青空に乾杯♪


☆★ そして終わった?・・・ ★☆

*** 特別番外編 火龍の少女、命名秘話 ***
 

これは、火龍の少女の名前候補リストを送ってくださったレイベンさんに感謝の印として書いたお話です。
招待された館は、黒い怪鳥こと、レイベンさんのサイト。

 「おはようございます。」
ある晴れた日の朝、老婆の家で休息をとっていたミルフィーらの所に見知らぬ男がやってきた。
「おはようございます。」
戸口に出たミルフィーが対応する。
「どなた?」
「これを。」
「これ・・・・って、牛乳?」
男はビン牛乳が詰まった箱をミルフィーに差し出した。
「牛乳なんて取ってないし、配達をお願いした覚えもないわよ?」
差し出した牛乳を受け取ろうともせず、ミルフィーは怪訝そうに男を見つめる。
「あ・・い、いえ、これはお届け物でして。」
「お届け物?」
「はい、それから、これを。」
箱を下に置くと、男は背広の襟に手をかける。
そして、さっとそこから取り出したのは、マグナム44・・ではなく1通の封筒。
「え?手紙?」
「はい、そうです。」

ガサガサと封筒を開けて手紙を読むミルフィー。
「招待状って・・・あやしいわね。」
返事をもらわないと帰れないという男に、ミルフィーは全員集合をかけて相談する。
それは、ネットの森にあるとかいう館への招待状だった。手紙の送り主は黒い怪鳥。

『・・・・で、すっかりファンとなってしまった私は、ふと外の景色に見とれつつ、ペンを握っておりました。気がつくとあなたのお名前をいくつか・・・・。気にいっていただけるかどうかはわかりませんが、一度当館までおいで願えないでしょうか?もちろん皆様ご一緒で。楽しい夕食の一時をすごすことができたらと、楽しみにしてお待ちしております。・・・・・・』

「どうする?」
「面白そうだわ♪」
「だが、何者だ?」
「分からないからいいんじゃない?!」
「怪しすぎだぞ?!」
「でも、敵意は感じられないわよ。」
「う〜〜ん・・・・」

相談の結果、本人の火龍の少女がすっかりその気になったということで、行くこととなった。
「あ、ありがとうございます。こ、これで、私も命が助かりました。・・・川淵隊長に内緒にしていたという罪悪感も・・・これで、むくわれます。」
男は深々とお辞儀をして立ち去っていった。

そして彼らは旅立つ。牛乳を一気飲みして勢いをつけ。
「しゅっぱーーーつ!」
火龍の少女が手紙に書いてあったとおりに、それを空に投げる。
−ファサ・・・−
一瞬にして白頭鷲に変わったそれは、道案内をするとでも言うように彼らの頭上で旋回する。

吹き荒れる嵐と戦い、竜巻に巻き込まれ、海の中に叩き込まれ、怪しげな空間で魑魅魍魎と戦い、ようやくネットの森にたどり着く。そこは鬱蒼と樹木が茂り、突風が行く手を阻み、天変地異が日常茶飯事の不思議なそして怪しげな空間。

ふっとそれまで案内してくれていた白頭鷲が元の手紙に戻る。
火龍の少女はゆっくりと舞い落ちてくるそれをそっと手に受け止める。
そして、その入り口で手紙に書いてあった合い言葉を一斉に叫ぶ。
「毎度〜〜!しぼりたての牛乳で〜す!」

−シュコーーーーー・・−
突然追い風が吹き、彼らを包み込んでその見えない翼に乗せる。
「きゃーーーーー!!」
「ひ、ひぇーーーーーー・・・」
「わーーーお!」
「・・・・・・・」
「やっるーーーー!」
ジェットコースターよろしく、風は彼らを入り組んだ木々の間を見事なまでに上手く通り抜けて運ぶ。
ともすると大木にぶつかりそうでもあり、もうスリル満点!!
一行はその風に乗って無事森の中を駆け抜け、目的の館へと難なく着いた。

「えっと・・・いいのよね、ここで。」
緊張しながらドアノブを握ろうとする。
−ギギギギギ−
まだ握ってもいないのに、ゆっくりと扉が開いた。
そして1歩中に入った彼らを、怪しげな人物が迎える。
鍛えられた筋肉が躍動し、光を弾く上半身を惜しげもなく見せるその背には、『燃』という蛍光色のボディーペインティング。そして、この暑いのになぜ?と思われる真っ黒な皮パンツと燃える炎の赤とそれに対抗する激流を表した青で彩られたヘルム。その瞳は、激しく燃えあがっている。誰あろう、この人物(?)こそ、黒い怪鳥、その人だった。
「遠路はるばるようこそ。こちらへどうぞ。丁度食事の支度が整ったところです。」
その風貌とは正反対のやさしい物腰と口調でその人物(?)は彼らを迎えた。

そして、最初こそ警戒していたものの、彼らは数分後には和やかに談笑しながら食事をとっていた。

「さて、本題なのですが。」
食後のデザートを食べながら、黒い怪鳥は、1冊の分厚いノートを差し出した。
そこには、あるは、あるは・・彼が昼寝しながら夜も寝ないで星空を眺めつつ目を輝かせて書き留めたという火龍の少女の名前候補が!

「えっと〜〜・・・・ねー、ミルフィーはどれがいいと思う?」
あまりにもたくさんあったので、彼女は迷っていた。
「ねー、レオン・パパは?」
「そうだなー・・・・」
が、なかなか決まらない。
時は刻々と過ぎていく。
うーーん・・と全員頭を悩ませながら、お茶やケーキをお代わりしていた。

そんなことをしている間にいつのまにか夜は更けていた。
それでも夜食を食べながら、続いていた。

「・・・・ミルフイア・・・・」
「え?」
よほど疲れていたのだろう、ミルフィーにいいところを見せようとはりきって戦っていたカルロスが、いつの間にか眠っていた。そして、その口から出た寝言・・・。
それを聞いて火龍の少女が目を輝かせて叫んだ。
「ミ・・リア?・・・そ、そうよね、ミルフィアじゃあまりにもそのままだから・・」
寝言は確かにそう聞こえ、ちょうどその時、火龍の少女はその名前を目にしていた。
ミルフィアが気に入っていた火龍の少女は満足したように微笑む。
「『ミリア』でいいわ!ね!いいわよね、ミルフィー?」
「あ、うん、そうね。」
「ん?ミネア?」
ねぼけたカルロスが呟く。
「違うわよ、それはどこかの占い師・・・だったかしら?」
しばらく考え、そんなことはどうでもよかったと気づき、少女は言葉を続ける。
「・・・そうじゃなくて、ミリアよ!」
「ミルフィア?・・ど、どこに?」
慌ててがばっと起きて周囲を見渡すカルロス。
そして、ミルフィーと目が合い、カルロスはばつの悪そうな顔をする。
「悪かったわね、カルロス・・・ミルフィアを消しちゃって。」
「あ・・・そ、そんなことは・・・・」
つん!と横を向いたミルフィーに、カルロスは眠気も一気に覚める。
「ミ、ミルフィー・・・」

「きゃははっ!」
それを見て火龍の少女は楽しそうに笑った。
「決まりましたわ、黒い怪鳥様、あたしの名前は『ミリア』。いいかしら?」
「勿論!気に入っていただけ光栄です、お嬢さん。」

かくして無事名前の選出も終わり・・・そして、青空も終わった・・・。(お〜〜い!

「あ!でも、あたし、絶対また出るから!だから、忘れないでね♪この名前で呼ばれないで終わっちゃったし。それに、それにね・・・・」
火龍の少女は、ミルフィーと顔を合わせ口を揃えて言った。

『【青空に乾杯♪】は・・・不滅よっ!』 v(^-^)v

別れを惜しみつつ、彼らは館をあとにする。
そして、謎を残して館は消え、火龍の少女、ミリアも自分の国へと帰っていった。
後は何が起きるのか・・・それは誰も分からない。・・・作者さえもわからない・・・。

誰もいなくなった空間に、銀の鷹が飛んでいた。


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