* ダイナソア・ピンポイントストーリー *
--プレイ雑記風ショートショート・・・--

 ザムハンの宿の夜は更けて・・・ 
- アッシュからヒースへ『剣の技』 -
 「アッシュさん、お願いがあるんです。僕に剣の技を教えてくれませんか?僕・・・少しでも強くなりたいんです。みんなの足手まといにならないように。」
宿、夕食をすませた後、アッシュ達はいつものようにそのテーブルを囲んだままくつろいでいた。
ランディーは小声でヒルダをくどき中。ヒルダはランディーのその言葉に容赦なくつっこみを入れている。そして、ルオンは何やら一人瞑想中。

窓から見える月をじっと見つめていたアッシュに、ヒースが緊張した面もちと、そしてその緊張からか少し震える声で言った。止めていたものを一気に吐き出したように。

「足手まといにならないように、は、いいが・・・剣が使えるのか?」
「あ・・・・・」
吟遊詩人のヒース。まだ年若い少年ということもあり、そして、その身体はとてもではないが戦士とは言い難かった。
「で、でも、僕、頑張りますから!」
じっとヒースを見てそれ以上何も言わないアッシュ。
「お願いします、アッシュさん。や、やってみなくちゃわからないでしょう?!」
そのアッシュに、多少たじろぎながらもヒースは叫んだ。
「言うじゃないか、ヒース。」
ヒルダが声をかけた。
「アッシュ、ここまで言ってんだ。どうだい?教えてやっちゃ?使い物になるかならないかは、それからでもいいんじゃないか?教えたって損はないだろ?」
全員の注目がアッシュに注がれていた。
「人には向き不向きというものがある。オレは剣の技など必要ないと思うが?」
「・・・そうですか・・・そうですよね。ごめんなさい。疲れてるのに・・・。」
がっくりと項垂れるヒースの顔をヒルダがのぞき込む。
「バカだね、ここまできて引き下がっちゃだめだよ。あんたの弱いところが出てるよ。こういうところを治そうと思ったんじゃないのかい?」
「あ・・・・」
ヒルダの言葉で、ヒースは今一度アッシュを見た。
「お願いです、アッシュさん!」
「魔法のようには修得できないぞ?」
「はい!がんばりますっ!」

覚悟があるのなら、外に出ろと言うように、席を立ち戸口に向かったアッシュの後をおいかけようとしたヒースの肩にランディーの手がかかった。
「な、なんでしょう?」
「心意気は認めるが・・・」
不機嫌そうなランディーの表情に、ヒースはどうしてだろう?と思う。
「わかんねーか?・・・ったくお前は・・・いいか?足を引っ張らないように剣を教えてくれってことはだなー・・」
「こと・・は?」
途中まで行ってもランディーが何を言いたいか見当がついてなさそうなヒースに、ランディーはため息をつく。
「いいか?じゃー・・オレが教えた魔法は、そ〜〜んなに役立たずだってことか?」
「あ・・・・」
さ〜っとヒースの顔から血の気がひいた。
「い、いえ、決してそんな意味じゃ・・・」
慌てて否定するが、今更ランディーの耳に入らない。
「魔法が役立たずだってことは、ぼうやの努力が足らねーんだぞ?!」
「だから、僕、役立たずだなんて言ってないです、ランディーさん・・・・」
「一緒なんだよー!ったく・・・教わっておいてよくもまー言えたもんだな?」
「およしよ、ランディー。」
「だってだな、ヒルダ・・」
「まー、まー、そんな細かいところにいちいち目くじらお立てじゃないよ。大人げないったら。」
「大人げないかもしれんがなー。オレ様の魔法がバカにされたとあっちゃ、怒らないわけにはいかねーんだよ!」
「だから、ヒースはそうは思ってないっていってるだろ?」
「それはこういう訳なのでしょう。」
不意に入ったルオンの言葉に、ランディーたちの注意は彼に注がれる。珍しいこともあったものである。
「つまり、魔法使い、吟遊詩人はあなたのように精神力豊かではないんですよ。」
「それが?」
それは、それまでの戦闘で分かっていた。ヒースの息切れは結構早い。(笑)
「ですから、その時に私たちに迷惑がかからないように、せめて物理攻撃で身を守ろうということなのでしょう。」
「あっ、な、なるほど。」
「なかなか賢明ではありませんか、まだ年若いのに。」
「そ、そうだな・・・そういうことか・・・。」
ようやくヒースを見つめるランディーの目から怒りが消えた。
「ご、ごめんなさい・・僕上手く説明できなくて・・」
ぺこりと下げたヒースの頭をランディーはぐしゃぐしゃとかき回した。
「まー、なんだな、ぼうやはぼうやで必死なんだな。うんうん。」
「ったく・・・ランディーの単細胞。」
ルオンに上手に乗せられたとヒルダは呆れたように呟いていた。が、まさかルオンが助け船を出すとは思ってもいかなった。その超意外性に思わずルオンを見つめていた。
「しかし、誤解せぬことですな。」
「ん?」
「魔法使い、あなたの精神力は確かに認めますが、無駄に使いすぎてるところがあります。私ならもっと有効的に使うのですが。」
「んにを?オレのどこが無駄に使ってるって言うんだよ?あんたこそいつも出し惜しみしてんだろ?」
「おや・・・同じ精神力を要する術なら、軽傷の時にかけてまた傷を受け、同じ事を繰り返すより、快復させれるぎりぎりのラインまで待っていてからかけた方が、術の威力も、またありがたさもわかるというもの。何よりも、精神力の浪費がなくなるというものではありませんか?」
つまり、軽傷のときにかければ、また傷を負う。そしてまた術をかけるということは、2回なら2回分の精神力が必要となる。が、仮に1回目にはかけず、2回目の傷を負ったあとなら、その消耗は1回分ですむということなのである。もっとも、ルオンの意味するのは、2回3回などというのは、まだまだ軽傷なのであり得ない。瀕死とまでは言わないが・・・1回の呪文で完全回復させられる限界の怪我を負うまで術はかけないということなのである。

−ダン!−
怒りに燃えたランディーの拳が、テーブルを勢いよく叩いた。
「回復魔法とオレ様の攻撃魔法を一緒にするんじゃねーよっ!」
「ランディー、気にしちゃだめだろ?いいから・・こっちで呑もうよ。」
「お?・・珍しいなヒルダ。」
ヒルダの誘いで怒りも一気にどこへやら(笑)、カウンターに向かうランディーの横から、ヒルダはヒースに、早く行けと手を振って合図をしていた。
「ありがとうございました。」
頭を下げると、ヒースは庭へと急いで行った。







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