Brandish4ストーリー・ガラハッド謎の探求に神の塔を行く!

◆■第七話・水域は肉食生物の宝庫?■◆
  
    
      
    

 「しぇ〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・がぼがぼがぼ・・・・・・・」
水流にただひたすら流されているガラハッド。
どこまで流されるのか・・・自分の息がいつまで持つのか・・・・・最初こそは驚き、水も飲んだが、そのうち流されながらも冷静さを取り戻したガラハッドは、ぐっと息を堪え、水流からの脱出のチャンスを見極めようとする。
だが、そう簡単にその流れから脱出することは不可能に見えた。

−ドスン!−
「痛っ!」
と、思いっきり後頭部を打ち付けはしたが、運良く、ガラハッドは藻に覆われた箱のようなものにぶつかり止まった。
(なんですかな、これは・・・・?岩・・・じゃーないですよね?)
ぶつけた頭を撫でつつ、藻を取りのけて調べ始めたガラハッドは、ふと人の気配を感じて前方を見る。
(おお、ディーくんじゃーありませんか?ディーくんもここまで流されて来たんですか?)
水中の中である。口がきけないので目でそう話しかける。
(ああ。おっさん、それ、宝箱とオレは見たんだが、開けてみてくれよ)
(へ?宝箱ですって?・・・し、小生が・・開けていいんですか?早い者勝ちですからね、小生が開けて良い物だったら、もらってしまいますよ?)
(いいから開けろって!絶対何かここで役に立つモンが入ってるような気がすんだ。)
(それなら尚更でしょう?ディーさんが開けなくていいですか?)
(ごちゃごちゃうるせーな。開けろって言ったら開けりゃいいんだ!箱に目を付けたのは、向こうから流れてきたときだから、おっさんよりオレの方が早いが、手にかけたのはおっさんの方が早いからな。)
(そうですか・・そうまでおっしゃるなら、遠慮なく・・・)

−パカッ!・・カチリ・・・−
(え?パカッ!はいいですが、その後のカチリって?)
(あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
どうやら宝箱に流れを変えるスイッチが仕掛けられていたらしい。ガラハッドは勢いよく今まで流されてきた方向と違った方向へと流されて行った。
(へへん♪やっぱりな。オレの罠スキル、第六感ってやつで感じた通りだ。さて、流れも変わったことだし、これで、今まで行けなかった水域へ行けるな♪)
ディーはにんまりすると、中にあったアイテムをちゃっかり手に取り、ガラハッドが流されていった水流に足を取られないよう、泳いで行った。


(あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・ど、どこまで流されりゃいいんですかあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?も、もうダメです・・・い、息が・・息が・・・・続きませんよ・・・・・ごぼっ!)

「先生、大丈夫ですか?ガラハッド先生?」
(は?)
頭に響いてきた声に、はっとしたガラハッドは、目の前に可憐な人魚を認めて驚く。
(は?・・あ、あの・・・・ひょっとしたら・・・・ク、クレール・・・さん?巫女さんの?)
その顔に見覚えがあったガラハッドは目で聞く。
こくんと頷き、クレールは手にしていた銀色の首飾りをガラハッドの首に書ける。
(ほっ?・・・おお?・・・)
「おおおっ!い、息が・・息ができます!しゃべれますよ!!」
思わずガラハッドは大声を上げた。
「向こうの水域にあった魔法陣から飛んだところで見つけたのです。あたしは、この姿になれば大丈夫ですから。」
「大丈夫ですからって・・・ク、クレールさんはエルフじゃなかったんですか?」
思わず頭の先から足・・ではなく、しっぽの先まで視線を流すガラハッド。
「あたしも分からないんです。水の中に入ったら、身体がかーっと熱くなって・・気が付いたら人魚の姿になってたんです。」
「そ・・そうでしたか・・い、いや・・し、しかし・・・・美しい・・・」
「いやだわ、先生ったら。そんなに見られては・・・恥ずかしいわ。」
「あ、こ、こりゃ失礼・・・」
がははははっ!とごまかし笑いをし、ガラハッドは頭をかいた。
「で?クレールさんは、次の層への出口と言いましょうか、通路は分かったのですかな?」
「それが・・・・出口らしき開かない扉は見つけたのですが、そのスイッチを探してあちこち調べているところなんです。水流に遮られていて、なかなか思う方向へいけなくて・・」
「そうですか・・・では、小生もスイッチ探しするとしましょうかな?」
「ええ、そうしていただくと助かりますわ。一度スイッチを押せば、もう戻らないようになってるらしいから、反対に押すこともないと思います。」
「それは好都合。クレールさんはどちらに?私は別方向を探しましょう。」

首飾りのおかげで水中での息も可能になったガラハッドは、クレールとそこで別れ、次の層への扉を開くスイッチを探して泳いでいった。


そして・・・
「しぇ〜〜〜・・・き、巨大タガメですよーーーー!!し、小生などおいしくないですよー!筋肉ばかりだから、肉も固いし・・・・っと・・・こ、こっちからは、軍隊魚の団体さんご一行??!!」
タガメ・・それは、水中生物の一種である。カマの役目を果たしている前足で小さな水中生物を狩って食す肉食種である。それが、巨体のガラハッドと負けないくらいの大きさなのである。
そして、軍隊魚というのは、大きさは、金魚くらいの小さいものだが、集団で行動するそれは、まさに、ピラニアなのである。その鋭い歯で、集団で獲物に襲いかかり肉をえぐり取っていく。どっちもどっち・・・出会いたくない水中モンスターである。
加えてもう一種。見定めた獲物に一直線に襲いかかり串刺しにしようとする、呪われた剣「カースオブソード」の水中版とも言えるシャープなラインの魚もいた。まさに太刀魚。まともに受ければ、胴体に穴が開くこと間違いなし!
泳いでいては、ガラハッド得意の拳法技も繰り出すことができない。

「ひぇ〜〜〜・・・・・・・」
−ビシッ!!−
「あっ!ディーさん!」
危うくタガメのお化けのカマで首を取られそうだったガラハッドは、ディーのムチ攻撃で助かる。
「何やってんだよ、おっさん?これくらいあんたのその体格なら後ろから羽交い締めにして砕いてしまえばいいだろ?」
「あっ!そ、そうでした!!それがありましたな?」
ぽん!と柏手を打って、頷くガラハッドを、やはりどこかで水中で息が可能になる首飾りを見つけたディーは、少し小馬鹿にしたように口の端で笑う。
「で、ディーさん、次の層へのドアのスイッチは見つかりましたかな?」
「あと一つってとこかな?だけど、おっさん、他人に頼ってばかりいねーで、おっさんも探したらどうだ?」
「あはは・・こ、これでも探してるつもりなんですけどね・・・ところで、ディーさん、後一つで開くという開かずのドアは、一体どっちの方向にあるのでしょうか?いえね、クレールさんと協力してスイッチを探すことになったのですが・・肝心のドアの場所を聞くのを忘れてしまいまして・・・・・・?あ、あれ?・・・ディーさん?」
頭をかきつつガラハッドが弁解しているうちに、ディーはすうっと泳いで行ってしまった。

「ちょっと待ってください、ディーさ〜〜〜〜ん!・・って・・・ひぇ〜〜・・・・・」
そして、慌ててディーを追いかけようとしたガラハッドは、不注意にも水流に足を取られしまう。

「そ、そんなぁ〜〜・・・・」
遠くなるディーの泳いでいく姿を、ガラハッドのむなしい叫びが追っていた。



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