村の勇士・・・スケルトン−T 


 あるポカポカ日和の昼下がり、誰かが山道を鼻唄を歌いな がらのーんびり歩いていた。
誰か・・それは、真っ白な歯、 じゃない!太陽の光を浴びて光り輝く、ピカピカに磨かれた 純白の骨男!つまり、骸骨が歩いていた。
「オーレぇは、この世ーで一番、素敵と言われーた男、スケ ルトンの中のスケルートン!その名ーもスケルトン・・・お 茶ぁー!!」
やおら、持っていた湯飲みを前に突き出し、ス ケルトンポーズをとる。(それが、スケルトンポーズと言え るのなら)
本人はTとお茶のティーをかけたつもりなんだけど、そんな 事はどうでもいい。ギャラリーなんて、1人もいないんだか ら。
まあ、そんな感じで愛すべき(?)スケルトン−Tの旅は続 いた。山奥のそのまた山奥、最後には、けもの道になるとい うスケルトンたちの隠れ里、彼の故郷へと。

 「お帰りなさああああい!Tのおじさああああん!」
故郷の入口に差しかかると、村の門まで出ていたチビスケル トンたちが一斉に彼を歓迎した。
「おお!チビッコたち、ごくろうさん、ごくろうさん!」
どこから出したのか扇子を取り出し、ぱっと開いてスケルト ンポーズその2。(なんだそりゃ?)
 そして、彼はチビスケルトンたちに囲まれるようにして村 へと入った。
 「おお、Tさん、お帰りぃ。」
「やあやあ!今帰ったよー。」
「歓迎会は村長さんの家じゃよ。」
「おお、そうかい、そうかい。」
Tはもうこれ以上ないと言っていいほどの上機嫌。
それもそのはず、ここでは、魔導村で大活躍中ということに なっていたから。
村長さんの家に着くまでも、会う人毎に声をかけてもらって ルンルン気分。

 「ごほん・・本日皆の衆に集まってもらったのは、他でも ない。我等が村の勇士、スケルトン−T殿が、久々にご帰郷 して下さったからじゃ。」
わあーわあー、パチパチ!!大喝采!!
村長さんの家で、早くも始まった歓迎会。上座に座ったTは 照れ笑い。心なしか、骸骨がうっすらピンク色。
「では、皆の衆が楽しみにしている外の世界の話をお願いで きますかの、T殿?」
この村に住んでいるスケルトンたちは、T以外村の外へ出た ことがなかった。なぜかって言うと、見つかると大騒ぎにな ってしまうから。だから、堂々と魔導村に住み、外の世界を 知っているTは、村人全員の憧れ、村の勇士。
「はい、はい。」
上等の玉露を飲んで、もうほわほわ状態、しーあーわーせー 状態で早速話を始めるスケルトン−T。

 「それでは、そうだなぁ・・・何から話そうかなー?」
「おじちゃーん、何か面白い冒険のお話して!」
チビスケルトンの1人が目を輝かせて聞いた。
「そうだ!そうだ!冒険のお話がいいー!」
チビスケルトンの大合唱が始まった。
「うーん、それじゃーだなー・・。」
腕組みをし、少し目を瞑って考えるT。
「よーし、じゃあ、塔での話をしてあげよう。」
「塔?」
「ああ、そうだよ。魔導村には、魔導幼稚園の卒業試験に使 われている塔があってな。そこでお手伝いをしたことがある んだよ。」
「わー!すっごーい、おじちゃん、試験官したんだ−!」
「わー!先生してたんだー!すっごぉーい!!」
もうチビスケルトンたちは、目を輝かせて大騒ぎ!
「あ・・う、うん・・まぁな。」
頭をかき、Tはエヘヘと照れ笑い。
「その塔は、魔導師の塔なんだ。名のある魔導師のほとんど が、その塔での試験をクリアしている。というか、その塔で の試練を越えなくっちゃ、魔導師の学校、魔導学校へは入れ ないんだ。オレはそこで2階を任されてたんだが・・・。」

 スケルトン−Tは、その時に思いを馳せる。
「オレのまず第一の役目は、1階の階段の近くで、回復の魔 導書の番人だったんだ。挑戦者は、オレと戦って勝たないと その呪文は手に入れることはできないんだ。回復の呪文と言 えば、魔術の中でも基本中の基本。冒険に出掛けるにしても 誰かと術を競うにしても、不可欠な呪文だ。その呪文を伝授 するのに相応しい人物となりうるかどうか、優秀な魔導師の 素質を備えているかどうかの判断を、任されてたというわけ さ。」
「すごぉぉぉぉぉい!!」
「ははは、まぁな。」
(言い方を変えりゃ、最初の、しかも一番簡単な試練・・一 番弱い役なんだな、これが・・・とほほ・・・。)
「ある日、おかっぱ頭の可愛い女の 子が挑戦者として入って来た。クリクリとよく動くその大粒 な目で、少し薄暗い塔の中をあちこち歩き回っていたよ。」
「で、おじちゃんに勝ったの?その子?」
「ああ・・・あんまり可愛かったもんだから・・ついつい負 けてやってしまったんだ。ははは。」
(ああ・・オレとしたことが、あんなチビガキにあっさりと 負けてしまって、情けない・・・。だけど、あの女の子がア ルルだとはなぁ。今では魔導村一番の魔導力の持ち主だもん な・・サタン様にさえ目をつけられてるし・・・オレが負け たのは当たり前かもしれんなぁ・・・だけど、実際すごい子 だったなぁ・・全然手加減なしだったもんなぁ・・・。)

−−塔1階の行き止まりで、スケルトン−Tは、自らバラバ ラになり自分の骨で囲むようにして、『ヒーリング』の呪文 が書かれた魔導書を守っていた。
子守りじゃなくて、書守り。−−

 たいくつでたいくつで、毎日がいい加減いやになってきて いたところに、今年は、何年振りかで卒業試験を受けれる子 供がいると聞き、わくわくしながらその日を待っていた。

 「まだかなぁ・・女の子って聞いたけど、どんな子かな? 可愛い子だといいなぁ・・でも、手加減は絶対せんぞ!その 子の為だからな。将来力のある魔導師になれるかどうかの試 練なんだから。」

「えっとぉ、こっちの道は、どこまで続いてるのかなぁ?」
女の子の声が聞こえてきた。どうやら角を曲がってくるとこ ろらしい。
(お!来た来た!)
Tは、バラバラのまま、もうもうわくわくドキドキ!
「あっ!何か落ちてる!」
角を曲がるやいなや、その子は走ってきた。
ポッチャリ顔にクリクリおめめ、おかっぱ頭の元気一杯の可 愛い女の子。
(やったー!可愛い子だ!)
別にナンパするでもないのに、そう思ったT。
「本かなぁ、これ?」
一人呟きながら、Tが守っている本に手を延ばしてくる。
「ちょっと待った!」
この時を待ち続けて何百年・・(というのは嘘)Tは喜び勇 んで、バラバラになった骨を合体させる!
「この本を取ろうなんて、お前は泥棒だなぁ?」
この仕事を引き受けた時に教えられたセリフを口にする。
「え?ぼ、ぼく、泥棒なんかじゃないよ。アルルって言うん だよ。今日は幼稚園の卒業試験で、ここに来たんだよ。おじ さんは?」
「え?お、おじさんかい?おじさんは、ねぇ・・・・。」
ついついその子に合わせてしまって、はっとする。
「じゃーなくってだなぁ・・・。と、とにかく、黙って他人 の本に手を出す子は、泥棒なの!」
「ぼく、黙って手を出してないよ。ちゃんと、本かなぁって 言ってからだよ。」
「ぐっ・・・」
事実は、事実。Tは、完全に口で負けている。
「じゃーそういう事にして・・とにかく、この本が欲しかっ たら、おじさんと勝負だ!分かったな?」
ジロリと思いっきりアルルを睨みつける。
「じゃ、ぼく、いーらないっと。」
Tの視線を受け流し、そう言ったかと思うと、踵を返すかの ようにくるっと向きを変えて来た道を戻ろうとするアルル。
「ち、ちょっと待てーっ!」
慌ててそれを止める。
「何?おじさん?」
「そ、それじゃ、オレは何のためにここにいたのか分からな いだろぉ?」
「なんでいたの?」
「はっぱーー・・。」
アルルの素朴な質問に、呆気に取られ、Tは拍子抜け、おま けに、そのショックでバラバラ状態に戻ってしまった。
「あはははは!おじさんって面白いなぁ!最初見た時は、ち ょっとびっくりしちゃったけど。」
幼稚園児の素朴な明るさと恐いことも疑う事も知らない純真 さは、時として、地上最強の攻撃呪文となる?
「あれ?これって、もしかして、倒したことになるのかな? ・・じゃー、これもらっていくねー。」
少し様子を見ていても、合体しそうもないTに、勝手にそう 理解したアルルはヒョイと本を拾いにっこり笑った。
「ありがとう、おじさん。」
(ゲ・・!)
今更また合体して、やり直す事もタイミングが悪すぎる。ス ケルトン−Tは、そのままたぬき寝入りを決めた。
「わーい!得しちゃったー!」
そんなスケルトン−Tの気持ちなど、分かるはずもなく、ア ルルは意気揚々とそこを後にした。
(オレって・・・一体・・・)

−−アルルの姿が見えなくなってから合体したスケルトン− Tは、大きくため息をつくと、次の仕事に移った。−−

「それで、2階ではどんな事したの?」
「ああ、2階では、それ以上進まないように襲う役目さ。可 哀相と思うかもしれないが、それもその子の為。それで、諦 めるようならりっぱな魔導師にはなれるはずがない。試練を 乗り越えてこそ、達成できるってもんさ。だからオレも本気 で襲ったんだ。」
「わー!さすが、Tのおじちゃん。厳しいんだー!」
「ははは、まぁな。」
(のつもりだったことは、だったんだがなぁ・・ふう・・)
彼は、またしてもその時のことを思い出し、うっかりため息 をついた。
「どうしたの?おじちゃん?」
「ん?ああ・・・その時のことを思い出してなぁ・・。」
「またその女の子のこと?」
「ああ、そうだよ。」
「おじちゃんのことだから、きびしくするつもりが、また、 甘くなっちゃったんじゃない?」
「ははは・・・。」
ごまかし笑いをするしかないT。
「ははは・・そ、そうなんだ。実はその子がね、泣いてしま ってねー。おじちゃん、子供には弱いから。」
「T殿は、子供好きじゃからのぉ・・・。」
村長さんを初めとする村の大人も真剣に聞いている。
「ま、まぁ・・・。ははは。」
Tは頭をかきながら照れ笑い。
「オレは、究極のスペシャルアイテム、『経験の布団』の管 理を任されていたんだ。力のある挑戦者のみに渡すことがで きるアイテムだ。」
「わー!すごぉぉい!おじちゃんって本当に頼りにされてる んだねー!」
「ああ、そうだ。」
(ええーい、こうなったらもうやけっぱちだ!!どうせアル ルはここにはいないんだ。)
「その布団が、ほしくて、その子は何度でもおじちゃんと戦 いに来たんだ。だけど、なかなか勝てない。それで、最後に 泣いちゃってね。おじちゃん、それでもその子の為なんだと 心を鬼にして追い払ってたんだけどね・・結局最後には、あ げちゃったんだよ。」
「ふーん、その子喜んだでしょう?」
「ああ、もう、なんて言ったらいいか分からないくらい喜ん でね、一生忘れないって。」
「そうだろうなぁ。」
「さすがおじちゃんだ!」
「ははは・・・。」

 −−そして、再び思い出す。その時の事を。−−

 「ああーっ!本の時のがいこつのおじちゃんだー!」
塔の2階でスケルトン−Tを見つけたアルルは、真実嬉しそ うに叫んだ。
一方、スケルトン−Tは、何やら悪い予感がして、その声を 聞いた途端に寒けがする。
(本の時は、話しかけたからいけないんだ。ここは、とにか く攻撃をしかけりゃいいだろうな。)
そう思ったTは、手にしていた剣でアルルに襲いかかる。
「アチー!」
「わあっ!」
咄嗟に避けたアルル。
「何するの?ぼく、何にも悪い事してないのに・・。」
それには答えず、再び攻撃をするT。
「ち、ちょっとぉ・・大の大人が女の子を苛めていいの?」
(ととと・・・・)
バランスを崩して1人よろめくT。
「ったく!お前といると調子狂っちゃうなー。とにかく、こ れは、卒業試験なの!受けなくちゃいけない試練なの!」
アルルの目をじっと見つめ、これ以上何も言わないでくれ、 と祈りながら言った。
「ああ、そうなんだぁ・・・これも試験なんだ・・そうかぁ ・・。」
どうやら納得してくれたらしいアルルにTは、ほっとする。
「よ〜し・・じゃあ、いくよ!ダイアキュートッ!」
「へ?」
Tが、まだ体制をたて直していないうちに、アルルは呪文を 唱え続ける。
「も一つ、ダ、ダイアキュート!」
「お、おい、ちょっと・・・」
(なかなか2階へ上がって来ないと思ったら、お、お前はい ったいいくつまでレベルを上げたんだーっ?!)
「いっくよぉーーー!ファ、ファ、ファイヤー!!!!」
慌てるTなど全くお構いなし、アルルは幼稚園児だとは信じ られないくらい巨大なファイヤーボールを投げつけた!
−バッシュゥゥゥゥーーーーーン!バボォォォォォン!!−
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!アチアチアチィッー!!」
真っ白いその骨が一瞬にして真っ赤になった。
「ひ、ひぇーーー、お、お助けをーーー!」
(こ、こんなはずでわーー!)
そう、普通なら痒いくらいの攻撃力のはず、軽〜く倒せれる はずの設定。なのに、この強さ。いかにアルルが根気よくレ ベル上げに励んだかの証拠。それもあのざこモンスター、緑 ぷよ相手に。
気分は真っ青、身体(骨)は真っ赤になりながら、アルルの 前に跪く。もう1発でもくらったらおだぶつ。
「ふ、ふわふわのお布団あげますから、どうか許してくださ ぁい。」
「ふわふわのお布団?」
アルルはきょとんとしている。でも、手にはしっかりとファ イヤーボールが。
「なんで?」
「へ?」
また恐怖の『なんで』攻撃。なんとか理解させないと、その ファイヤーボールが今にも飛んできそうな気配。
「あ・・あの・その・・そ、そう・・『経験の布団』と言っ てですね、魔導力がアップするという不思議なお布団なんで すよ。アルルさんが勝った時の賞品として、ですね・・。」
「でも、まだ勝ってないよ。」
そういいつつ、ファイヤーボールを投げようと目標をTに定 める。
「ま、待って下さい。オレ、い、いや、私が参ったと言って るんですから、間違いなくアルルさんの勝ちです。」
「そうかなぁ?」
「そ、そうですよ。それに、私が倒れてしまっては、そのお 布団を差し上げれないでしょう?」
「・・それもそうだね。」
何とか納得してらしく、フャイヤーボールを消したアルルを 見て、Tは、胸をなで下ろした。
(ふーーーーーーーーーーーーー・・・・・。間一髪!)
「ち、ちょっと待ってて下さいね。」
Tは、慌てて奥から布団を持ってくる。
「わー・・すっごくふっかふか!気持ちいいー!」
「そ、そうでしょ?」
Tは、もはや太鼓持ち。
「うーーん、ちょうどお昼寝したかったし・・じゃあ、お休 みなさい、がいこつのおじちゃん。」
「お、おやすみ。」
(た・・助かったーーー・・・・)

−−と思ったのも束の間、それ以後、調子がいいということ で、何度もアルルに布団を催促され、その都度倒されたT。
そして、一度寝る度にレベルアップしたアルルの呪文は、効 くなんてモンじゃなかった。それは確かに『苛め』だった。
ただ、アルル本人には全くその認識はなく、自分をより高め たいという純粋な気持ちだけ。でも、哀れなのはスケルトン −T、何十回そこで倒されたことか・・。−−

 「と、まぁ、オレだからその女の子も難なくその布団を手 にいれることができて、無事塔の試練を乗り越える事ができ た、という事だな。」
「わあわあ、パチパチパチ!」
都合のいいように作り変えた話に、村人たちは大喝采!
心が痛みながらも、みんなの夢を壊してはいけない、と思い ながら作った話。Tは、冷や汗びっしょりで照れ笑い。
(いいよなー、ここだけの話だし、アルルもここにはいない んだから・・・。)

 「ふーん・・小さい時だから、あたし忘れちゃったけど、 そうだったかなー?」
聞き覚えのあるその声にTはぎくっとする。
そして、恐るおそる声のする方を見る。と、肩に黄色いへん てこな生き物を乗せた女の子が部屋の片隅で、お茶を飲んで いた。
それが、アルルとカーバンクルだと認識するのに、いつもよ り時間がかかった。その信じられない目の前の事実・・それ をTの頭は認めたくなかったから・・・。
「ア・・ア・・・ア、アルル・・さん・・ど、どうしてここ に?」
Tはもう大パニック。
「どうしてって・・もももに、ここのお茶の新商品を仕入れ てきてくれって頼まれたんだよ。」
「お、お茶?」
そういえば、と、村は、その生計をお茶で賄っていたことを 思い出したT。
「そうですじゃ、T殿。T殿が教えて下さったお茶の生産で この村もすっかり住みよくなりましてのぉ。じゃが、お茶も 競争が激しくなってきましてのぉ・・今、新商品なども考え たりしておりますのじゃ。」
村長は、袋に入ったお茶の葉をTに差し出す。
「今、アルルさんにとってもいいアイデアをいただきまして な。」
「ア、アルルさんに?・・・」
びくびくしながら袋の中のお茶の葉を見る。しかし、どこが どう違ってるのか分からない。
「そうですじゃ。今、世間では、健康食品が脚光を浴びてる とか。で、カルシウム入りのお茶などどうかと。」
にこにこ顔の村長。
「カルシウム入り?」
「うん、そうだよ。それも、特別なカルシウムだよ。」
アルルが何やら含み笑いしながら言う。
「今から調合するんだよ。」
「い、今から?」
「うん、そうだよ!勇士スケルトン−Tのカルシウム入り、 特性健康茶!これで、あなたも長生きできます!」
「グーッ!!」
カーバンクルのその可愛らしい手には、かみそりナイフが! 真っ白なスケルトン−Tの全身(の骨)が、心なしか青白く なった。
「ち、ちょっと、待てって・・おい・・・」
「村の為だよ、勇士T殿。勇士なんだもん。これくらい軽い よね?削ってもまた再生されるでしょ?」
「ア、アルルさぁん・・・。」
「ちょっとだけだって。」
にっこりと微笑むアルル。
(ばらさない代わりだよ。)
アルルの目がスケルトン−Tに語っている。
Tは、もう人目もはばからず、じりじりと後ろ下がり。
「でね、カーくんが、調合する前に熱消毒を、だって。」
見ると、カーバンクルの額の宝石が、ものすごい勢いでその 輝きを増していた。
その目標は明らかに腰砕けになって後ずさりするスケルトン−T・・・。
そして・・・それは容赦なく発射された。
「・・ぐーーーーーーっ!」



  お わ り  

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