夢つむぎ

おまけ・旅 立 ち


 

 「ったく・・・ランディったら!」
あたしは頭にきて酒場で一人呑んでいた。
「よお、べっぴんのねえちゃん・・」
振り返ると、酔っ払いが一人酒瓶を持ちにたにたしてる。
「一人で寂しそうじゃねえか?俺が付き合ってや・・・・イヘヘ・・・いらんお世話だった・・ようで・・・・」
「ふん!」
酔っ払いはあたしの一睨みで、腰砕けになって引っ込んだ。

・・・ランディのくそったれ!やっぱりアッシュと一緒に行けばよかったよ!ホントにダメだね!あの病気は、一生治りゃしないさ!ったく!・・・
ランディは、この町に来た早々、女とどこかへしけこんじまったのさ。この町にもヒースが立ち寄ったとみえて、結構有名になっちまってたんだ。町に入る早々、娘っ子共がきゃあきゃあ寄ってきてさ・・・・
な〜にが、「あなたがあのザムハンで軍神を倒した魔導士、ランディ様ですか?」だ!
ヒースもバカにランディを美化して唄ったもんだよ。今度会ったら文句言ってやらなきゃね!おかげで鼻の下だら〜っと伸ばしちまって・・・娘っ子に囲まれていっちまってさ・・・・

−−ダンッ!−−
あたしは勢いよく杯をカウンターに置いて立ち上がった。
こんなとこで考えてれば考えてるほど、頭にきちまう。
「親父さん、お代、ここに置いとくよ。」
「へい、毎度!」
にこやかな親父の挨拶を後ろに、あたしは酒場を後にした。

まあ、いいさ・・・勝手にやってれば・・・あたしは、またお宝でも探しに行こうかね?いいネタも仕入れたし・・・また元に戻るだけなんだから・・・。

黙って待ってるのはあたしの性分には合わない。かと言って、他の女のところに行っちまった男を追いかけるのも、一緒にいてくれと懇願するのも嫌いさ。
あたしは、あたしのやりたい事をやるのさ!
「あばよ、ランディ!縁がなかったね!」
あほらしくなったあたしは、酒場を出て、そのまま、その町を後にした。勿論、ランディとは会ってない。

あの探検のおかげで剣の腕も十分ついた。仕事にゃ困らない。戦はなくなっても、小さないざこざや悪人は、どこにでも転がってるし、滅びた国跡にゃ、結構お宝も眠ってる。あんな女ったらしと一緒にいる必要なんか、全くないわけさ。
それに、どこかでアッシュと会えるかもしれないしね・・風の頼りでアッシュも同じような暮らしをしてるらしいと聞いたのさ。あの経験で、戦うって事が、戦での勝利が、いかに愚かしく虚しいかは分かったさ。だけど・・剣士はやっぱり剣は捨てられないのさ。戦士としての血がたぎる・・だけど、別にむやみやたらにじゃないから、いいんじゃないかい?

そう、あたしの盗賊としての血もたぎる!こんなところで、うじうじしてられるもんかい!お宝があたしを待っている!!

いざ、しゅっぱあーっつっ!

 



** 完 **


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