「ぐなちゃん、出かけましゅよ〜♪」
店の玄関でまだ奥にいるぐなに声をかけるぐに。
「キーキー!」
「まだでしゅか?・・・え?もうしゅこし?」
くすっと笑いながらカウンターの中にいるクレールの方を向く。
「それじゃ、しゅみましぇんが、行って来ましゅ。おみしぇ、頼みましゅね。」
「はい、いってらっしゃい。楽しんできてね。」
にこやかに手を振るクレールに可愛らしい手を振って笑顔を返すと、2人は店を後にしました。
「どこ行こっかぁ、ぐなちゃん?」
「キイキイ!」
「うーーん・・ぐなちゃんまだ人間の言葉よくしゃべれないんでしゅよねー。下手にしゃべるより
いいんでしゅけど・・。」
ぐには思い出してました。お客さんが帰って行かれる時のぐなの言葉・・・
ぐなは、感謝の意を込めて言ってるつもりらしいその言葉は、『シケタキャクダヨ』
結構高い品物を買ってくれた人にも同じそのセリフを言うぐなに、今まで何度教えたことでしょう・・。
でも、何度教え直してもぐなの口から『ありがとうございまちた。』が出たことはなかったんです。
「2人っきりだからもぐもぐ族の言葉でもいいんでしゅけど、でも、このお話は、一応人間が読んでくれる
らしいでしゅから・・・」
自分が通訳すればいいか、と思ったぐには、もうそのことについては気にしないことにしました。
そう、今はそんな時じゃないんです。久しぶりのお休み!う〜んとエンジョイしなくちゃ!!
ぐには、ぐなに手を差し出すとにこっと笑いました。
「まず、円盤飛びごっこで遊びましゅよ!」
「キイ!」
2人は上機嫌で3Fへの魔法陣に飛び乗りました。
−シュオン!シュン!−
そのフロアは、猛スピードで飛び交う楕円形の球体の魔物、『クレイスフィア』のテリトリー。
外見はとてもではないのですが、生命体には見えません。半分に割れるその球体のお腹部分らしきところからは、
鋭利な刃物がものすごい勢いで回転しているように見えます。
でも、その実、風精であるが故、疾風が取り巻いているだけなのです。
でも、鋭利な刃物状態であることは変わりはありません。彼(?)のその攻撃で幾人の冒険者が大けがをしたり、
真っ二つに切り裂かれたりしたことでしょう・・・・。
ぐにとぐなは、そんなクレイスフィアとまず遊ぶことにしたのです。
え?なぜって?それは・・一番近かったのと、それとやはり面白いから!でしょうね。
「ぐなちゃん、そっち行ったよ!ほらそこ!」
落とし穴がいっぱいあるそのフロア。
入り口を2カ所決め、お互い片方の入り口からもう片方の入り口まで、
その落とし穴に落ちず、上手くクレイスフィアの攻撃を交わしてたどり着くという競争です。
もしぶつかったら、そこはじゃんけんで決めます。負けた方はペナルティーとして一度穴に落ちるんです。
「ああーー!そこにいたらジャンプできないでしゅよー!」
「キーキー!」
「ああー!着くのはぼくの方が早かったのに・・・落ちた回数で負けちゃったでしゅ・・・」
「キキッ!」
「あっ、ぐなっ!クレイスフィアを蹴って道をちゅくるなんて、ズルでしゅよ!」
「キィッ!?」
『きゃっきゃっきゃ!』と、2人の楽しそうな笑い声は、しばらくそのフロア一杯にこだましてました。
「あー・・面白かったぁ・・ちょっと休憩にちまちゅか?」
「キー、キイキイ・・」
「え?どうせならお花の咲いてる庭園で、でしゅか?」
「キイ!」
「うん!そうでしゅね。庭園の壁から下の景色を見ながらのんびりするのもいいでしゅよね?!」
「ソウソウ。」
(たまにはぐにに合わせて人間語も話さないと、と思ったとか思わなかったとか・・・/^-^;)
そして、庭園の壁の上から綺麗なお花(モンスターなんですけど・・。)を見ながら少し休憩を取った2人は、
今度はそこにいる真っ白な尾長ざる『ペイルエイブ』(これも一応モンスター・・。)と鬼ごっこで遊びました。
巨大トンボに(無理矢理)乗って空中飛行などもしました。
とにかく今まで遊ぶことができなかった分を取り戻すかのように2人は遊び続けました。
遺跡に生息する『パラソルシェル』。その名前の通り、2枚の貝殻をパラソルのようにひろげ、傘のようになって
飛び跳ねるモンスター。暴れ馬よろしく、暴れパラソル乗りです。
そして、自身を水の鎌のように飛ばしてくる『テラノヴァ』を上手く誘い出し、その攻撃を上手く交わす反復横飛び
競争・・などなど・・。
「うーーん、やっぱり乗魔(乗馬から作られた言葉らしいです)は、パラソルシェルより、カマドゥの方が乗り心地が良かったでしゅね!」
「キイ!」
そして、その日のメインイベントは・・・
やはり、『初めての人間の街訪問』
顔だけ出している2人は、立派に人間の子供で通用します。ですから、別にどうといったこともなく
街には入れました。
ただ・・・立派なそのお髭を隠すためにマスクをしなくてはなりませんでしたけど・・・。
最初マスクをしたとき、思わず笑ってしまった2人です。だって、まるで覆面プロレスラーか泥棒さん
なんですもの・・。え?なぜ2人がプロレスラーを知ってるか?ですって?
そ・・それは・・・た、多分、お店に来た冒険者にでも聞いたのでは・・・/^-^:
あ・・そうそう・・街に入ってからお買い物をして、キエンさんを見習って布でくるっと巻いたみたいです。
(マスクはカッコ悪いとかで。)
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