* ダイナソア・ピンポイントストーリー *
--プレイ雑記風ショートショート・・・--
● ザムハンの宿の夜は更けて・・・ ● - エリスからヒースへ『魔法』 - |
「ヒース、魔法を覚える気はありませんか?あなたの歌そのものが魔法に近いのです。そのままにしておくなんてもったいないわ。」 「ごめんなさい、エリスさん。僕は、ただ唄うのが好きなんです。それだけでいいんです。」 「そうですか。私こそ差し出がましいことを言いましたね。」 ザムハンの町に戻ったその夜、なかなか寝付かれなかったヒースは、宿の裏庭に出て、月を見ながら、小声で歌を唄っていた。その歌声に誘われエリスもまた庭へと出てきたのだが。 「あ・・・あの・・・」 が、ヒースに断られ、がっくりと肩を落として宿へ入ろうとするエリスの後ろ姿に、ヒースは思わず声をかけていた。 「僕にもできるでしょうか?」 小さな声で呟いたヒース言葉に弾かれたようにエリスはくるっと方向転換した。 「ええ♪もちろんよ!あなたならきっとできるわ、ヒース!」 「あ・・じ、じゃー、よろしくご指導お願いします。」 あまりにも寂しそうなエリスの後ろ姿に、思わずいってしまった言葉だったが、当然、今更撤回はきかない。ヒースは覚悟を決めた。 本当なら他のことを習うより、もっともっと自分の本職である歌を極めたい、それが本心だったのだが。 そしてその夜、基本を教えてもらったヒースは、翌日の戦闘でも魔法でがんばっていた。 「いいわよ、ヒース!やっぱりスジがいいわ。飲み込みも早いし。」 「は、はいっ!」 必死で魔法を唱えるヒースの手にリュートはなかった。 それはエリスがしっかり持っていた。 ともすると歌を唄いがちなヒース。そのヒースに歌ではなく、魔法を使わせる目的だった。 「いいわよ、ヒース!がんばってっ!それがクリアできたら、次の段階の魔法を教えてあげるから。」 「はいっ!」 エリスの訓練は、予想外にスパルタだった。 それだけ期待をかけていたのだろうが・・・相手により、エリス自信が大丈夫だと判断すれば、アッシュやオルリック、ワッツの攻撃も止めてしまい、傍で見守りながらヒースにのみ攻撃させるという徹底さ。 そのおかげか、短時間にヒースの使える術は、またたくまに増えていった。 きがつけば、いつのまにか、歌の曲数より多い。 その上、攻撃魔法は効果絶大である。 (僕っていったい・・・・) 今まで守られてばかりでみそっかすだと思っていた戦闘も、十分一役買っているといえるようになっていた。が・・・やはり吟遊詩人としての力で、役立ちたい、ヒースの思いはつのっていった。 が、エリスのスパルタ教育は続く。魔術にばかり長けていく。 |