***チェイサー・ドーラの呟き***
[今回完璧にメイキングしておりますので、ゲームではありえないことがちらほら・・。
でも、城の地下の闇屋のおじさんが魔法耐性があるということはホントです。
そこで魔法力と魔法耐性をMAXまであげた私です。(笑 /^^;]
   

  

●裏追跡簿[9] 忍び寄る怪しげな影

 「き、きゃああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
時間差で落ちていく床をなんとかクリアしたドーラを待っていたものは、ドーラと大の相性の良さ・・もとい!大嫌いな大岩のトラップ!
しかも今回は同じ通路を2つがぶつかり合って転がっているのである。もちろん、その通路の壁に避難箇所と言えるくぼみがあるのだが・・・大岩がぶつかりあう場所も一定とは言い難かった。故に、その動きも一定ではない。しかも通路が空いている時間はほんのわずか。ぶつかった大岩はすぐ戻ってくる。
「で、でも・・・リズムがあるはずよ!」
何度目かの挑戦に失敗して、悲鳴と共になんとか角を曲がり(勿論後退である)、潰されるのを免れたドーラは、肩で息をしながら考えていた。

−ゴロン、ゴロン、ゴロン・・・ガツン!・・・ゴロンゴロン・・・・−
−ゴロン、ゴロン、・・・ガツン!・・・ゴロンゴロンゴロン・・・・−
「わかったわっ!やっぱりリズムがあるのよ!」
先を急ぐことをやめ、じっと大岩の観察をしていたドーラは大声をあげて叫ぶ。
「何回かに1回だけ、奥の方でぶつかるときがあるわ。進むとしたらその時よ!」
もう1つの大岩とぶつかって帰ってくる時間を計っていたドーラは、そのことに気づいて勝利宣言の笑みを顔に浮かべる。
「ふん!このくらいあたしにかかったらわけないわよ!」
そして、タイミングを計り、決行!と思ったが・・なんとなく尻込みしてしまった。
「ふ〜・・・・」
額に浮かんだ汗を手の甲で拭いながらため息をついたドーラの脳裏に何かが写る。
「・・・・な、なによ、・・・・・・そ〜〜んなにあたしが苦労してるのが嬉しいの?・・じゃないわね・・バカにしてんでしょっ?!」
脳裏に浮かんだ少しにやりとしたように見えたその顔に、思わずドーラは叫ぶ。心の中叫んだつもりだが、その怒りが大きかったのかつい声となって出てしまったほど。
「そうよね・・・あんたはいつもあたしがトラップを作動してあげてから、悠々と先に行くんだったわね。」
アレスに近づこうとするたびに、なぜか落とし穴か大岩のトラップが作動し(しかもアレスの1歩手前くらいで)その度にドーラだけが被害を被るのである。
そんなことを思い出せば思い出すほどにますます怒りが燃え立ってくる。

そう、脳裏に浮かんだその顔は、だれあろう、寝ていても忘れられないほど愛しい・・もといっ!にっくき仇、そして、最高の賞金首であるアレスなのである。
「みてなさい、アレス!あたしの実力をっ!」
見れるわけないのに、ドーラはまるで目の前にいるように見えるアレスの顔に怒鳴る。
(ち、ちょっと休憩しただけなんだから・・・。だ、だって、1つ大岩クリアしたら続けてもう1つクリアしないといけないし・・・・)
そして、必要ないのに、そんな言い訳を心の中で呟きながら、ドーラは再びタイミングを計った。
「今だっ!」
(え?)
・・・・・・・・・・なぜか自分が言ったつもりのその時の掛け声にアレスの声が重なったような気がし、ドーラの足は止まる。
「な、なによっ!遠隔操作でもしてるつもり?あ、あんたの指図なんて受けないわよっ!」
ぶんぶん!と勢い良く首を横にふり、ドーラはアレスの残像をうち消し、自分を落ち着けると、今一度タイミングを計りはじめた。



そして・・・・・

「な、なによ、これ?今度はなんなのよーーー?!アレ〜〜ス!なんとかしなさいよーーー!」
大岩のトラップの連続をクリアした先には、通路いっぱいの体躯を持つ鎧兵士がドーラを待ちかまえていた。もちろん、普通の人間ではなくではなくモンスターなのである。
「攻撃が効かないなんて・・・あ、あたしの火炎も・・・氷の魔法も?」
もちろん杖による攻撃など効くわけはない。ただでさえがっしりとした体躯なのに、その上分厚い鎧で全身を固めている。
壁にかかっていたプレート。そこにあった注意書きによると彼らは攻撃は全く受け付けない。通路を通過するには、壁にあるスイッチを押して特殊な冷気を放出して凍らせるしかないのだと判断できた。
「なぜ、氷の魔法じゃだめなのよ?」

が、目の前の鎧兵士をタイミングよくその噴射で凍らせても、自分が進む為には、噴射を止めなくてはならなかった。噴射を止めると数秒でその状態は解けてしまう。
スイッチオンで凍らせ、スイッチオフして、鎧兵士を飛び越え、また次のスイッチで動き始めた兵士を凍らせ、しかも前方から来る別の兵士も、タイミング良くスイッチオンして凍らせなくてはならない。
狭く短い通路でその凍らせるタイミングは非情に難しいものがあった。しかも兵士はあちこちにいる。凍らせるだけなら簡単だが、冷気を放出したままで兵士に近づけば、いや、その向こうに行こうとすれば、ドーラ自身も凍ってしまう。

「空を飛ぶとまで言わないわ・・・なぜ、宙に浮く魔術がないよぉ?・・・・」
ぺたん、と通路にしゃがみこんでしまったドーラの目の前、1歩開けたそこに勢い良く過壁から噴射される冷気と、凍った鎧兵士がいた。
そう、氷の彫像となった兵士の身体は完全に通路を塞いでしまっている。空いているのは上だけである。
飛び越えるのに十分天井は高かった。が、兵士の身長は2mはあった。高跳びの選手でさえ助走は必要としているのである。助走もなし、そして・・・・そんな跳躍力はどう考えてもあるはずはなかった。ドーラでなくとも。
「どうしたらいいのぉ?また戻れっていうの?あのゴロゴロ岩のトラップを?」
(ゲームではあるところに岩のトラップを止めるスイッチがあります。)
それでなくても、一旦進んで来た道を戻るのはドーラには許せなかった。
「アレス・・・・こうなったのもあんたのせいよっ!覚えてらっしゃい!今度あったらぎっちょんぎっちょんのめっためたにしてやるからっ!」

怒りに燃えた目でドーラは目の前の氷の彫像を睨んでいた。
もちろん、そこにはアレスの顔が重なって見えていることは確かである。


「なんとも哀れな・・・・・己がかごの中の鳥とも知らず・・・」
城の別室。その様子を水晶球に映し出し、異様な気を漂わせた男がにたりと笑った。
「放っておいていいのか?一応だが、脱出不可能な牢を破ったのだぞ?」
「ふっふっふ・・・あのような者、気を留める必要はないですぞ?」
「しかし・・・」
「まー、いいではありませんか。あの男が来るまで、たっぷりと遊ばせては?後は、万事私にお任せ下さい。陛下は一足先に地下の遺跡へ。」
「・・・うむ。頼んだぞ、ソウルマスター。」

薄暗いその部屋に一人残ったその男は、にやりと不気味な笑みをこぼしながら、水晶球に映っているドーラ、目の前にいないアレスに向かってその向けどころのない怒りを放っている彼女を、じっと見つめていた。


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