☆★ カルロスの想い・・ミルフィーとミルフィア ★☆

*** パラレル番外編10 『ミルフィー記憶喪失』(1) ***
「オレのものにならないなら・・いっそのこと・・・」正気を失ったカルロスの剣がミルフィーを貫く!

 (オレは・・・どうすべきなんだ?・・いや、どうしたいんだ?)
ミルフィーの元から離れるべきではないのか、と、その夜遅くカルロスは
一人酒場でグラスを傾けながら考えていた。

『心は白紙状態になってるから、悪いけどカルロス、私、その気ないの。
強がりでもなんでもなく、本当に。』

今のミルフィーになったときのその言葉が心に突き刺さっていた。
ようやく手に入れることができる、そう確信して手を差し伸べたその瞬間・・・・
見知った笑顔は、全く予想していなかった言葉を口にした。

(ミルフィー・・・それでも・・・お前がミルフィアでもあると・・そう思って・・・オレは・・・)
グラスを持ったまま考え込んでいたカルロスは、その少し温かくなってしまっていたワインをぐっと一気に喉へ流し込む。

−コポポポポ・・・−
ワインが新たに注がれるそのグラスに、カルロスはミルフィアの幻影を見ていた。
不安そうに揺れていたミルフィアの瞳。それでも、そこには前に進もうと、けなげなまでの決心を宿していた。
はにかんだときの笑顔。真剣な表情で魔物に立ち向かっていくときの表情。そして、舞踏会の時の着飾った時の顔。
「お嬢ちゃ・・・・」
そっとグラスを手にすると同時にカランと氷の音がする。
と同時にミルフィアのその顔は消え、グラスはカルロスの顔を写す。
消えるその直前のほんの一瞬、ミルフィーの笑顔と重なったような気をカルロスは受けた。明るく元気一杯な今現実にいるミルフィーの顔に。

「本当のところはどうなんだ?・・・オレが欲してるのは・・・ミルフィーでなく・・・・ミルフィア・・・なのか?」

カルロスは、グラスに写った自分の顔に、己自身に、その心を問いただしていた。
全く別人と言っていいほど元気で勢いのいいミルフィー。が、時にミルフィアだと
思える仕草もあった。腕の立つ剣士の顔以外に、少女としてのはにかみやうろたえと言える表情や仕草、それは、確かに彼女がミルフィアだとカルロスには思えた。

(確かに最初の頃は無意識に彼女の中にミルフィアを探していたかもしれん・・)

『あなたの好きなのは、私じゃなくミルフィアでしょ?』
時として言い寄るような展開になった時、ミルフィーの視線はカルロスにそう言っ
ていた。
その彼女の心は頑なに閉ざされていた。その事はミルフィーの故郷、ゴーガナスでの御前試合で決定的ともカルロスには感じられていた。仲間としては認めているようだったが、異性としては・・・拒絶されている。レイミアスやレオンに対しては以前と少しも変わっていないにもかかわらず、カルロスに対しては、その件に関しては、完全にシャットアウト、冷たく閉ざされていた。

「ミルフィアのことをオレが引きずっている・・断ち切っていないと?」
(しかし、どう断ち切れというのだ?ミルフィーはミルフィアでもあるんだ。いや、
彼女がミルフィア本人だ・・・ミルフィアなんだ・・・多少性格は変わったが・・それでも、彼女だ。いや、性格が変わったんじゃない。表面に出ている部分が前と違っているだけなんだ。彼女は確かにいる。変わってなどいない。何よりも・・オレには彼女以外、何も目に入らない。)
それこそが、その事への回答だとカルロスは思った。

が・・・・それはそれ。ミルフィーの心は遠く離れている。いくら待っていてもこっちを向いてくれそうもない、と思えるほどに。

「ミルフィー・・・・なぜ分かってくれないんだ?オレは、そんなにミルフィアを求めているように見えるか?・・・もしそう見えたとしたら・・・それは・・お前を求めている事なんだ・・・ミルフィー・・・分かってないのはお前だ・・・自分の中のミルフィアを・・お前が認めようとしていないんだ。」

やりきれない気持ちでカルロスは杯を重ねていた。

(このまま振り向いてくれないのなら・・いっそ・・・・)
女性に対してそんな思いを持ったのは初めてだった。自他共に認めた女殺し、カルロスの初めて経験する狂おしいまでの敗北感、そう、このまま傍にいても相手にされないのではないか、そんな感じをその夜、カルロスは受けていた。


そして、それから数時間後、寝付けなかったミルフィーは、宿の裏庭を散歩していた。

−ガサッ!−
「誰?・・・な、なんだ・・カル・・・・」
・・ロス、と言いかけてミルフィーはその様子に言葉を失って固まる。
茂みの向こうから姿を現したカルロスの全身から、いつもと違った気が立ち上っていた。
静かに立ち上がる闘気とでもいうのだろうか?いや、殺気とも感じられたその気にミルフィーは思わず武者震いする。

以前ハコさんに描いていただいたものを置かせてもらいました。


−ギン!−
そして、是も非もなく剣を抜いて襲いかかってきたカルロスの剣を、ミルフィーは咄嗟に
腰の剣で受ける。
「カ、カルロス?」
交差した剣を挟んで見るカルロスの表情は、いつものカルロスのものではなかった。
ぞっとするような、まるで何かに憑かれているかのようなカルロスの視線に、ミルフィーは身震いする。

「ミルフィー・・オレのものにならないのなら・・・ミルフィー!」
−ガチッ!−
「・・カルロス?」
乾ききった声で小さく呟きながら突いてくるその剣でさえ、明らかにいつものカルロスの剣とは違っていた。
いや、確かにカルロスの剣なのだが、ミルフィーの見知った太刀筋なのだが、違いがあった。
「カルロス!どうしたの?」
−キーン!−
カルロスの剣を渾身の力で跳ね返しながら、ミルフィーは叫ぶ。
−ギン!−
が、カルロスはまるでミルフィーの声が届いていないように、そして、狂気に支配されてでもいるかのように攻撃を続ける。

「カルロス?!」
最初はカルロスの攻撃を止めるだけだったミルフィーも、徐々にそんなものではすまないことを知る。
それは単なる腕試しでも手合わせでもない。命をかけて向かっていかなければ通用しそうもない。
(そ、そんな・・・・なんでこんなことに?)
激しい攻撃を受け止めながらミルフィーは焦る。
狂気に支配されたカルロスのその瞳に、ミルフィーは思わずぞっとして竦む。
その瞳は、明らかにどうあってもどちらかが倒れるまで攻撃は止まりそうにないと思われた。
「カルロス!どうしたの?お願い!正気に戻って!」
−キン!ガキン!ザン!ギンッ!−


「カルロス!」
攻撃をはじき、大きく間合いを取ったミルフィーは今一度カルロスに叫ぶ。
(だめなのね・・・戦うしかないの?・・・いったい何がカルロスをこんなにしてしまったの?)
何がとりついているのだろうとミルフィーは思う。が、そんな余裕は与えてくれない。



−ザシュッ!−
そして、それは一瞬のことだった。
ミルフィーの剣の腕は十分カルロスに対抗できる腕だが、長引けば男と女、体力的に差がでてくることは確かだったとしても、その前に決着をつけられる腕は持っていた。
が・・・それはいつもならではのこと。狂気はカルロスの剣の腕をより高く引き上げていた。
しかも、それは確実にミルフィーを殺めるための太刀だった。
「カル・・・ロス?」
普通の精神状態でないカルロスとは違い、ミルフィーはいつもどおりなのである。それが体力的な問題よりも彼女にとって致命的と言えた。
そう、仲間であるカルロスにその命を狙った剣をミルフィーがむけられるわけはなかった。
そして、その事に躊躇した一瞬、カルロスの鋭い太刀筋がミルフィーの横腹をとらえていた。
−ビシュッ!−
ミルフィーの鮮血がカルロスの頬にかかる。
−ガチッ!−
激痛の中、回復呪文を唱えながら体勢を整えようとするミルフィーに、すかさずカルロスの攻撃が入る。
−ズブッ!−
「あ・・・・」
大きく振りかぶって下ろされたそれは、確実にミルフィーの身体を貫いていた。
「カ・・ル・・・・」
気が遠くなってきていた。その中でゆっくりとミルフィーは倒れていく。


注:本すじとは一切関係ありません。(笑

【青空に乾杯♪】Indexへ 【次ページへ】