☆★ カルロスの想い・・ミルフィーとミルフィア ★☆

*** パラレル番外編10 『ミルフィー記憶喪失』(3) ***
「オレのものにならないなら・・いっそのこと・・・」正気を失ったカルロスの剣がミルフィーを貫く!

 「いやー!」
「ミルフィー!」
翌日、酒場で寝てしまったミルフィーを部屋まで運んで、自分も自室で休み、再び目覚めた・・といっても、カルロスが眠ることはなかったが、ともかく、ミルフィーが一応その眠りからさめ、起きてきたその日の午後、記憶が戻るかも知れないという期待を抱きつつ、カルロスはミルフィーに剣を持たせ、そして向き合った。
生まれながらの剣士としての才能、そして、それまでの経験、それは、ひょっとしたら剣を手にしたその感覚、あるいは、剣を交えたその時の感覚から、何か思い出すかもしれない。どんな小さな事でもいい。何かひとつでも・・。そう思ったカルロスの期待は、見事にうち砕かれた。
剣を持ったまではよかったのだ・・といっても特に記憶を取り戻した様子もなかったが、ともかく普通に立っていた。が、カルロスが彼女の前に立ち、剣を構えたその瞬間、ミルフィーは恐怖に青ざめその場にうずくまった。

「すまん、悪かった・・・オレが急いだばっかりに・・。」
「あ・・・・」
震えていた彼女を抱きしめようとカルロスを見上げたミルフィーは、思わずカルロスをどん!と押しのけ、その場から逃げ出そうとした。が、そう簡単にカルロスがそうさせるわけはない。
「ミルフィー!?」
「離してっ!」
「いやだっ!」
「カルロス!」
「だめだ、ミルフィー・・・離さない・・何があっても・・たとえ嫌われようとも・・オレは・・・。」
心の底からのカルロスのその叫びに、ミルフィーはその腕の中でもがくことをやめていた。

「落ち着いたか?」
「え、ええ。」
しばらくそのままでいた。そして、ミルフィーが落ち着いたのを見計らってカルロスはそっと腕から解放する。
「カルロス?」
「ん?」
自由になったミルフィーがそっと顔を上げてカルロスを見つめた。
「私・・は・・・あなたの何?・・・あなたは、私の・・・なんなの?」
「ミ・・ル・・・」
「カルロス・・」
自分にとってミルフィーは己の全てをかけて愛してやまない女性だと断言できた。が、ミルフィーにとって自分がどうなのか、それは全くわからなかった。そして、それを言ってもいいものかどうか、カルロスには判断できなかった。
「カルロス?」
懇願するような、そして、すがりつくようなミルフィーの瞳から逃げ出すことは不可能だった。
しばらく間をおいてから、カルロスの乾ききった声が小さく響いた。
「オレにとって君は・・・」
そして次に、改めてミルフィーを熱い瞳で見つめ、力を心のそこからの思いを込めてカルロスは言った。
「誰よりも何よりも代え難い・・この世でたった一人の女性だ。・・愛してる、オレは、ミルフィー・・君だけを。」
「カルロス。」
「だが・・・君の気持ちは・・・」
ふっとそれまでの熱気が失せ、カルロスの瞳は陰りを見せる。
「私の気持ちは?」
「・・・残念ながら・・・分かってないんだ。」
「分かってない?」
「ああ。」
「2人で旅をしてるのに?」
「ああ。」
「あなたの気持ちを私は知らなかったの?」
「・・さあ・・・伝わっていたと思っていたが、実際の所はどうなのか・・・。」
「カルロス・・」
悲痛な表情のカルロスの頬を、ミルフィーは思わず手を差し伸べ包み込んでいた。
何も考えられなかった。何も考えていなかった。ミルフィーはただただ目の前のカルロスがあまりにも悲しげで苦しげで・・・そして、それがまるで自分のことのように感じ、そうせずにはいられなかった。
「ミルフィー・・・」
そして、そんなミルフィーにカルロスが動かされないはずはなかった。
(ちょっと待て!カルロス!今のミルフィーはミルフィーじゃないんだぞ?記憶がないんだ・・しかもそれはお前のせいで・・・)
心の中でもう一人の自分が必至で止める声が聞こえた。が・・・この状況で踏みとどまることは・・いくら強靱な精神力を持つカルロスでも、無理だった。それも無理ないと思われるが・・・・。


(う”・・・そ、そういえば、そうだった・・・・)
翌朝、腕の中で眠るミルフィーに気づき、カルロスは青ざめる。
(どうしたら・・といっても、今更どうもできないが・・・・)
嬉しいことは嬉しいが・・・・記憶を取り戻したあとのミルフィーが・・・恐かった。
「ふっ・・」
が、ミルフィーの寝顔を見ていて、カルロスは覚悟する。今更じたばたしても始まらない。なるようになるしかない。
(何よりも、オレは強要したんじゃないからな。記憶を失くしてる時は本来の姿(内面)だともいうから・・・つまりは、ミルフィーはオレを・・・)
(いや、記憶を失っている今、頼りになるのがお前しかいないからだ。それを好きだと勘違いしてるんだ。)
(いいや、そうじゃない。本当はミルフィーはオレのことを・・・)
ミルフィーが目覚めるまで、カルロスの心の中でその言い争いは続いていた。



(しかし・・何かがもの足りないというか・・・)
(なんだと?ようやく手に入れたっていうのに、お前は彼女に文句があるっていうのか?)
(いや・・文句は・・ない・・・記憶が戻ったときの恐怖はあるが・・・)
(じゃー、なんだ?)
記憶を失う前にミルフィーと話し合った予定どおりに進むことにして旅を続けるカルロスの心の中で、無意識なのだが、そんな問答が時々わきあがっていた。


『カルロスったら!本当に油断も隙もないんだから!』
「ミルフィー!信じないのか?オレは本気・・・」
ある夜、カルロスはそんな夢を見てがばっと起きあがった。
「ミルフィー・・・」
ふと横を見る。そこには確かにミルフィーの寝顔があった。
(そうか・・・もの足りないと感じていたものは・・・・)
記憶を失くしたミルフィーは、ミルフィーというよりミルフィアだった。それはそれで愛しいに違いないのだが・・・元気一杯で、そしてカルロスをからかってばかりいたあのミルフィーもまた彼女の一部なのだ、とそのことでカルロスは再認識した。
(結局オレは欲張りなのか?)
ふっと笑う。
(オレを慕い、頼りきってくれる少女のミルフィー(ミルフィア)も、そして、オレの腕をも凌ぐとも思える剣士としてのミルフィー・・・・少女としての笑顔もいいが、あのくったくのない明るい笑顔、からかわれてばかりで時には小憎らしいと思うこともあったあのミルフィーも欲しいと・・・凄腕の剣士のミルフィーをも欲しいと、オレは・・・。)
つまりは両方で初めてミルフィーという一人の人物なのだ、とカルロスは改めて感じていた。
(が・・・・記憶が戻ったとき、オレの命は・・あるのか?)
ふとわき上がったその考えに、カルロスは思わず自嘲していた。
(まー、それもいいか・・・ミルフィーになら・・・)
それまでのカルロスが知りうる限りのミルフィーに関することは、自分の事も含め、旅の途中で話してあった。はっきりさせないと気が済まないところは、そのままらしく、それらの説明をミルフィーから懇願されたカルロスは、過去とそして記憶を失った原因であろうあの夜の事も、正直に話していた。
できることなら、今現在の記憶喪失時の記憶を保ったまま、以前の記憶を取り戻してほしいと願いながら。それなら、事は全てスムーズに収まるというものである。
が・・・現実は希望通りにいくとは限らない。記憶を取り戻すと同時に、今の記憶を失ってしまう場合の方が多い。
そして、その事に気づくと同時に、記憶が戻った時のことを恐れ、無意識にその努力を避けていたことにカルロスは気づいた。
ずっとそのままでいるわけにもいかない。いつか記憶は戻る。それならば・・・と、意を決したカルロスは、記憶喪失のきっかけとなり、そして、ミルフィーが異様なまでに恐怖を感じて震えた自分との対峙を試みることにした。あの時以来、剣は持っても決してミルフィーの目の前に立ったことはなかったのである。


「ミルフィー?・・・・あ、あの・・だな?」
「どうしたの、カルロス?」
「いや・・・な、なんともないのか?」
「なんともないって・・何が?」
が、あのパニックを覚悟でミルフィーの前で剣を抜いたカルロスはきょとんとしている彼女に拍子抜けする。
「オレがこうして前に立っていても?」
「それがどうか・・・・・・」
そこまで言いかけたミルフィーは、ハッとして口を両手で押さえた。
「ミルフィー?」
「あ、あのね・・・・・あの・・・・ご、ごめんなさいっ!」
勢い良くミルフィーはカルロスに頭を下げた。
「は?」
なぜミルフィーが謝るのか、カルロスはさっぱりわからずぽかんとしている。
「あ、あの・・・私・・・・・実は・・・・」
「実は?」
「あのね・・怒らないで聞いてくれる?」
「オレがお前に怒るわけないだろ?」
「そ、そうだとは思うんだけど・・・・あのね・・・」
「ん?」
ここにきてカルロス第六感がぴん!と何かを探り当てた。
「・・・ミルフィー・・・まさか・・お前・・・?」
わなわなと震える指がゆっくりと上がり、カルロスはミルフィーを指していた。
そう、恐怖で震えたその時の事をミルフィーはしばらくたってからようやく思い出したのである。思いだして、それからでは全てが遅いと判断して、ミルフィーはカルロスに指摘される前に謝ったのである。
それは忘れされるはずのない事だった。剣を持ったカルロスと対峙すれば、無意識に条件反射として恐怖が襲ってくるはずなのである。そうならないということは・・・・それを忘れていたということは・・・・。そして、今目の前のミルフィーの表情は・・・少し悪戯っ子のような表情の少女は、とりもなおさず・・・・・。
「い、いつからだ?いつ記憶が戻ったんだ?」
「ほら、カルロス、怒った。」
「い、いや、オレは怒ってなど・・。」
思わず怒鳴り声で聞いてしまったことにカルロスは狼狽える。
「じゃないだろう?こんな大事な事を黙っていたお前が悪いんだろう?」
「だ、だから、それはさっきから謝って・・・」
「謝って済むことと、済まないことが・・・」
「ふ〜〜ん・・・・」
低姿勢だったミルフィーに調度いいとばかりに?勢い良く言葉を放っていたカルロスは、不意に態度を変えた彼女にぎくっとする。
「私を殺そうとしたことは?」
両腕を前に組み、ちろっとカルロスに視線の強い流し目をミルフィーは送る。
「う・・・・・」
「いくら、何かがとりついていたとしても、謝って済むことと済まないことが・・・」
「あ、だから、それは、その、ミルフィー・・・?」
「記憶がなかったのをいいことに、ちゃっかり手をだしたことは?」
「だ、だから、それは・・・そ、それは・・だな・・」
「それは?」
「そ、それは・・どっちかというと・・・」
「どっちかというと?」
形勢大逆転。それは確かに記憶を失くす前のミルフィーと、その彼女に恋するがゆえ弱い立場のカルロスの図。
「い、今まで黙ってたってことは、お前だってそれを望んでいたんだろう?」
「そ、それは言い過ぎでしょ、カルロス?それじゃまるで私から・・・」
「違うっていうのか?じゃ、思い出してみたらどうだ?ミルフィーの方からオレに寄りかかって・・」
思考を巡らし、立場復活を計るカルロスと、真っ赤になって反論するミルフィーもいつもの図。
「ひどい・・ひどいわ、カルロス・・・・私、そんなつもりだったんじゃ・・ないのに・・・ひど・・ぃ・・・・」
「あ・・・だ、だから・・・その・・・・ミ、ミルフィー・・・?」
が、記憶喪失の成果か、そこにそれまでなかった図が加算された。つまり、ミルフィアの図。両手で顔を覆い、遠慮がちに?溢れこぼれはじめた乙女の涙にカルロスが勝てるわけはない。


「で?・・・オレが過去を教えた夜、銀龍とのコンタクトを試んで彼に頼んで記憶を取り戻してもらった事をずっと黙ってたってことか?」
「すぐその夜銀龍とコンタクト取れたわけじゃないけど。」
数分後、パニック状態?からの言い合いもおさまり、2人は木陰で話していた。
大きくため息をつくカルロスと申し訳なさそうなミルフィー。
銀龍の事をすっかり忘れていたのである。記憶が戻ってなくてもミルフィーの思いつく限りの方法でコンタクトを試みることはできたはずだということを。
そういえば、徐々に態度がいつものミルフィーのものに戻ってきつつある、とは感じていた。が、まだまだミルフィア的なところが多いと感じていたのは、芝居だったのかなんなのか、とふとカルロスは思う。
それは、一時ミルフィアの性格が全面的に出ていたことにより、全て自分で背負い込むより、あれもこれも(?)カルロスに頼りきっているのも楽というか、それまでのカルロスと違う反応もあって、楽しいとも感じたらしい。が、そうは言ってもいつもの自分に戻ることを押さえていたという事が芝居といえば芝居にあたるのだが、結構普通に接していても、以前より柔らかくそして素直なミルフィーだったことも確かだった。ようやくミルフィー(兄)の性格とミルフィアの性格とが上手く融合したということかもしれない。
「・・・記憶が戻ったって言うのが・・・恥ずかしくて・・。そうしてるうちに日が過ぎて・・ますます言いだしにくくなって・・・・ごめんなさい。」
「ミルフィー、オレがどんな気持ちでいたか・・・分かってただろう?」
「だから・・だから・・・ごめんなさいって・・・」
「あ、い、いや・・責めてるんじゃないんだ・・・ミルフィー・・・だから、な?・・ミルフィー・・・?」
焦って狼狽え始めたカルロスの死角。うつむいたミルフィーは、してやったりと心の中でVサイン。


まー、ともかくお互い全て丸く収まりハッピーエンド♪


注:本すじとは一切関係ありません。(笑

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