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【 指輪物語 その3 】
〜Diablo Story No2〜



 翌日、4人は早めに朝食を取ると、早速修道院へと入った。
しーんと静まり返った内部はいつも変わらない。そして、一歩、また一歩中に入っていくにつれ、悪鬼の声が耳に入ってくる。何とも言えない背筋がぞっとするような悲哀を含んだ不思議な声である。

 「何度来てもあんまりいい気分じゃねぇな・・。」
ホーダンが吐く。
「何言ってんのさ。あんたのいい女(ひと)の住んでるところだろ?」
ローダが少しからかうように言う。
「下はこんな声はしねぇよ。」
ホーダンはぶっきらぼうに応える。
「おや、そうなのかい?」
「ローダ、そいつには冗談は通じないぞ。切れると恐いからな。」
「おや、そいつはちょっとやばいかねぇ?」
大げさに肩をすくめる。
「つまんねぇ事言ってねぇで、ほら、団体さんだぜ。」
ホーダンの指さす方を見ると、スケルトンの一段がガチャガチャ骨を軋ませながら近づいてくる。
−ヒュン、ヒュン、ヒュン!−
すばやくジリが弓を射る。
「よーし、久しぶりに一丁暴れてやるか!」
「ああ、こんな奴等じゃ物足りないが、ウオーミングアップには丁度いいかもな?」
「ったく!呑気にしゃべってるんだからねー。・・まぁこのくらいあたし1人でも軽いけどさ。」
別のモンスター集団と応戦しながらローダが余裕で言う。
「おお、これは、これは。レディに失礼を。」
言うが早いか、すっと杖を翳し極上のファイアーボールを集団に投げつけるラサス。
「悪い、悪い・・」
ホーダンも剣を構え、すばやくローダを取り囲んでいる集団の中に切り込んで行く。
つい先ほどまで静まり返っていたフロアに弓を放つ音、剣を交える音、ゴオッーっと火球の飛んでいく音、モンスターの断末魔の叫び、骨の砕ける音、などが響き渡り、一気に賑やかになる。そして、数分後、再び静まり返り、4人の足音だけが辺りに響く。
その繰り返しが各階で何度となく繰り返され、そして、徐々に強くなる敵に苦労しながらも、いつしか13階に降り立っていた。

「ふーーーーー、無事来れたねー。」
階段を下りた所でローダが大きなため息をつく。
「私、ここまで下りて来たの初めてです。」
辺りを警戒しながらジリが呟くように言った。
「あたしだってそうさ。まぁ、今のトリステラムじゃこれだけ腕の揃ったパーティーはいないんじゃないかい?」
「自分で言ってりゃ世話ねぇな。」
ホーダンが少し呆れ顔で言う。
「はは!事実は事実さ。お宝もこーんなにたくさん手に入ったの初めてさ。」
ローダが大きく膨れ上がった自分のバックパックを指さす。
「一旦戻った方がよさそうなくらいだな、ローダ。」
ラサスが笑いかける。
「かもね。」
そう話していた時だった。物陰から魔法弾が4人を狙って飛んでくる。
ーバーン!ー
運良くそれは階段に当たったが、弾けた際膨張した炎が一番近くにいたジリの左半身を包み込む。
「きゃぁっ!」
特殊アイテムのバリアのおかげで大事には至らなかったというものの、結構衝撃は感じる。
「大丈夫か?」
声をかけながら戦闘態勢に入る。
「はい、なんとか・・」
ジリは急ぎ自分自身に治癒魔法をかけ戦闘に加わる。
ーバリバリバリ!ー
「そーら、お次もおいでなっすった!ストームデーモンだ!」
ストームデーモンの集団がライトニングを放ちながら近づいてくる。そして、遠くからサッキュバスが魔法弾を放ってくる。
「あんたのかわいい女(ひと)はどこだい?まさかこの集団の中にいるんじゃないだろうね?」
「まさか・・・」
魔法弾とライトニングの嵐の中、必死の攻防が続く。
ホーダンとローダがストームデーモンの集団に切り込み、ジリが弓でサッキュバスを射、ラサスは一番後方から石化の魔法と火球を上手に使い分けて援護する。

「おーい、一体どれだけいるんだ?やっつけても、やっつけても次から次へとやって来やがる。」
「あんたの彼女に仲裁を頼めないものかね?」
ぐるっとストームデーモンに囲まれ、ホーダンとローダは背中合わせで彼らと応戦していた。
「まず無理だな。俺が知っている限り、あいつはいつも俺といた。他の奴らの所に行った事はないんだ。人間なんかと一緒にいるってんで、村八分にされてたのかもしれないな・・。」
「・・そうかい・・そうかもしれないねー・・・」
話している間も攻防は続く。
「やっぱりちょっとしんどいみたいだねー・・。」
「おいおい、弱音を吐くんじゃねーぜ。まだまだこれからなんだぞ。」
「分かってるよ。まだまだ死にたくないからね!」
飛び交う魔法弾や矢を放つ音、剣の音、敵の叫び声などが洞窟いっぱいに広がっていた。
なかなか減らない敵に対して4人という限られた仲間。必死の攻防も虚しく、徐々に体力が、精神力が喪失していくのをそれぞれが感じ始めた頃、未だローダと背中合わせで戦っていたホーダンの視野に、群がるデーモンの隙間から、恋人であるはずのサッキュバスの姿が入った。彼女の後方には、その仲間がまるで彼女をけしかけているかのように集っている。
「あ!おい!」
彼女の指に光る指輪を認め、あのサッキュバスと察したホーダンが叫ぶ。悪い予感が男の脳裏を横切る。
その予感通り、次の瞬間、極大の魔法弾が二人を襲った。
「うわああああああ!」
「きゃあああああ!」
「ホーダン!」
「ローダ!」
叫び声につられ二人の方を見たラサスとジリが同時に叫ぶ。
その一瞬の隙に横に回ったデーモンの鋭い爪が二人を襲い、ライトニングと魔法弾が集中する。
「きゃあっ!」
「ぐわっ!」

 数秒後、ライトニングや魔法弾で明るく照らされていた洞窟内は、再び闇に包まれ、少し前の騒々しさが嘘のように静まり返っていた。
 その暗闇の中、一匹のサッキュバスが大事そうに人間の男の首を抱いていた。
そっとその血の気のない顔に口づけすると嬉しそうに抱え洞窟の奥に入っていく。
しっかりと男の頭部を抱くその手の指にはめられた闇色の宝石が埋め込まれた金の指輪だけが、暗闇の中で光っていた。

 

[The End]

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【DIABLO】