◆第一話・砂漠の操り人形◆
  

 (因果な性格だ・・・何も好きこのんで砂漠の行進をしてるんじゃないが・・・・・)
アレス・トラーノス。賞金稼ぎにして自らも賞金首という男。しかもその金額は1,2を争う高額だった。残虐非道の極悪人とも、いや、あれは単に、自分にかかった火の粉を払ってるだけさ。悪い奴じゃーないぜ。という者もおり、その評判は様々である。
その男は今、灼熱の炎天下、広大なる砂漠を一人、歩いていた。
それは、地底で見つけた神剣ともいうべき背中に背負った剣がそうさせているのか、はたまたその地底からの脱出はできたものの、何かがとりついているのか。男は自分の意志ではない何かに操られているかのように足を運んでいた。

ひたすら前進を続ける。すでに食料も水もなくなり、体力も限界がきていた。それでも、1歩1歩、鉛の棒のように感じる足を前へと繰り出す。それは何か強力なものにに引き寄せられているようでもあった。アレスが背にしている宝剣、プラネットバスターを引き寄せているかのように。

(・・・・そろそろオレも・・限界か?・・・・・)
視野が霞んでくる。照りつける太陽と砂地からむっと沸き立つ熱気。風があればまだいいのだろうか?いや、あればその熱風とそして、砂でやられる。
「オレはいつまで歩き続けるんだ?」
そんなことを考えながら、アレスはそれでも前へと進んでいた。

(なんだ?)
どこまでも続く熱砂しか見えなかった前方に、不意に人影が見えた。
(・・・どこかの・・兵士か?)
騎馬隊か?とアレスは感じた。
(オレを狩りに来たのか・・・・それもいい・・・かもしれん・・・・・)
熱さと疲労の中、すでにもうろうとしていた意識の中で、笑っている自分の姿を見つけていた。

(あれは・・・あの顔は見覚えがある・・・。)
霞む視野、遠くなりかかる意識の中で、先頭に立つ馬上の人物に見覚えがある、とアレスは思う。
遠回りにアレスを囲んだ兵の一団は、それ以上彼に近づく気配はなかった。
−ザッ・・・−
立ち止まって考えようと思った。しかし、それでも足は前へと動く。倒れたい、そう思っても身体はそれを許してくれなかった。

だが・・・それも限界が来たようだった。
(あいつは誰だったのか・・・・)
そう思いながら、ようやく身体がその動きを停止しようとしているのを感じ、周囲の兵士の放つ敵意を中、アレスは不思議と安堵感を覚えていた。

(そうだ・・・あいつは、カール。・・・昔、傭兵として戦地で・・同じ陣営にいたあいつだ・・・)

−ズン・・・−
男に関しての記憶が蘇ると同時に、アレスの身体は燃え立つような砂地に抱かれていた。


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