだ?やはり食えない奴だな?」
「一緒に苦労した仲だろ、レオン?祝いに駆けつけなくてどうするんだ?」
「何言ってやがる!どうせオレたちなんざミルフィーのおまけ程度だろ?」
「相変わらず口の悪い奴だな?」
「相変わらずあきらめの悪い奴だぜ?」
−ははははは!−
祝宴の場は、思いがけないゲストを向かえ、一層賑わいをみせた。


「ねえ、だけど、ここを誰に聞いたの?ううん、どうやって入って来れたの?」
異性としてではないが、ああいう形で分かれてしまったカルロスのことは一応気になってはいたこともあり、またうるさくなると感じながら、ミルフィーには安堵感もあった。
「あ、ああ・・・それはな・・・」
「あ、それはね・・・ここへ来る途中、空からカルロスを見つけちゃって・・それで・・・」
ぺろっと舌をだしてミリアが言った。
「ミリアったら、カルロスびいきなんだから!そうだ!」
「なあに、急に?」
「なんだ?」
「ミリアにするっていうのはどう、カルロス?」
「おいおい、そう言われて簡単に心変わりするようじゃ、それこそミリアにも呆れられてしまうだろ?」
「そうよ。あたしはミルフィー一筋のカルロスじゃないんだったら、応援なんてしないわ。」
「ちょっと待ってよ、ミリアは私の味方だったんじゃないの?」
「味方だから応援するんじゃない?」
「ええ?どうして?」
「だって、ミルフィーとカルロスの言い合ってるところとかいろんな時って面白いんだもの♪退屈しないのよ♪探索なんて殺伐としがちでしょ?いい気分転換になるのよ♪なんていっても息もぴったり名(迷?)コンビ♪」
「・・・・・・」
ミルフィーとカルロスは思わずしばし見詰め合い、そして、同時に噴き出した。
「あははっ」
「ははははは」
ひとまずミルフィーのカルロスに対する気持ちは横に置いておくことにして、その二人の姿は傍目にはとてもお似合いに見えた。

果たしてミリアはカルロスにとって恋のキューピッドとなるのかならないのか?
ミルフィーの心(想い)はこの先何をとらえ何にとらわれるのか?どうなるのか?


ともかく、真っ青な空と暖かい太陽の下、祝宴は、にぎやかにそして楽しく続いていた。

-大団円・完!-


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