* ダイナソア・ピンポイントストーリー *
--プレイ雑記風ショートショート・・・--

 ザムハンの宿の夜は更けて・・・ 
- アッシュからヒルダへ『剣の技』 -
 その夜、宿の裏庭で一人黙って月を見上げていたアッシュに、ヒルダは出会ったときからずっと思っていたことを、ようやく勇気を出して伝えた。

「アッシュ・・頼みがあるんだけど・・・。あ、あのさ・・・・あたしに、剣の手ほどきをしてくれないかい?独学じゃ、うまくなりゃしないからね。」

月からヒルダに視線を移したアッシュは、黙ったまま。

「女には教えられないってこと?・・ふん!分かったよ。」

自分でも意外と感じたが、そのままアッシュの視線を受けていることに耐えらなくなったヒルダは、ぶっきらぼうな口調で言うとくるっと向きを変えようとした。

「な、なんだい?」
が、向きを変えかかったヒルダの目の前に、小枝が1本突き出されていた。
「な、なんだい?教えてくれるってのかい?」

「休養も必要だ。あまり長くやると明日に差し障りが出る。基本動作だけでいいならな。」
「あ、ありがとう、アッシュ。」
心なしかヒルダには、いつも仏頂面をしているアッシュのその顔がやさしく見えた。
その視線は確かにやさしさを帯びていたかもしれなかった。


そして、2人は真剣に練習に取り組んでいった。


その真剣に剣技の基本動作をアッシュに手取り足取り教えてもらているそのヒルダを、木陰からじっと見つめている人物が一人。

「ちっ・・・なんでアッシュの旦那なんだ?・・・・オレに言やー、魔法だって教えてやるのに・・・。」
言うまでもなく、その人物はランディーである。が、乱暴に吐いた言葉とは裏腹に心は心配で一杯だった。
基本姿勢を教えているだけあって、2人の身体と身体は時に密着する。いつ2人がその練習から離れて男女の触れあいに発展していきはしないか、と、いてもたってもいられないというのが、ランディーの心境だった。


「よし、このくらいにしておこう。型の矯正はほぼできた。後は今教えた事に注意を払いながら実践だな。」
「ありがとう、アッシュ。悪かったね、疲れてるだろうに。」
「いや、それはお互い様だ。それに、オレよりヒルダの方がずっと疲れてるだろう。ゆっくり休むんだな。明日は少し出発を遅らせよう。」
「大丈夫だよ、アッシュ。あたしを誰だと思ってんだい?盗賊中の盗賊だよ?徹夜なんて日常茶飯事だし、今から休めば十分疲れも取れるからさ。」
「はは・・そうだな。」

(おお〜〜い・・そこでなごんでんじゃねーぞ〜〜!)
ひょっとして今から甘いムードに発展か?とランディーの心臓はドキドキ・・・が、そんなこともなく、アッシュはさっさと自分の部屋へと戻っていった。

「ったく・・朴念仁!」
その後ろ姿にあっかんべーをしているヒルダに、声をかけようとも思ったランディーは、結局かけそびれてしまった。



翌日、アーケディア城の探索を再開した一行。剣の技を教えてもらった直後でもある。一戦闘終了すると、その戦闘について、あれこれアッシュから指導を受けているヒルダの姿がやけに目に焼き付き、ランディーは、面白くなかった。
休憩中珍しくアッシュと離れたヒルダにそっと声をかけた。
「いいんですか、魔法使い?レディーを死神になど預けてしまって?」
「う、うるせー!お前に言われる覚えはねーよ!」
面白そうに、が、いつもの無表情でランディーの横を通りざま呟いていったルオンに敏感に反応し、ランディーは言い返していた。
『魔法?・・・そんなもんいらないね。あたしはこの腕と、そして、今は剣に夢中なのさ!』
そっとヒルダに魔法を教えてやろうかと言ったときにかえってきた言葉をランディーは思い出していた。
(あれでも遠慮したつもりか?剣じゃなくアッシュの旦那だってことは見え見えじゃねーか?・・しかし・・・なんで旦那なんだあ?オレの方がずっといい男だぜ?あんな仏頂面で気の利かねー奴より、ずっと優しくしてやるのにな〜。)


不機嫌極まりないランディーだったが、それも城の大扉を開くまでだった。
「アーケディア城へようこそ♪」
微笑む美女に取り囲まれ、ランディーの不機嫌さは一気にふっとんだ。


(あほランディー・・まったく美女とみりゃ誰でもいいのかね?・・・だいたいこういうところで美女の歓迎なんて怪しさ500%じゃないのさ?)

ますますヒルダのランディーへの評価が下がり、色気を振りまく美女たちにもそれまでと変わらず警戒心を解かなかったアッシュの株は、また一層上がったということは、言うまでもない。


(ま、いいさね。今は師弟関係で。これでも、単なる仲間から1歩ステップアップといえるだろ?)


さて、この先の展開はどうなる?







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