* ダイナソア・ピンポイントストーリー *
--プレイ雑記風ショートショート・・・--

 ザムハンの宿の夜は更けて・・・ 
- ランディーからヒースへ『魔法』 -
 「ヒース、お前も魔法を覚えてみちゃどうだ?お前みたいな奴は頭を使わねえとな。特別に俺様が教えてやるぜ。どうせ蜘蛛が出りゃまた歌えやしねえんだからな。」

宿で夕食を取っていた時、ランディが突然ヒースに言った。
「ぼ、僕は、歌うのが好きだから・・・魔法なんて・・・いいですよ・・・。」
ランディーを怒らせはしないかと、正直になのだが、そう答えたヒースの声は、今にも消え入りそうだった。。

「何だよ?俺様の好意を無にするってのか?お前も案外と度胸がいいじゃないか?」
「度胸がいいなんてことじゃなくって・・ぼ、僕は・・ただ・・・」

「遠慮してるんだよ、ヒースは。」
ヒルダの助け船が入る。
「それに、どうしたってんだい、いったい?お荷物になるガキなんて嫌いだっていってたじゃないか?だいたい普段からあんたはヒースを無視してるだろ。急に親切な事言われたって、はいそうですかってなわけにはいかないじゃないか?」
「なんだよ、オレが恐いとでもいうのか?」
「だって、そうじゃないかい?」
「オレはなー・・ヒースの為を思ってだな・・」
「自分がカッコつけたいだけだろ?技の伝授なんて言ってさ。師匠と弟子。なにかにつけてこき使おうって算段なんじゃないのかい?」
「オ、オレがいつそんなケチくさい奴にみえるってんだ?」
「焦るとこ見ると、図星だった・・・かい?」


「ま、待ってください。2人とも!」
いがみ合いがエスカレートしてきた2人の間に、ヒースが慌てて割り込む。
「ぼ、僕の事で喧嘩しないでください、ランディーさんも、ヒルダさんも。」
「喧嘩じゃないさ。ホントの事を言ったまでさ。」
「ヒルダさんっ!」
珍しく少しキツイ視線でヒルダを見たあと、ヒースはランディーの方を向く。
「ごめんなさい、ランディーさん。イヤとかそういうんじゃないんです。僕・・僕・・・自分の歌もまだ満足に唄えないのに・・・教えてもらっても覚えられるかどうか自信がなくて・・・・ぼ、僕・・・・」
ペコリと頭を下げたあと、ヒースは小声で言ったヒースの肩をランディーは、ぽん!と叩いた。
「大丈夫さ、ヒース。お前はちょっと控えめすぎなんだ。オレがばっちり教えてやるから。な?!」
「あ、は、はい・・・じ、じゃー・・よろしくお願いします。」
「まかせとけって!」



そして、ヒースの訓練が始まった。
が・・・ランディーの目論見(?)は、はかなくも砕かれた。しかも翌日早々。

「そうそう!ヒース、調子いいじゃないか?」
「あ、はい。ヒルダさんのおかげです。」
師匠と弟子は変わっていた。というか、ヒルダとヒースは師匠関係ではないのだが。
つまり、魔法の術師としてのきっかけはランディーの教えでつかんだ。
が、その後は、まるっきりランディーの助言など必要としなかったのである。
生来感のいいヒース。吟遊詩人としての歌も楽譜を見て覚えたものではない。耳で聞いて覚えるのである。という理由から、それまで一緒に闘ってきた経験で、ランディーの唱える呪文はすでに全部ヒースの記憶にしっかり入っていたのである。

きっかけさえつかめれば、あとは、その術を発動させるレベルの精神力を養う訓練(経験値)だけのこと。必要なのは、実践だけだった。
そして、その為にヒースに付き合ったのがヒルダである。

「ちっ・・・」
アッシュがヒルダに教えたときの状況とは、まるっきり違っていた。
ヒースで調子がよければ、あわよくば、次はヒルダに、と思っていたランディーの計画は、事の見事に砕け散ったのである。
 







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