--紫檀さんがお絵描き掲示板に描いてくださったものです。ありがとうございました。--

● ラブハンター・ヒルダ ●

 「よ〜〜〜し、今度こそ間違いなしよ?」
キリキリキリと弓を引き絞るヒルダの表情は、緊張で少し引きつっていた。
が、それはいつもの魔物をねらっての時の表情とはどこか少し違っているようでもあった。何かを期待しているような軽い笑みのようなものがそこにはあった。

「まだまだ・・・・まだ数匹いるわ・・・・でも、剣技を使えば一瞬で倒しちゃうから・・・タイミングを逃さないようにしないと・・・・。」
ヒルダの視線の先、数メートル離れたそこには、アッシュの姿があった。勿論襲いかかってくる魔物との戦闘中である。
近くには他の仲間の姿も見える。一発必中でなければならない。

−キリリリリ−
引き絞る音だけがヒルダの耳に入る。

「今だっ!」
周りの魔物を全部倒したアッシュの周囲には、ランディーたち邪魔者もいない。ヒルダは矢を放つ。
「アッシュ!」
−ストッ!−
弓の腕は仲間一のヒルダ。狙いは確実。矢はヒルダに呼ばれちょうど振り返ったアッシュの心臓に当たった。
(やった!)
「アッシュ!!」
嬉しそうにアッシュに駆け寄っていくヒルダ。
そう、別にヒルダはアッシュを殺そうとして矢を射ったのではない。
その金の矢は城の奥深くに眠っていた宝箱に入っていたもの。矢が当たった瞬間、目にした者に恋をするという不思議な矢。

(首尾は上々。仕上げをご覧じろ。・・・邪魔者はいないし、これで堅物のアッシュもあたしの・・・。)

「ア、アッシュ・・・?」
確かに邪魔者はいなかった。そして、矢が当たったと同時に、確かにアッシュはヒルダの方を振り向いた。

が・・・・

「ア、アッシュ?」
ちらっとヒルダを見たのみで、アッシュは再び視線を落とす。
そう、手にしていた聖剣テスタロッサに。

「美しい・・・なぜ今まで気づかなかったのだろう。まるで心が洗われるような清らかな光。刃こぼれ一つしない鋭利な刃先・・・」
「ア・・・アッシュぅ〜〜〜?」
実は、ヒルダの声に振り返ったことは振り返ったのだが、その時一瞬落とした視線の先に、手にしていた剣があったのである。ちょうど戦闘が終わった時でもあった。いつものくせで無意識に剣を見てしまったのである。
「オレは、どこまでもお前と行こう。たとえ世界を血に染めてでも。お前が獲物を欲するかぎり。」
「ち、ちょっと・・アッシュ?」

アッシュは走る。群がってくる強敵を蹴散らし、今日もアーケディア城の中を!!
・・・テスタロッサが放つ白き光に包まれて。


「・・・ちょっと、な、なによ、これ〜〜?タイトルと結末とぜんぜん違うじゃないのっ?!責任者、出てきなさいっ!思いっきり遊んでるでしょ?」

−し〜〜〜ん・・・−
「い、いいわ、こうなったら、あの矢の効力を消すアイテムを見つけてやるんだから!」
ヒルダも駆ける。城の中を勢いよく。アッシュが敵をなぎ倒している間に、盗賊の感と腕によりをかけてしらみ潰しに探しまくる。誰よりも先に!


今日も城内のどこかはその賑やかさに包まれている。
アーケディア城の平和は・・・ザムハンの平和は・・・いつ?




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