[パラレル番外編5]

☆★ 銀騎士参上(1) ★☆
* Epilogue2・#78を受けた展開? *
-- タフガイ・カルロス、ふっか〜〜〜つっ!? --


 

 「ミルフィー!!」

眠っている間にミルフィーが自分を置いていってからというもの、カルロスはどうしたら銀龍の世界へ行けるのか、その答えを求め、レイミアスやレオンを探し、世界を駆けていた。
そう、ここで引き下がっては女殺しの、いや、プレイボーイの・・・でもなく、男がすたる。一旦決めた限りは何があろうと突き進む、それがカルロスのポリシーだった。
はた迷惑と言われようがなんと言われようが、カルロスにはそうする以外思いつかなかった。それにミルフィーにははっきりと迷惑だと言われたわけではない。いや、例え言われても引き下がらなかったかもしれない。それほど惚れていたのである。
世に言うストーカー・・それは聞こえが悪いとも思ったが、ともかくミルフィーなのである。傍にも近寄らせたくないのならその手で殺してくれの心境とも言えた。
自分でもなぜこうまで入れあげるのか?自嘲とともに自問自答したこともあった。が、答えはいつも同じ。ミルフィーの横がオレのいる場所だ。
ミルフィーが耳にすれば迷惑極まりない勝手な独断と思いこみだが、カルロスはいたって真剣なのである。そう、己の全生命をかけ、彼は彼女を愛していた。

そして、その真剣すぎるほどの思いは、レオンを通し夢幻の館のリーパオに通じ、そして・・・銀龍に通じていた。
結果・・カルロスは今、金龍の世界へ、ミルフィーのいる世界へと足を踏み入れた。

−ダッ!−
転移したと同時にカルロスは、その視野に入ったミルフィーに向かって疾走する。
奥深い森の中の一角、木々の茂みがとぎれたそこでカルロスの目に写ったミルフィーは、魔龍のするどい爪を胸に受けていた。

−ガキッ!−
ミルフィーの身体に次なる一撃を刺そうとした魔龍の爪を、カルロスは銀龍から与えられた剣で遮り、ミルフィーをぐいっと自分の横に引き寄せる。
「え?・・・カル・・ロス?」
胸を貫かれたことは確かだったが、急所は外れていた。が、明らかに軽傷とはいえなかった。それでも呪文で回復を計りながら魔龍を見据えていたミルフィーは目の前のカルロスに驚く。
「ミルフィー・・・とばしすぎだ。そんなんじゃ息がきれるぞ!」
驚いた表情のミルフィーに、カルロスは笑みをなげかける。
「後は任せるんだな。」
ミルフィーを離すと同時に、カルロスの魔龍への猛攻撃が始まった。
「・・・カルロス・・・・?」
龍が、2mほどの透明な小龍が、カルロスをその背に乗せ空を飛んでいた。
その小龍の飛翔にあわせ、カルロスは確実に魔龍を追いつめていく。


「カルロス・・・」
その光景を呆然としていたミルフィーは、戦いを終え自分に向かってゆっくり歩きはじめたカルロスの名を小さく呟いた。
「大丈夫か、ミルフィー?」
「あ・・私は大丈夫だけど・・・ど、どうしたのいったい?・・・どうやって来たの?それに、あの小龍は?」
魔龍が倒れると同時にカルロスを乗せていた小龍は消えていた。
「ああ、あれは銀龍に言われて龍の泉とよばれるところへ行ってな、そこで出会った仔龍だ。」
「銀龍に?」
「ああ。」
「で、でもどうしてここに?」
「どうして?」
ミルフィーの目の前まで歩み寄っていたカルロスは、ふっと笑いながら彼女の顎にそっと手をそえる。
「それをお前が聞くのか?」
「ん?」

−ビッターーーン!−
次の瞬間、カルロスの頬にミルフィーの鋭い平手が入っていた。
そう、俗に言うどさくさに紛れてというものだった。ミルフィーのあごに手を添えるとほぼ同時、カルロスの唇はミルフィーのそれに重なっていたのである。
「何するのよ?」
2,3歩下がったミルフィーは明らかに焦っていた。魔龍との戦いに苦戦していた後である、まだ十分回復していなかった。が、そう簡単にカルロスにしてやられるとは思ってもいなかった。

「はは・・す、すまん・・・久しぶりに会えた嬉しさで暴走してしまったらしい。」
「『らしい』じゃないでしょ?い、いきなりなんてことするのよっ?!」
「いいじゃないか、このくらい。初めてというわけでもなし。」
余裕の態度でにやっと笑ったカルロスに、ミルフィーは頬が熱くなるのを感じていた。それはまだミルフィアだったときの舞踏会でのことなのだが、こういったことは思い出すだけでもミルフィーには恥ずかしいことだった。
「そういう問題じゃないでしょ?」
「じゃー、どういう問題なんだ?もしかして、あの程度の軽いキスでは不満だったか?」
「ふ、不満って・・・・」
完璧にミルフィーはカルロスに押されていた。茹でダコのように真っ赤である。
「そんなわけないでしょっ?どうしてそうなるのよっ?」
「ん?」
ぐいっと1歩大きく近づき、カルロスは余裕の笑みと熱い視線でミルフィーを見つめる。
「もしかしたら、もう会えないかもしれないと思っていたお前にようやく会えた。その嬉しさと、そして、ひょっとすると夢かも知れないという思いをぬぐい去りたくて思わず確認してしまった。・・・いけなかったか?」
「・・・・い、いけないに決まってるでしょ?確認なら他にも方法あるじゃないの?」
「そうか?一番の確認方法だと思ったんだが?」
「そ、それはカルロスだけの考えでしょ?あんな確認の仕方ってある?」
「なんだ、もの足りなかったか?」
「ち、違うでしょ?・・・・・ち、ちょっと・・・・?」
再び手を伸ばしてきたカルロスに、ミルフィーは焦りながら後ろに数歩ひく。
「相変わらずなんだな、ミルフィー。」
「あ、相変わらずはあなたでしょ、カルロス?」
少し悲しそうな表情をしたカルロスを、ミルフィーはぐいっと睨む。
(ここで情に流されたら終わりだわ。・・・ホントに変わってないというか、ううん・・・ひょっとして前より手が早くなってる?)
カルロスの出方によっては、必要かもしれないと思い、ミルフィーは剣に手をかけようとした。が、カルロスはミルフィーがそうするより速くその手首をぐっと握り、素早く引き寄せる。
「会いたかった、何よりも誰よりも・・。」
カルロスの女殺しの微笑みがそこにあった。しかもとっておきの最高バージョン。(笑
「カ・・・・」
さすがのミルフィーも蛇に睨まれたカエル状態?完全にその腕にとらえられ、触れられそうなほどすぐ目の前の熱く真剣な眼差しに圧され、飲み込まれてしまっていた。

−パッコーーーーン!−
捕まえた!そう思ったカルロスの思惑は、勢いよく彼の頭に衝撃を加えたものによって中断された。
「ミルお姉ちゃんに何をするのっ!?」
振り返ったカルロスの背後には、クリスタルロッドをぎゅっと手に持って構えた一人の少女が睨んでいた。
「セ、セイタ・・そ、そうじゃないんだって・・・」
その少女を一人の若い男が慌てて抱きかかえるようにして連れていく。
「は?」
頭に受けた痛みと、今の出来事に呆然とし、ミルフィーを掴んでいた手からは力が抜けていた。勿論その間に、ミルフィーは数歩さがって剣を抜く。

「う・・・・・」
再びミルフィーに視線を移したカルロスは、彼女のきつい視線と剣を抜いていることにがっくりと心が沈む。そして苦笑いをする。せっかくもう少しだったのに。



「それによ?周りに人がいるっていうことも分からなかったの?」
「仕方ないだろ?オレにはお前の姿しか入らなかったんだから。」
「的確な状況把握は冒険者の基本でしょ?」
「じゃー、なんだ?ギャラリーがいなかったら良かったのか?」
「そ、そんなこと言ってないでしょ?」
突然の再会騒動も落ち着き、再び森の中を歩き始めたミルフィーとその世界で仲間として一緒に旅をしている青年剣士ラードと少女セイタ、そして、今回加わったカルロス。
その突然の訪問者に戸惑っているのは、小声で横を歩くカルロスに文句を言ってるミルフィーだけではなさそうだった。

「カルロスって・・・時々ミルフィーの口からこぼれる名前だったよな?あ、あいつがそうなのか?ミルフィーは・・・奴をどう思ってるんだ?」
「ミルお姉ちゃんにへんなことしたら、あたしが許さないんだからっ!」
ミルフィーのものだけではなく、ラードとセイタからの鋭い視線と警戒をカルロスはその背中に感じていた。

「会えた嬉しさで、来た早々しくじってしまったかな?」
オレとしたことが、とも思いつつ、それでも懲りずにカルロスの視線はミルフィーに注がれている。同行の許可を得る為に改めて手は出さないと誓ったカルロス。ただし、ミルフィーがその気にならない限りと付け加える事を忘れてはいなかった。
「な、なによ、それ?」
勿論、ミルフィーの焦りを帯びた言葉がきつい視線と共に返ってきたが、カルロスはどこ吹く風でミルフィーに微笑む。
(ふっ・・そうだな・・今はまだいい・・・だが・・いつかはオレに惚れる。それがお前の、いや、オレたち2人の運命だ。)
ミルフィーが聞けば、即機関銃のように反論が返ってくるだろうと思われる言葉を心の中で呟きながら。

(なんで今更追ってくんだよ?!)
恋人ではなさそうだと分かったが、さも当然とでも言うように、前を歩くミルフィーの横を陣取ったカルロス。
(追ってくるんだったら、なぜもっと早く来なかったんだ?)
やりきれなさを感じ、ラードは呟いていた。
その剣の腕もだが、落ち着いた大人の男を感じさせるカルロス。ただでさえミルフィーに男としては見られていないラードは心が塞いでいくのを感じていた。とてもではないが、対抗できそうもない、差がありすぎる。相手は完璧なまでの騎士であり男だった。

 
 
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*この話は、『金の涙銀の雫』本編とも関係なく、パラレル金銀ワールドでのお話です・・たぶん(笑*


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青空#143