特別番外編・サンタクロースがやってきた!


 「ちぇっ!ケチっ!」
とある町、近くに魔物が潜むというひなびた町の一角に位置する広場。その中央にある井戸の横に、誰あろう、デッカード・ケイン、ホラドリム最後の長老がたたずんでいた。
それは、もちろん、洞窟で見つけた武器や防具、そしてアイテムの鑑定をしているのである。
魔王は倒れたとはいえ、世界のあちこちには、まだまだ魔物が潜んでいた。そして、なぜか当然のようにその手の洞窟にはお宝が眠っているのである。
その洞窟に眠る宝を目的として探索しているであろうその男は、ケインに荒く言葉をなげつけて立ち去っていった。
が、ケインはどこ吹く風である。
「ふぉっふぉっふぉ・・・こんなはした金、ケチケチしとるのはどっちぢゃ?」
が、はした金とはいえ、アイテム鑑定の能力保持者は数少ない。そして、こういった所では、ひっぱりだこ。アイテム鑑定の魔法書を買うよりは多少だが、安いのである。
件の男は、それ以上にまけさせようとしたのだが、ケインは、世界を救った勇者からでもきちんと鑑定料は受け取っていた、と主張し、頑としてまけなかったのである。
そのケチさかげんは、世界を救った勇者、ニールでもよ〜〜く知っていることでもある。



そして、 時と場所は移り・・・その日はクリスマスイブ。
魔王の恐怖がなくなったとはいえ、破壊された世界のあちこちの町や村はまだまだ復興途中だった。ほとんどの村や町は、家族や親族を失った大勢の子供たちをかかえていた。町は子供たちに十分な保護の手を差し伸べるまでの余裕はまだまだなかった。


「ふぉっふぉっふぉ〜〜〜、さー、子供たち、いい子にしてたごほうびだよ。さ〜さ〜、おいで、子供たち♪」
とある町のとある孤児院の表。真っ赤な衣装に身を包んだ一人の老人が降り立った。

「サ、サンタさんだーーー!」
「わ〜っ!サンタクロースのおじーさんだっ!」
「本当にいたんだ、サンタさんっ!」
目を輝かし、一斉に外へ駆け出す子供たち。
「おおっ・・・押しちゃいけないよ。小さな子もいるからね。だ〜〜いじょうぶぢゃ。
全員にプレゼントはあるからの。ふぉっふぉっふぉ♪」


その年、世界のいたるところでサンタクロースの姿があった。
そして、喜ぶ子供たちの顔があった。


「どっこらしょ〜〜っと・・」
どかっとイスに座るニール。
「疲れた〜〜〜。」
その横にサシャナが座る。
「子供たちの笑顔を思い出せば、こんな疲れなんか吹き飛ぶわよ。」
「ふぉっふぉっふぉ・・・さすがエリーぢゃ、いい事言うのぉ〜。」
「・・・・じいさんのサンタクロース姿を見ちまったことが災いだったな。」
「でも、ニール、あたし長老、みなおしたわ。」
「まーな・・ケチだ、ケチだと思ってたけどな、こういう目的があったんなら許せるか?」
「ふん!ケチだけ余分ぢゃわい!」
「ふっくんもたっくんももっくんもご苦労様〜〜。それからその他一同召還モンスターくんたち、ありがとー!」
にこっと笑ってサシャナがみんなの労をねぎらう。
そう、いかに(正体不明の)ケインだとて一夜で世界中の子供たちにプレゼントを配るようなことはできない。が、それでもケインはやろうとしていた。たとえクリスマスが過ぎても。
そこへ、ちょうどよかったのか悪かったのか、サンタクロースの格好で出発しようとしていたケインの前にニールたちがやってきたのである。

あとは、ケインのいつもの手。上手に乗せてこき使う(笑)というより、今回サシャナやエリーの方が積極的に協力を申し出たのだが。

それでも
人手が足らないので、モンスターも召還し、それぞれサンタクロースやトナカイに扮しての大騒ぎ、そして前代未聞の総出動となったのである。

「あ〜あ・・・召還だけでも疲れるってーのに・・・なんだってオレがサンタなんか・・・・」
「いいじゃない、子供たちは喜んでたんだから♪」
「んじゃ、オレ、一眠りさせてもらうわ。もうくたくただ・・・。」
「ほ?いいのかの?今夜は特別にとっておきのワインを馳走しようと思ったんぢゃが?」
「ほ、ほんとか、じいさん?・・・・天変地異の前触れじゃねーのか?」
ごろりと横になろうとしていたニールが飛び上がった。
「わしはうそは言わんぞ?うそは。」
にこにこしながら、置くからワインを持ってくるケイン。
「これはのー、ホラドリム崩壊の一年前の収穫の時のものでなー・・」
「うそこけ!何百年前のこと言ってんだよ?そんなワインあるわけねーだろぉ?・・・って・・・あんた、いったい歳はいくつなんだ?」
「ふぉっふぉっふぉ・・・当ててみたらどうかの?」
「当てろって・・・・どうせまたごまかしてあやふやにしてよしにするんだろ?」
「ふぉっふぉっふぉ♪」
「あははははっ!」

その夜、ケインの家は、明るい笑い声と暖かな灯りで満ちていた。
          


ニールとゆかいな仲間たち-Index】