霊玉核を求めて(1)

〜[子魔物たちの冒険記] Brandish4サイドストーリー〜


 

 「こ・・ここが、神の塔?」
びくびくしながら小さく呟いたのは、風精である青色の球体の魔物クレイスフィアのヒューバク。
そのヒューバクに小さくうなずく(といっても実際は身体全体を動かすのみ)同じく クレイスフィアのストムクウ。
「ゲネイオンのいるっていう庭園って、塔の真ん中よりちょっと上くらいだったっけ?」
火精に属する魔物レアブラスのドーニェンが心配気にその薄暗い天井を仰ぎ見ながら小さく呟く。
「う・・うん、多分ね・・・。」

彼ら子魔物3匹は、同級生である土精に属するゴーレム、リブフレッシュの コロキューの核つまり人間で言うと心臓とも言うべき『霊玉核』を探しに、 一般の魔物には立入禁止区域となっている人間界のここ、神の塔と呼ばれる ところへとやってきていた。


彼らは、魔界第1層ファルコヶ谷の一角にある魔界幼年学校での同級生。
いろいろな種族の合同クラスである初等科のクラスメートだった。
コロキューは、そのごつい図体に似合わず、物静かで心優しい魔物だった。
事の始まりは、その日の朝、花当番だったコロキューが川向こうの野原に 花を摘みに行ったことから始まった。
そこで登校途中のヒューバクとストムクウと出会った。
2匹は結構名が通ったいたずらっ子。そして、まだ時間が早かったこともあり、 コロキューのお人好しにつけこんで、彼の核でキャッチボールを始めた。
すぐ返すつもりではいたのに、なんとちょうど運悪くその上空を通りかかった 巨大トンボの魔物、ゲネイオンにひょい!とその核を捕られてしまった。
さー大変。霊玉核は、リブフレッシュの指令塔とも言うべき大切なもの。 それがなければ動けれない。そして、5時間以内に それが体内に戻らなければ、ただの土の固まりと化してしまう。
しばらくゲネイオンを追いかけてみたものの、見失ってしまったヒューバクと ストムクウはもう真っ青。
そこは初めて来たエリアであり、見失ったその場所の近くで人間界への扉を見 つけると、2匹は、一段と真っ青になった。
・・・もっとも元が青色なので・・実際には、真っ白に。
それは、ゲネイオンが人間界の神の塔と呼ばれるところに行ったことを意味していた。
そこは、人間という最も恐ろしい敵のテリトリーと聞かされていた。だから、力を認められた戦士しか 行くことはできない。
かといって、先生たちに言えば、どんなに怒られるかわからない。
多分、罰を受けるだろう。血の池地獄か針の山か・・・?
責任を感じた2匹は、なんとか自分たちだけで取り戻してくることを決心した。
もっとも、罰が怖いというのが本音。それと、恐いもの知らずと興味心が決定を促した。
そして、仲が良く、またクラスで一番強いドーニェンと共に人間界に来たのだった。
それなのに、魔界との接点である神の塔最下層の地下墓地で、早くも彼らはしり込みしてしまっていた。


 「な・・なんだよ〜・・い、意外と弱虫なんだな。」
ヒューバクがぐるっと身体を回転させて言った。
「誰だったっけ?オレが火の剣でぜんぶやっつけてやる!って言ったの?」
「お、お前こそ・・超高速回転の疾風の刃で切り裂いてやる!って言ってただろ?」

彼らは子供といっても魔物。墓地が恐いなんてことは、万が一にもあり得ない。
彼らが恐いのは、人間なのだ。卑怯な手段を使い、魔物とみると一斉に襲いかかってくる この世で最も恐い鬼。
ゲネイオンは多分自分のエリアにテレポートしたのだろう。が、彼らはそうもいかない。
薄暗い洞窟内、道も分からず、怖さでなかなかそこから進めない彼らは、立ち止まって なんだかんだお互い言いあっていた。
とそんな彼らに近づく人間が1人。
レアブラスは、どろどろに溶けた金属を肉体とする生命体。遠目にかがり火とでも見えたのか?
とにかくその男は、ようやく見つけた火の明かりに喜び勇んで近づいてきた。
「あの〜・・・」
「ぎゃぁ〜〜っ!」
no9

ガラハッド:『うっぎゃぁ〜〜〜!』
[寄贈:箱さん (ありがとうございました)]

レアブラスを間に挟むようにして話をしていた3匹の子魔物は、暗闇からぬっと突き出るようにレアブラスの 火の明かりに照らし出されたその顔を見てびっくり仰天!そして、叫び声と共に瞬時に後ろの壁に張り付く。
そして、彼らと同様、明かりに照らし出されそれが何だったのか確認できたその男もまた、悲鳴を上げて後ろに飛び跳ね、 続いて、きびすを返すと闇雲に突っ走る。
「ま・・・ま・・魔物だ〜っ!」
と、運悪く壁に激突してしまった。
−ドシン!−
「あうっ!」
−バタっ!−
「あ・・あれ?」
壁にぴったりとくっついて震えていた彼ら3子魔物は、唖然とする。
そして、恐る恐る近づいて倒れた男の顔を覗き見る。
「こ、これって人間だよね?」
「う・・うん。多分。」
「でも、恐くないみたいだよ?」
「そ、そうだね・・・・。」
「ど・・どうする?」
「どうするって?」
「死んでないから・・やっぱりとどめを刺さないといけないのかな?」
「そ、そうなの?」
「どうやって?」
「どうやってって・・あ、あのさ・・あの・・・」

あれこれ言ってるうちに男は気を取り戻した。
「ぎゃあっ!」
そして、彼らと目を合わせ、声にならない叫びを上げる。
勿論、彼らも心臓が止まるかと思うほどどきっとした。

「ぷっ・・・くくく・・・ぶあっはっはっはっ!」
しばらくお互い目を丸くして見合っていたが、そのうち同時に笑い始めた。
「ど・・どうやら害意はないようですな。」
笑いを堪えながら男は、そっとストムクウの頭(?)の上に手を乗せて撫でる。
驚いたストムクウは少し離れたヒューバクのところへすっ飛ぶが、男に害意が ないことは、その一瞬の触れ合いで彼も感じていた。
じーーーーーーー・・・・・
またしてもしばらく無言で3匹とその男は見つめ合っていた。
−にこっ!−
その見つめ合いも、男の笑顔で終わり、そこには、和やかな雰囲気とともに 男の周りをくるくると回る2匹のクレイスフィアとそれを暖かく(熱く?) 見ているレアブラスの姿があった。

「さてと、いつまでもこうしていても何ですから、小生は、ぼちぼち・・・」
その場を離れようと男が歩き始めると、3匹の子魔物たちは、まるで とうせんぼをするように男を囲んだ。
そして・・・
『待って!人間のおじちゃん!』
「え?!」
男は耳を疑った。直接ではないが頭の中に子魔物のらしい声が聞こえていた。
「に、人間の言葉が分かるのですか?」
『人間の言葉っていうより、気持ちを読めたり、送ったりできるみたいだよ。』
嬉しそうにくるくる回りながら、答えるヒューバク。
「おおー!こ、これは、なんという・・まさしく、奇跡!すばらしいことです!」
目を大きく見開き、両手を広げて喜ぶ男。
「とすると、小生は、世界で初めて魔物と意志を通ずることができた人間ということになりますなー。」
がーっはっはっは!と嬉しそうに高笑いする。
「これがきっかけで、魔物との争いがなくなるといいのですが・・。」
『・・それは、無理だと思うな。』
「や、やっぱりそうでしょうか?」
『多分、ぼくたちが子供なのと、おじちゃんが変わってるって言おうか、普通の人間じゃだめだと思う。』
「ふ〜む・・・」
そう言われて、男は頭をぼりぼり掻いて考え込む。
「そういうものかも知れませんなー・・。しかし、またどうしてこんなところに?魔物の子供なんて初めて 見ましたが?」
『うん。実は・・・・』


ヒューバクたちは、事の次第をガラハッドと名乗ったこの筋肉質の大男に話し、協力を求めてみた。
「ふむふむ・・そういった経緯があったんですか。・・なるほど・・」
考え込むガラハッドをじっと見つめる3匹の子魔物たち。
「よろしいでしょう! 及ばずながら、小生、出来る限りの協力をさせていただきますよ!」
どん!と胸を叩くとガラハッドは言い切った。
『わあい!』
飛び上がって喜ぶ子魔物たち3匹。

そして、ここに、通常では考えられないメンバー、人間と子魔物3匹による奇妙な冒険が始まった。



【霊玉核を求めて(2)

(参)[お話]魔界幼年学校・Brandish-4組

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