「おいアヴィン、アヴィンってばっ!」
斡旋所の係りのお姉さんと仕事の話に夢中になっているアヴィンに、我慢しきれな
くなったマイルが肩を叩きながら少し強い口調で言った。
「なんだよ、マイル?」
せっかく意気投合してお姉さんと話してるのを邪魔され、ぶすっとした表情で振り
返ったアヴィン。
「いいのか、仕事ばかり引き受けてて・・・俺たちはお前の妹のアイメルに会う為
にウルト村を旅立ったんじゃなかったのか?」
少し心配気味に、そして諭すようにマイルは言った。
「そりゃーそうだけどさ。考えてみてくれよ、マイル。やっとアイメルに会えるん
だ・・それが・・着の身着のままじゃぁ・・・兄としてのプライドが・・・・」
「何がプライドだよ?長年ずっと会えなかった2人っきりの兄妹じゃないか、何に
もなくても喜んでくれるよ、きっと。」
「そりゃ、そうだと思うけど・・・でも・・これからアイメルと一緒に暮らすんだ。
生活力のない兄だと思われても・・・俺はアイメルに心配や苦労をさせたくないん
だ。だから、少しでも蓄えようと思って・・・こうして仕事を・・・」
「ディナーケン様の所へ行く事も忘れてか?」
「わ、忘れるわけないだろ?アイメルの居場所はディナーケン様しかご存じないの
だからな。と、とにかく・・少しでも金になる仕事を探してアイメルを喜ばそうと
・・・いっぱい土産を買っていってやりたいんだ。・・それからこれから一緒に暮
らすりっぱな家も用意してやりたいし・・・」
「ウルト村は田舎だけどとってもいいところだ。お前たち2人が暮らす家くらい村
人が用意してくれるさ。それに見晴らし小屋だって捨てたものじゃない。俺たちや
レミュラスじいさんの思い出だっていっぱい詰まってるし・・・・・」
「分かってるってそんなこと・・だけど俺はアイメルの為に何かしてやりたいんだ。
アイメルの喜ぶ顔が見たいんだ。」
くるっと再び向きを変えるとアヴィンは仕事の話に戻った。
そんなアヴィンを見てマイルはため息をつくとアヴィンに聞こえるようにつぶやいた。
「だからといって何もこんな遠くまで仕事探しに来なくても・・・近場から全部仕
事を片づけてまで・・まさかお前・・・斡旋所のお姉さんが目当てじゃ・・・?」
[
ここは、バロア・・・ディナーケン様のいる里から一番離れた町 ]
「ちくしょう・・・っちっくしょう・・・なんで死んでしまったんだ、マイル・・マイルぅ〜っ!!」
「お兄ちゃん・・・・」
アイメルと喜びの再会を果たしたのもつかの間、本当の兄弟のように育ってきた親
友のマイルの死・・思いもかけないできごとにアヴィンは全てのことにやる気を失
せていた。そんなアヴィンにアイメルもかける言葉が見つからない・・・。
「・・・・」
(なんでだ、マイル・・・最高の武器、最高の鎧を装備させてやったのに・・・そ
れに・・それに・・・あれほど修行して・・苦労してレベル上げしたのに・・それ
を・・それを・・・今更!!・・・・返せ、返せ〜っ・・・金と・・それから・・
それから・・お前のレベル上げにかけた時間を〜っ!)
[
実際、私はそのショックで2日間ゲームをストップしてしまいました。(笑 ]
マイルに続いて今度はアイメルの死・・・アヴィンは身も心もずたずただった。神
宝を探しに行く気になどなろうはずがない・・・
今日も、1人酒場で酔いつぶれるアヴィンの姿があった。
(いいのか、未成年!)
「白魔法・・・白魔法の使い手を仲間に入れなくては!・・・・ま、またレベル上
げしなくては・・・・・!!・・どうして・・どうしてルティスは白魔法使いじゃ
ないんだぁっ?・・ああ、かったるくてやってらんねぇーよーっ!!」
[やってくれましたねー、falcomさん・・。]
マイルはパーティーから外
せれないようになってるのに!!思いっきりフェイントをかけられた感じです。
くそっ!こうなったら、最初からアヴィンに白魔法を覚えさせ、マイルの魔法レ
ベルなんて無視して、アヴィンに修得させるぞっ!と思ったのですが、どうもや
る気が失せてしまって・・一時中断・・(笑
[アヴィン、アヴィンったら!」
「何だよ、ルティス?」
「神宝探しはどうなったのよ?」
「ああ、その事か?・・そんなの・・後に決まってるだろ?神宝は逃げやしないけ
ど、今やっとかないと斡旋所の仕事は逃げちまうんだ。儲けそこなうぞ!」
「アヴィン・・・あ、あんたって人は・・・・?」
「アヴィン、いい加減に神宝を探そうよぉ・・・斡旋所巡りばかりしてないでさぁ
・・・?」
「・・・悪い予感がするんだ。」
「悪い予感って?」
「ああ、悪い予感だ・・斡旋所の仕事でもこなさないと、どうもこの話はすぐ終わ
っちまいそうな気がして・・・しかたねーんだ、俺。」
[
事実、メインストーリーは短すぎると感じました。]
[途中、ひょっとしてもうゲームの終盤?もぉ?と思いながらプレイしてた。]
「あにき、あにき・・・」
「どうしたんだ、ラエル・・そんなに息を切らして?」
「えへへ・・実は・・・すっごい美人探しの依頼話を聞いてきたんだよ!」
「ホントか?」
「ホント、ホント!誘拐かもしれないんだ!助け出したら・・・ムフフフフ・・・
あにき、早く斡旋所へ行こうぜ!他の奴が請け負っちまうといけないからさ!」
「おーしっ!行こうぜ、ラエル!」
ガタッとイスをけるようにして立ち上がったアヴィンの目の前にルティスが立ちふ
さがっている。これ以上ないというほどの険しい顔で睨んで。
「アヴィン?」
とっさにルティスからラエルに視線を移すアヴィン。
「急ごうぜ、ラエル・・・人命救助は時間を争うんだ。」
「お、おう!」
駆け足で部屋から出ていく2人をルティスはじっと睨みつけていた。
「世界が破壊されるかどうかの瀬戸際だって言うのに、封印の地まで行って戻って
来ちゃって斡旋所通いなんて・・・オクトゥム神が復活しちゃったらそれどころじ
ゃないでしょお?」
「アヴィ〜ン・・・あんなに偉そうな事言ってて、1つ仕事を引き受けそこなった
じゃないの?!」
「・・・しっかりチェック入れてんだな、ルティス?あんまり細かい事いう奴は嫁
の貰い手が少ないんだぞ。」
「へ〜んだ!そんな事言うんなら、もう1つとっておきの情報があるんだけど、教
えてやんないわよ!」
「な、何だよ、とっておきのって?」
「じゃ、前言撤回してくれる?」
「前言って?」
「・・・鈍すぎない、アヴィン?・・・あんまり細かい事いう奴は、の後よっ!」
「・・あ、ああ・・・」
「ったくっ!もう、いいわよっ!・・・つまり、その引き受け損なった仕事の為に
Dr.バンドルシリーズの完結を見てないって事よ。つまり、本当は、仕事を2つ
逃したって事になるの!」
「な・・なんだって?・・じゃ、『ロード』の呪文で、タイムワープしなくては!」
「ざ〜んねんでしたっ!神宝探しに行くのにキト村から行ったでしょ?そのせいか
知らないけど神宝が3つ揃ってからその引き受け損なった依頼がセータに出された
のよ。キト村からフィンディンへ行く前にセータに立ち寄ったって言うのに、その
時はまだ依頼はなかったもんね。それで、結局終盤にならないと出ないと思って、
3つ揃った時、セータに寄らず墓場に行っちゃったでしょ?その間のセーブはない
のよ。う〜んと戻るのを覚悟してするならいいけどね。」
「ぐっ・・・・・あ、あの時、確かにセータに寄ろうかと思ったのに・・・つい、
墓場に行ってしまったんだ!・・他の所に全く仕事がなかったから・・油断して・
・・・あああああ!」
「あんたが別れるってんなら仕方ないさね、アヴィン。結局あたしはお金で雇われ
ただけなんだから、いいさ。ま、また、あたしの力が入り用になった時はいつでも
言いな。力になってやるから。いらない事かもしれないけど、武器や防具の装備は
しっかりしておくんだよ。じゃ。」
「ああ、またよろしく、ルキアス。」
そう言ってルキアスを見送るアヴィンは、後ろに彼女の装備を握り締めていた。
[ 気づけよ、ルキアス!(それに他の冒険者も!)]
気をつけよう パーティーから 抜けるとき
身ぐるみ剥がす 主人公(プレーヤー)・・
幻影の 術をかけて さようなら
あなたの装備 みなまぼろしさ
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