* ダイナソア・ピンポイントストーリー *
--プレイ雑記風ショートショート・・・--

 ザムハンの宿の夜は更けて・・・ 
- ヒルダからアッシュへ『罠の技』 -
  「アッシュ、余興でカギ開けでも教えてやろうか?あんたもヘマしそうな顔してるからね。取っ捕まった時、役に立つよ。」
食事が終わった後、何げにヒルダが口にした。
半分冗談とも、そうとも思えないような笑いをみせながら。
が、いつものことで、アッシュはにこりともしない。少し考えたような表情もあったかもしれない程度で、うなずくわけでもなく、そして、断るわけでもない。

「まあ、構わないけどさ。いざって時に、後悔しないことだね。」
男ならはっきり返事したらどうだい?食堂を出ていくアッシュの後ろ姿に、思わずそう言いたくなったヒルダだが、それはやめた。
そして、アッシュは返事もせず何も言わず、そのまま食堂を出ていった。


「なんだい、まったく・・・せっかく人が親切に・・・・・・といっても、必要ないと言えばそうなんだろうね。あのアッシュを捕まえようとする奴なんているわけないしねー。」
宿の裏庭。ヒルダは一人呟きながら、眠れないこともあって散歩をしていた。
コツン!と目にとまった小石を蹴ってみる。

「?」
その蹴飛ばした小石を目で追っていたヒルダは、その石が誰かの足下に当たったことに気づいて、その人影にそって視線を上へあげていった。
「アッシュ?」
見るとそこにはサンタクロースよろしく大きな袋を2つも3つもかついだアッシュがいた。

−ガラガラガラ−
何事?と思って見ているヒルダの前に、アッシュは、袋を1つずつ逆さまにして中身をその場に転がした。
「た、宝箱?え?こ、これって?」
3つの大袋から出た宝箱は、その場に山のようになっていた。慌てて駆け寄って箱を確認するヒルダ。
「これ・・・開いてないものばかりじゃないのさ?」
「ああ、罠の技修得には必要なんじゃないかと思ってな。」
「ア、アッシュ・・・あ、あんたって・・・・」
なんという律儀な、というか・・・バカ正直というか・・・・ヒルダは、アッシュの隠された一面を見たような気がした。
(結構思いこみが激しいんだ、アッシュって・・・・。技の継承とか伝授と言えばもっともらしく聞こえていいんだけどさ、結局は・・・カギの開け方の基本を教えるだけなんだけど・・・。)
が、せっかくわざわざ一人で出かけていって宝を手に入れてきてくれたのである。もちろん、それには、魔物と戦わなければ入手できないことは、ヒルダにだって重々分かっていることである。

「あ、ありがと。悪いね、わざわざ教材を用意してもらっちゃって。」
「いや、一石二鳥をねらったまでだ。いいものが入っていればちょうどいいしな。それに、練習するにも楽しみができるだろ?」
「あはっ♪、それじゃ一石三鳥だね?」
珍しくアッシュの口数も多かった。
今日は機嫌がいいんだろうか?と思いながら、ヒルダは笑顔をアッシュに返していた。

そして、楽しく(?)講習は始まった。
あわよくば、アッシュといいムードになろうと思い、言ってみた技の伝授だったが・・・目の前の宝箱の山の中身の方に、今やヒルダの関心は惹かれていた。

やはりヒルダにとって、宝物が何よりも代え難い恋人?





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