落ちこぼれ(?)同窓会(?)


〜[4に出演できなかったキャラ(?)たち] Brandish4サイドストーリー〜


 

 「アレス!ここにいることは分かってんのよ!隠れてないで出てらっしゃい!」
バタン!と勢い良くドアを開け、1人の女が飛び込んでくる。
相変わらずその肉体美を誇示するかのような肌も露わな、およそ魔法使いとは思えないその格好は、 それでも魔法使い、ドーラ・ドロン。
「魔法使いはローブって誰が決めたの?あたしの勝手でしょ?動きやすいのが一番よ!」と いうのが彼女の言い分。
が、世の男にとっては目の毒というもの。当然の如く、宿の2階にあるこの部屋へ来る前に 酔っぱらいと一騒動起こしてきていた。が、そこは、彼女の生まれ持った気性の激しさで、そこらの優男など寄せ付けない。 ドーラの一睨みはそれほどきついものだった。まして魔法使いである。いざとなれば、その手に燃えさかる火球がモノを言った。 術者でもない限り、魔法使いを敵に回す愚か者はいない。誰しもお焦げにはなりたくは・・ない・・・。
ともかく、ここは、宿の一室。が、ドーラのお目当て、1000万Gの賞金がかかった男、アレスの姿は何処にもなかった。
「・・あたしが来るって分かって、また逃げたのね?!・・・一体どこへ?・・ん?」
ドーラはテーブルの上に破れかかったような紙切れを見つけ、つまみ上げてそれを広げる。
「えっとぉ・・・『同窓会招待状』・・ですって?」
眼を丸くして驚く。
「あ・・あんな悪党に同窓会なんてあるの?じゃなくて・・同窓生なんてものが・・?」
・・・このあたしでさえないというのに・・・そう思いながら、その文面に目を走らせる。

そして、数分後、階下の男どもを一睨みで震え上がらせてから、勢い良く宿を飛び出すドーラの姿があった。
「・・ったく・・あいつらとの騒動がなければ、アレスに気づかれずにいたはずなのに・・・」
ぶつぶつ文句を言いながら、目的地、舞乱出珠国にあるという武威邸なる館へと急いだ。

「ここね?」
その武威邸は、人里からずいぶん離れた渓谷にあった。
その古ぼけた洋館は、どことなく気味の悪い雰囲気を醸しだしていた。
「どうみても普通じゃないわよね。もしかして、同窓会って、悪党の・・しかも賞金首ばかりだったりして・・・」
・・・だったら、儲かるけど・・・そんなわけないか・・
その発想に自分ながらも嘲笑しながら、ドーラは取っ手に手をかけた。
−ギギィ〜・・−
そっと押したつもりだが、結構大きな軋み音をたてながら開く。
が、誰も出てくる気配はない。中はし〜んと静まり返っている。
入ったところは玄関ホール。奥と左右に廊下がある。
「あんまりいい気持ちはしないわねー。」
1人呟きながら、奥への薄暗い廊下を進む。
その廊下は地下室への階段で行き止まりになっていた。
「地下室か・・・一番怪しいわよね?」
自分に確認するように呟き、階段を下りていく。

「ううう・・・」
「でよぉ〜〜・・頭きちまうぜ!」
「オレ悲しくて、悔しくて・・・何で声がかからなかったんだ?」
「そうだ、そうだ!新モンスターなど作らなくっても、オレたちで十分じゃないか!なあ?!」
地下にある結構広い一室。そこでは、すでに宴会らしきものが始まっていた。
明かりは所々にあるのみで、薄暗いそこでは、近くに寄らないと顔の確認はできない。
ドーラは自分の正体がばれないよう、注目されないように、息を殺してそっと中へと入った。

わいわい、がやがや・・
それぞれ仲間同士で呑みながら話し込んでいるみたいだった。
・・・えっとぉ・・アレス、アレスはどこに?・・
ひたすらアレスの姿を探すドーラ。と、そのドーラを見つけて1人の男が声をかけた。
「ん?あんた確か・・・ビストールであった露出症の姉ちゃん。」
「何ですって?」
キッ!とその男を睨むドーラ。
「誤解しないでほしいわ。この服装は、動きやすさを追求した結果なのよ。」
「ほほう・・さいですか。でもマントはない方がもっと動きやすいんじゃないんかい?」
「私もそう思うんだけど、お師匠様にマントだけでもつけてるように、言われて・・ってあんた、誰よ?」
「わし?わしですかい?やっぱり覚えてないですわなぁ〜。」
にたにたローブの下で下品に笑うその男の顔を見て、ドーラは思い出した。
「ああー!あんた、ビストールの地下迷宮にいた闇屋のおじさん!」
「ぴんぽ〜ん!覚えてくれとって、わし、嬉しいですわい。」
「・・あんたには、足下見られて相当高く買わされたわよねぇ・・・」
「え?・・さ、さいでっか?・・あ、あはははは・・ま、まー、そんな恐い顔 しなさんと、お座りやっしゃ。おごらせていただきますわ。」
「ふん!そんなもので水に流そうなんて虫が良すぎるわよ。」
そう言いながらもテーブルにつき、小声で脅すように言うドーラ。
「アレスはどこ?」
「ア、アレスさんでっか?・・・えっと・・確か奥のテーブルに1人で座っとると 思ったけどな。」
「あんた、どこの出身?」
「わし?わしは・・勿論ビストールですわい。もっともあの迷宮が崩壊 しちまったもんだから、あちこち放浪してるしがない身ですわ。」
「ふ〜ん、それでしゃべり方、めちゃくちゃなのね。 ・・って、そんなことどうでもいいのよ!これは一体何の同窓会なのよ?」
「ほろ?姉さんとこへは、招待状は届かんかったんでっか?」
「ないわよ、そんなもん!どうしてあたしのところに来るわけ?こんな怪しい同窓会の招待状が?」
ドーラは周りを見渡した。誰も彼も一癖も二癖もありそうな胡散臭いやつばかり。
「んじゃ、どうしてここが?・・・・は、は〜〜ん・・」
アレスを追って来たことに気づいたその男は、にたり顔。
「何よ?その顔?」
ドーラもそれに気づく。
「あ、あたしが後を追ってるのはね〜、隙を見てあいつの首を・・・」
「へいへい、分かってますって、姉さんの気持ちは。」
「どう分かってんのよぉ?」
「ま、まー落ち着きなはれ。」
今にも飛びかかってきそうなドーラに、男は気をもんで制する。
「じゃー、なんですかい?ねえさんは、ここがどういった同窓会かご存じないわけで?」
「え・・ええ・・まーね。」
「そうでっか・・・・まー多分、主催者もアレスさんに出せば、必然的に姉さんの知るところと なるって分かってて出さなんだったんですやろ?・・ここはですなぁ・・・」
男が説明をしようとした時だった・・・
「なぜオレたちが外されなくちゃならないんだぁっ?!ええ〜っ?!」
大男がボトルさら呑みながらふらつきながら、ドーラの横のイスにどかっと座った。
「?」
何事かと声もかけず、ドーラは男を見る。
「だって、そうだろ?新しい魔物まで作ってよぉ・・・オレたちが何をしたってんだ?そ、そりゃー、 オレの攻撃がすごい事ぁわかるけどよぉ・・だからって、何も外さなくてもいいじゃないか・・・。」
−ダン!−
勢い良くボトルをテーブルに置いて、その男は自分自身もテーブルに倒れ込む。
−ズシャァッー!−
と同時に男の頭部が割れたかと思うと、それは、腸のようなひも状となり、勢い良く飛び出した。
「きゃあっ!」
思わず悲鳴を上げながら立ち上がり、後ずさるドーラ。
テーブルの上は、ぴくぴく動くピンクの内臓で覆われ、その光景の気持ちの悪さは、 何とも形容しがたい。
「おっとっと。・・・悪酔いしてるんかい・・まぁ、仕方ないと言えば仕方ないな。」
危ういところでそれに覆われるのを避けることができた闇屋の男がため息をつく。
「な・・なんなのよ、これ?」
事情を知っているらしい闇屋を睨むドーラ。
「うーーん、つまりだなぁ・・・この男は、人間の形態をしている『リブオーガン』という魔物なんだな。 でー、この集まりなんだが、 これは、リニューアルされた世界のダンジョンに配置されなかった、いわば、落ちこぼれの同窓会 なんだよ。うん。」
「うんって・・・分かるように説明してよ!」
「つまり、『BrandishVT』と呼ばれる世界があったんだ。で、その鏡面世界が今回作られたんだ。 その世界は『Brandishフォー』と言って、鏡面世界ということでVTの世界の模写と言ったらいいかなぁ? いわゆるリニューアルバージョンって奴なんだ。」
「どう『いわゆる』なのよ?」
「ま、まー、そう細かい事は、気にせんどき。」
「あ・・あのねぇ・・・」
「いいから、いいから!で、VTの世界に神の塔と呼ばれる塔があったんだ。 そのダンジョンに、こいつらリブオーガンもいたんだが、てっきりフォーの世界の 神の塔にも配置されると思っておったのさ。そしたら・・・」
「配置されなかったってわけ?」
「そうなんだ。で、そういう輩が今日ここへ集まったってわけさ。リブオーガン、ペタカルコス、マドシェイカーなどが。」
「ふ〜ん・・で、何であんたがいるの?」
「わしでっか?わしは、偶然ただメシが食える事を知って・・・あ、い、いや、闇屋として情報収集 の必要性を感じてですな・・・」
「ふ〜ん・・それは、いいとして、あたしやアレスはどういう理由で仲間なの?」
「ま、まー、そこは、そう!そのフォーと言う世界が作られると分かったとき、周囲は、 当然姉さんやアレスさんの世界だと思ってたらしくて、まー、そこで、いわゆる お仲間になるんじゃないか、ということになったと・・こう・・・」
と、ぺらぺらと話していた闇屋は、ドーラの険しい顔つきに気づき、急に口を噤む。
「あんたやモンスターが・・アレスやあたしと同格とでも・・・言うの?」
「い・・いや・・め、滅相もない・・そ、そんな大それた・・」
たじたじ気味の闇屋。
「あたしの何処が落ちこぼれだっていうのよ?」
(いつもドジ踏んで下へ落っこちてるだろ?・・とも言えるよな?)
「え?今何か言った?」
「い、いや・・あ、あの、その・・そ、そう!やはりBrandishと名前のつく世界には 姉さんやアレスさんがいなくては始まらないということで・・・。」
「・・ったく!思ってもいない事を言わなくても結構よ!でも、アレスもアレスよ。 何も招待状もらったからって、律儀に来なくっても!」
もう一度闇屋をじろっと睨み付け、その拍子に内臓の姿になったリブオーガンをその視野に捕らえてしまい、 再び襲う吐き気を我慢しながら、奥へと進んだ。

「あ!いた!アレス!」
一番奥のテーブルにアレスは1人寂しく(?)酒を呑んでいた。
「ちょいと、アレス!よくもこんな変な所まで逃げてくれたわねー!」
アレスのすぐ横に立ち、またしても1人勝手な事を言い始めるドーラ。
no4

ドーラ・ドロン
[寄贈:異次元箱さん (ありがとうございました)]

 

「ったく!あんたがこんなところへのこのこ来てるから、Brandish4までおかしな奴ら が主人公面して大手を振ってるんじゃない!」
訳の分からない話だったが、勝手に闇屋の言葉を借りて文句を言う。
が、当然のごとく、アレスは相手にしない。
「これが、Brandishの落ちこぼれ・・もとい!出演できなかった者同士の同窓会なんだって、 知ってて来てんの?」
「・・・・・」
「・・いい加減に何とか言いなさいよっ!」
「・・・・・」
−ガタン!−
「な、何よ?やろうってんの?」
急に立ち上がったアレスに一瞬どきっとして、一歩下がり思わず杖を構えるドーラ。
が、アレスはドーラには全くお構いなしに、荷袋を肩にかけると、さっさと出口に向かった。
ただ、心なしか両口元が上がっているようにみえる。
「な、何よ?何がおかしいってんのよ?」
そのアレスの口元を見て、ドーラの脳裏に、ぼろぼろになったプラネットバスターを 渡された時のことが鮮明に蘇り、と同時に怒りも蘇る。
「待ちなさい、アレス!・・・今度は何をたくらんでるの?」
ドーラは、アレスの後ろ姿をぎっと睨み、慌てて追いかける。
「いい加減に顔も見せなさいよ!口があるなら、何か反論してみなさいってば!」
−バタン!−
「とと・・・」
もう少しで扉に顔をぶつけそうになったドーラは、怒り最高潮。
「ア・・アレス〜〜っ!!この卑怯者ぉ〜っ!」
−バタン!−
慌てて扉を開け、走り出る。見ると、アレスはずいぶん先の方を歩いている。
「待ちなさいったら!」
−バッタ〜〜ン!−
・・・ぶっ!・・
マントの裾が扉に挟まっていることに気づかなかったドーラは、これ以上ないというほどの 勢いで前のめりに転んだ。
「いったぁ〜・・・・」

・・はっ!・・・
ここは宿の一室。東の空が白んで来ていた。
部屋の片隅にベッドからまともに落っこちたドーラの姿があった。
「いったぁ〜・・まともに顔をぶっちゃったわ・・。」
「ん?・・・ゆ、夢?今のって夢?」
慌てて部屋を見回すドーラ。そこは確かに武威邸の地下室でも廊下でもなく、 前日に泊まった覚えのある宿の一室。
「・・・へんな夢・・VTとかフォーとか・・?」
そして、ふと窓から見下ろした通りを歩くアレスを発見する。
「アレス!・・・またそっと逃げようってのね!そうはさせないわよ!」
慌てて身支度してドアから飛び出る。
−ガタガタガタガタ・・・・・ドッシーーーン!−
「痛ぅ〜〜〜・・・・」
見事に階段から転げ落ちたドーラは、それでも痛みを堪え、急ぎアレスの後を追う。
「あ!お客さん宿代は?!」
宿の主人の声など耳に入るはずはない。

数週間後、ドーラはアレスが立ち寄ったという酒場で、アレスの手配書の横に自分の それを見つけて驚く。
「な、何よ、これ?・・これじゃ私がまるでアレスの相棒みたいじゃない?!」
ドーラの顔が見るみるうちに、怒りで赤く染まっていく。
「ア・・アレスぅ・・・全てはあんたが悪いのよぉ〜!」
こうなったら、何が何でもアレスの首を取り、自分の無実を晴らそうと、怒りに燃えた ドーラは、鬼気迫る表情でそこを後にした。
その気迫に押され、今や賞金首となったのだが、そのドーラを刈ろうとする恐い者知らずは、 そこにはいなかった。

・・・でも、なんでアレスが1000万Gであたしがたったの100Gなのよ!! 失礼しちゃうわ!!・・・



♪Thank you for reading!(^-^)♪

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