遠き記憶・・・
〜[孤独という名の暗闇・・・自己の探求] Brandish4サイドストーリー〜


 

お絵描き掲示板で描いた男性と風景を合わせてみました。
そして、神の塔ということにした絵と一緒にして、キエンということに・・・(爆
  
  

 「私は・・・・誰だ?」
そこは遥か太古から存在するという巨大な塔。広大な砂漠のまっただ中にある高き塔。その塔の地下層に続く薄闇に包まれた廃墟の片隅で、男の自我は目覚めた。

「私は・・・・・」
記憶は厚いベールに閉ざされていた。自分が何者なのか、なぜそこにいるのか、何も分からなかった。

「記憶がないって?・・・・そうだなー、探索隊は幾組も編成されているからなー。・・・残念だが、オレはあんたを知らない。」
怪我をして倒れていたところを発見してくれ、傷の手当をしてくれたその男は、そう言って自分の所属している探検隊の後を追っていった。

−シャッ!−
傷も癒え、立ち去った男が教えてくれたこの塔内にある街への道。その方向へ進もうとした男の脳裏を一瞬何かが横切った。
「炎・・・真っ赤な・・いや、金色の?」
それと共に男の脳裏に1つだけ浮かび上がる。
「キエン・・・そうだ、私の名は・・・キエン。」

他の記憶は暗闇に閉ざされたままだった。いくら考えても何も思い出せない。
キエンという名のみ思い出したその男は、ゆっくりと歩き始める。
己と、そして、今自分がいるここがどういった場所なのか、なぜここにいるのか・・・そして、なぜ記憶を失したのか・・・分かっていることは、キエンと言う名前。そして・・・自分が剣術を身につけていること。

そうして、その男、キエンの探索は始まった。


「キ、キエンさ〜〜ん!!す、すみません、また回復剤分けていただけないでしょうか?・・あ、それから・・・毒消しなどもお持ちでしたら・・・・」
「あ、待って!キエンさん、・・・この先は水中に繋がってましたから・・何か水中でも息のできるアイテムでも探してからの方がよさそうよ。」
「おい、おっさん!・・・そんな格好してて暑くないか?・・・それに不気味だぞ?ターバンが悪いとは言わねーけどな・・・もう少し顔を出すようにしたらどうだ?それでなくても暑いんだぜ?・・・汗疹だらけになってもしらねーぞ?」
「ふ〜〜ん・・記憶がねー・・・・感じからして、同業者のようだけど・・どう?あたしと組まない?損はないわよ?この世は力のある者が勝つのよ。あなたにはその力があるわ。」
「ねーねー、あたいと賭けしないかい?あたいが勝ったらそのターバンとって、素顔をみせておくれよ。そのかわりあたいが負けたら誰も知らない抜け道教えてあげるからさ。」
「ちょっとそこの渋いお兄さ〜ん!そうそう、あなたよ、あ・な・た♪え?そんな怪訝そうに見なくてもいいじゃない?あたしは単なる武器屋よ、妖しいものじゃないわ。ね、そんな安物、お兄さんには合わないわよ。いいものそろえてあるから、寄っていかない?え?持ち合わせがない?・・・・うーーん・・・じゃ、今日は特別。顔つなぎにさ、お酒の呑み比べといかない?いける口なんでしょ?あたしに勝ったら、好きな武器1つあげるわ。え?あたしが勝ったら?・・・そうねー・・・しばらく店番手伝ってくれない?ああ、大丈夫、何もしなくていいのよ。ただお店にいてくれれば。このごろ柄の悪い調査隊連中が言い寄ってきてさ、うるさいったらないのよ。・・・兄さんが店にいてくれりゃ、口先ばっかの弱虫のあいつらなんか、きっと尻尾巻いて逃げるだろうからさ。ね?悪い取引じゃないでしょ?」
「キエンさん!また試食お願い!!今度のはきっと味もいいはずよ♪」


閉ざされた塔の中の探索。そこで、いつしか失くした記憶などどうでもよくなっていた。


「月が見える・・・・」
最上階は近かった。崩れ落ちた壁の隙間からキエンの目に外の景色が写った。
−ヒュ〜〜・・・−
熱砂を含んだ風がキエンの顔を横切る。
ふと、遠い昔の記憶が蘇ってくるような感覚を覚え、そのまましばらく佇む。
「私は・・・・・」
風が運んできた熱さを受け、確かに何かを思い出しそうだった。
が・・・記憶はやはり闇に閉ざされたまま。わき上がる感覚は途中で消滅してしまった。


「誰でもいいだろ?そんなの?今が大事なんだって!あんたのやりたい事をすればいいんだぜ?」
「私は・・今のキエンさんが好きです。あ・・・おかしな意味なんかじゃなくって・・・今のままのキエンさんで十分だと思います。記憶があってもなくても。」
「へ?・・・小生なんぞ、すぐ忘れてしまいますからなー・・・まー、いいじゃないですか?・・戻る時には戻りますよ。気楽にしていればいいんですよ。・・ところで、街までの道はどっちへ行ったらよかったでしょうか?」


途中で消えてしまったその感覚の代わりに、仲間・・・ではないが、塔で出会った探索者たちの顔が、そして言葉がキエンの中で鮮明に蘇ってくる。


「キエン・・・お前がどのような道を選ぶか・・・じっくりと拝見させてもらおう。」

・・・・「そうだ・・あいつだけは、あの男の言った言葉だけは、聞き流したままにしておくわけにはかないだろう。・・何かを知ってる・・・何か重大な事を。」
小さく呟き、キエンは再び歩き始めた。上への道を・・それは、失った記憶への道。    


♪Thank you for reading!(^-^)♪

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