霊玉核を求めて(3)

〜[子魔物たちの冒険記] Brandish4サイドストーリー〜



no9

『うっぎゃぁ〜〜〜!』と叫んで逃げ回るガラハッド
[寄贈:箱さん (ありがとうございました)]


 「たっ・・た〜すけてくれ〜〜〜〜!!!」
焦りまくって庭園の飛び石を走り回るガラハッド。
そして、そんなガラハッドをドーニェンが追いかけている。
しかも時々火炎を放ちながら。
「ドーニェン!しっかりしろよ!」
「いいかげん、正気に戻ってくれよ〜!」
その周りを必死の思いで叫びながら飛び回るストムクウとヒューバク。
−バシュ〜ッ!バシュ〜ッ!−
そんな彼らに構わず、ひたすらガラハッドを追いかけ、攻撃をし続けるドーニェン。
そう、ここ庭園に来るとすぐガラハッドたち一行は、なんと妖炎の魔術師メルメラーダと逢ってしまったのだ。
そして、炎を操るメルメラーダは、なんとドーニェンに目を付け、いとも簡単に意のままに操ってしまった。
しかも邪魔なガラハッドを殺せ!と。
目を丸くして逃げ回るガラハッド。とそんなドーニェンを正気に戻そうと必死で呼びかけるヒューバクとストムクウ。
時には、ガラハッドに命中しそうな火玉をその風力で吹き飛ばしながら。
おかげで庭園のあちこちから火の手が上がってしまっていた。
周りが水だからまだいいようなものの、それでもあちこちの壁が燃えていた。
「ひ、ひえ〜〜〜、は、早いとこドーニェンの気を取り戻させて、火を消さないと!!」
逃げ回りながらもガラハッドは必死で考える。
が、何も思いつかない。今の状態では消化作業なんてできっこない。
「こ・・こんなときクレールさんでもみえれば、火を消していただくのに・・・」
『あ〜〜!危ない!おじちゃん!』
火玉を吹き飛ばしそこなったヒューバクが叫ぶ。
『曲がって曲がって!』
「そ、そんなこと言っても真っ直ぐにしか道はないですよ〜!」
と叫んでいる間に、ガラハッドめがけて一直線で飛来してきたその火玉は、満足するかのように彼に追いついた。
−ボン!−
「ぎゃあっ!あ・・熱い〜〜〜!」
お尻に火がつき、さっきまでの蒼白だった顔色が、途端に真っ赤になる。
「ぁつつつつ〜〜〜〜〜!」
−ザッバ〜〜ン!−
あまりにもの熱さに絶えきれず、ガラハッドは水中に身を投げた。
−ジュオ〜〜ン!−
−ジュジュジュ〜〜−
その温度を表すかのようなものすごい蒸気とともに、ガラハッドのお尻は徐々にその熱さから解放されていった。
「ふう・・・う・・・く、苦しい・・・」
水中でも息の出来る銀鱗の首飾りを外していたのが、悪かった。
ほっとしたのもつかの間、真っ赤の次は、苦しさで青くなるガラハッド。
「ぶほ〜っ!」
慌てて水面に出て、大きく息をする。
−バシュ〜ッ!−
と、それを待っていたかのようにドーニェンが火玉を放つ。
「ヒェ〜ッ!」
そして、再びガラハッドは水中に逃げ込む。首飾りをかけている間などありはしない。
その繰り返しが何度続いたことだろう。
なにやら閃いたヒューバクとストムクウがドーニェンの背後から、強風を吹き付けた。
−ビュオ〜ッ!−
−バッチャ〜ン!・・ジュジュジュジュ〜〜〜!−
真っ赤に溶けた金属が身体のドーニェンが水中に落ちたからもうたまらない。
辺りはまるでサウナかと思えるほどの蒸気で覆われた。
「おお〜〜!?」
その蒸気は、壁の火をも消していく。
そして、ドーニェンの熱と水との戦いは暫く続いた。
多勢に無勢、水量が3分の1減ったようにも思えたが、小さく黒くなって固まったドーニェンの 負けで終わる。
「や〜れやれ、と言ったところですかな?」
蒸気を発生させる力も失くし、水底へとゆっくり落ちていくドーニェンをそっと手に取ると、 水面に向かうガラハッド。
すっかり弱ってしまったドーニェンは、その熱さがない。
「ふう・・」
水から出たガラハッドのところにヒューバクとストムクウが心配そうに寄ってくる。
「大丈夫でしょうかねぇ?」
そっと地面にドーニェンを置きながら、心配そうにガラハッドも呟く。
『こんなになっちゃうなんて、初めて見たよ。』
『うん、ぼくも。』
「で、元には戻るんですか?」
『さあ?・・・』
じっとガラハッドが見守る中、2匹は必死の思いでドーニェンの名を呼ぶ。
が・・・気づきそうもない。
「まさか、死んでしまったなんて・・・?」
『そ・・そんなこと・・・』
自分たちが殺した?ヒューバクとストムクウは、真っ白になって焦る。
『ど・・どうしよう?』
「う〜〜ん・・・・・」
しばらく考え込んでいたガラハッドは、ごそごそと呪符を荷袋から取り出した。
「これは火炎の呪符なんですよ。もう一度火の中に入れてみるなんてどうでしょう?」
『うん!いいかも?!』
声をそろえて賛同する2匹。
「では、いきますよー。」
ドーニェンに向かって呪符を投げつけようとして、急に動きを止めるガラハッド。
『どうしたの?』
「も、もしも・・もしもですよ。これで元の状態に戻るのはいいとして、正気に戻って なかったら・・・?」
またしても同じ状態に?と不安になったガラハッド。
『う〜〜ん・・・』
ヒューバクたちにもそれは分からない。
「どっちにしろやってみるしかないですな。」
ふう、と大きくため息をつくと、ガラハッドは観念する。
今の状態では、どうしようもないから。
「い・・いきますよ・・。」
そのかけ声も小さく、ガラハッドはどきどきしながら、もしもの場合すぐ逃げれる ようにと首にかけた銀鱗の首飾りを今一度確認すると、呪符を投げつけた。
−シュッ!−
−ボン!ボボボボボ!−
ドーニェンが火に包まれる。
ガラハッドと2匹は息を飲んでその様子を見続けていた。

−ボボボボボッ!−
ひときわ大きく燃えさかると、炎はドーニェンの姿になった。
「あ・・あれ?ぼく・・?」
きょろきょろと辺りを見回すドーニェン。
−ほーーーーーっ・・・−
大きくため息をつき、ほっとするガラハッドたち。
そして、ヒューバクとストムクウから庭園に来てからの出来事を聞かされる。
「そのお姉さんの瞳に気持ちが吸い込まれたようになったとこまでは覚えてるんだよ。・・・ごめんなさい。」
「いやいや、ドーニェンのせいじゃないですし、こうしてみんな無事だったことですから、まーいいじゃないですか。はははっ」
ガラハッドは、ぺこりと謝るドーニェンに、頭を掻きながら右手を振る。
「もっともだいぶあちこちで壁が焼け落ちてしまいましたが・・・」
「う・・うん・・。」
「あ!いや君を責めたんではありませんよ。入り組んでた通路がかえって通りやすくなって いいと小生は思いますよ。」
すまなそうに下を向くドーニェンにガラハッドは慌ててつけたす。
「そ、そお?」
ほっとした顔つきでガラハッド達をみる。
「うん!そうだよ、ドーニェン!」
「そうそう!」
ヒューバクもストムクウもドーニェンを元気づける。
ドーニェンは、それに安心してようやくにこっとする。
「じゃー、落ち着いたところで肝心のゲネイオンを探すとしましょうか?」
「そうだね。だけど・・・」
ヒューバクが心配そうな顔つきでガラハッドをじっと見る。
「魔物同士で話した方がいいと思うんだけど・・・」
「そ、そうですなー・・」
腕組みをして考えていた時だった、上空から何かが急降下してくる羽音が聞こえたと 思った瞬間、ガラハッドの巨体は何ものかに捕まれ浮き上がった。
「あ〜れ〜〜〜〜〜・・・」
そう、ガラハッドは1匹のゲネイオンに捕らえられていた。
「ヒ、ヒ〜〜〜・・・・」
ドーニェン達が遙か下に見える。ガラハッドは目が回りそうだった。
−ヒュン!−
慌ててヒューバクとストムクウが飛び上がり、ゲネイオンに話しかけた。
「だめだよ!その人ぼくたちの友達だよ!」
「ん?」
ぎろっとその大きな複眼で2匹を睨むゲネイオン。
「関係ないね。捕った方が勝ちさ。」
魔界でもチンピラ的な存在のゲネイオン。協調性など何もない。
「言ったな!よーし!」
−ビュン!−
説得して聞く相手ではないと判断した2匹は、ものすごい勢いで回転を始める。
「お・・おい・・・吹き飛ばされちゃうじゃないか!」
−ビュオーーー!−
必死の思いで強風を堪えるゲネイオン。
「ち!」
ガラハッドの巨体を抱いていては、その強風をまともに受けてしまう。
ゲネイオンは苦々しげにヒューバク達を今一度睨むと、ガラハッドを離し飛び去っていく。
−ヒューーーーー・・・・・−
自由の身になったのはいいのだが、ガラハッドは真っ逆さまに落ちていく。
「ヒ、ヒエ〜〜〜〜〜〜・・・」
あまりのもの落下スピードにガラハッドは生きた心地がしない。
−ビュオッ−
急いで急降下した2匹が、そのガラハッドの下で風を起こす。
「ふう・・・・」
その風のお陰で落下速度も弱まり、ガラハッドは怪我もなく下へ下りることができ、ほっとする。
「一時はどうなるかと思いましたよ。ありがとう、ヒューバク、ストムクウ。」
「ど、どういたしまして・・」
お礼を言われ照れまくる2匹。
「目的のゲネイオンはぼくたちで探すよ。空も飛べるし、その方が簡単だと思うから。」
「そうですな、小生がいては返ってお荷物になってしまうかもしれませんな。では、少し先に道具屋が ありますので、そこで待ってましょう。何かあったときや、無事取り戻せたらそこへ来て下さい。」
「うん!外からドアを叩いて合図するね。」
「では。無事見つかることを祈ってますよ。」
「うん。じゃーね。」

そして、ここで一旦別れる奇妙なパーティーの1人と3匹。
ここで彼ら子魔物たちが、霊玉核を無事取り戻した後、再び合流し、無事地下墓地まで送って一件落着となるはず だった。
が、予定通りに事が運ばないのが世の常。予想外の展開で 彼らの冒険はまだまだ続くこととなる。
そう、彼らのどたばたレースは始まったばかり。はたして制限時間内に無事取り戻すことができるのか? (これを書き終わった時点では筆者にも分からない・・・/^-^; )
が、今はひとまずこれで一息。続きは、またいずれ。




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