dia-top.gif (8184 バイト)

【 ビッグウェーブ ユックル&ニックル 】
〜Diablo Story No8〜



 「今日も忙しかったでしゅね、ニックル。」
「うん、疲れましたでしゅよぉ・・。」
ここは双子のホビットの部屋。忙しかった一日が終わり、2人はベッドの横、ふかふかのクッションに座り、温かいミルクで就寝前の一時を楽しんでいる。
「ねーねー、ユックルぅ・・。」
カップを目の前のコーヒーテーブルに起きながら、ふと何かを思いついたように向かい側にいるユックルに声をかけるニックル。
「何?ニックル?」
同じくカップを置き、少し首を傾げるユックル。
「あのね・・ボクたちってさー、じいちゃが倒れてからお休みなしでしゅよね?確か?」
「うん、確かそうでしゅよ。それがどうしたでしゅか?」
「うん、でしゅから、そろそろ一回くらいお休みもらってもいいんじゃないかなー?と思うんでしゅけど・・・」
「うーーん、お休みでしゅかー。・・でもダンジョンに来る冒険家さんたちにはお休みなんてないでしゅよ。」
「でも、でも、でしゅよ、あの人たちは、勝手にお休みとってましゅよ。」
ミルクをこくっと一口飲むと、少し強い口調で言うニックル。
「それはそうでしゅけど・・でも、冒険家さんたちはいっぱいいるでしゅから、交代でダンジョンに来ましゅよ。でしゅから、ダンジョンが空って事は、まずないでしゅから・・・・。」
確かにじいちゃの変わりに武具を造ってダンジョンに納めるようになってから結構日数はたっている。自由に2人で遊んだ記憶が随分昔のような感じがする、とユックルは思った。
「でも、これは、神様から役目を仰せつかった大事なお仕事なんでしゅよ。」
「そんな事は分かってましゅよ。」
自分だけいい子ぶってるようなユックルを、ニックルは軽く睨んだ。
「でも、たまにはお休みがほしいでしゅよー。前みたく遊びたいでしゅ!」
「うーーーん・・」
本当は自分も遊びたいユックル・・でも、双子とは言え、一応自分が兄ということで、簡単にはニックルの話に乗れない。
困ったユックルはカップを持ち上げて中のミルクと睨めっこ。
「じいちゃはまだまだ治りそうもないでしゅしねー。」
ミルクを飲まずにカップをカタン!とおく。
−チャプン!−
その衝撃でミルクが跳ねる。
「そうでしゅよ!」
跳ねた後のミルクの波を見て、ユックルが声を上げる。
「な、なんなんでしゅか?いきなり?」
少し驚いたニックルが不思議そうな顔をする。
「ふふふふふ・・。」
「な・・なんなんでしゅか?本当に?」
何やら意味深な笑みに、さすがのニックルも思わずどきっとしてしまった。
「お休みなんて必要ないでしゅよ。って・・ほしくてもあの世界がなくならない限りだめでしゅよ。・・ううん、なくなっても多分ほかのダンジョンを任せられましゅよ。」
「あう・・・。」
じわ〜っと涙がニックルの瞳に溜まってきた。
「ユ・・ユックルの意地悪〜・・。」
ガチャン!と持っていたカップを置いて立ち上がると、ニックルはそのままドアに向かった。
「要するに遊びたいんでしゅよね?お休みじゃなくても?」
背を向けたニックルをユックルの言葉が追いかけた。
「?」
その言葉に不思議そうな顔をして振り向いたニックルに、ユックルは悪戯っぽく微笑む。
「遊べばいいんでしゅよ。与えられた時間の中で。」
「そ、そんなことできるんでしゅか?」
「モチロンでしゅよ!その気になれば、お仕事=遊びでいけるでしゅよ。」
「お仕事=遊び?」
「そうでしゅよ。思いっきり遊ぶんでしゅよ。」
「お仕事中にでしゅか?」
「うん!そう!なんでも楽しまなくっちゃでしゅ!」
「でも、お仕事はお仕事でしゅよ。」
「だから、きちんとお仕事をしながら、遊ぶんでしゅよ。」
「???」
「もう!分からない子しゃんでしゅねー、ニックルは。」
「・・・だって〜・・・。」
「じゃー、よ〜く分かるように、もっと具体的に言いましゅね。」
「うん。」
おいでおいでをするユックルに、ニックルは再びクッションに座る。
「あのね、今度ダンジョン行くときに、でしゅね〜・・」
「行くときに?」
「うん。その時にね、サーフィンしようでしゅ!」
「サ、サーフィンって?・・あ、あそこには海なんてないでしゅよ?」
「ふふふ・・お休みもらえないんなら、お仕事中に楽しんじゃいましょう
でしゅ!」
「だから、どうやってでしゅか?」
「ふふふ・・ストームデーモンでしゅよ。」
「ストームデーモン?cataやHellにいるおじしゃんでしゅか?」
「うん、そうでしゅよ。」
「あのおじしゃんたちとサーフィンって、どう関係あるんでしゅか?」
二人はミルクが冷めるのもかまわず、もう話に夢中。
「あのおじしゃんたちのサンダーストームに乗るんでしゅよ。」
「あ、あのサンダーストームにでしゅか?」
ニックルは意外なその言葉に驚いて目を見開いた。そして、次の瞬間その瞳からキラリと好奇心の輝きが放たれた。
「うふふふふ・・面白そうでしゅねー。ううーーーん、ライトニングウェーブ・サーフィンでしゅか〜・・。」
「そうでしょ?グッドアイデアでしょ?」
ニックルのその反応に、大満足のユックルも目をキラリ!
「うんうん!じゃー、今作成中の両手持ちの剣・・あれをもう少し幅広くして〜、で〜、ライトニング100%カットの特性をプラスしてでしゅね〜・・。」
「斧でもいいんじゃないでしゅか、ニックル?」
「そうでしゅね!それもいいでしゅねー!岩にぶつかってもいいように、スカッと切れるように・・。」
2人はもうワクワク!冷めてしまったミルクをぐいっと一気に飲み干すと、ベッドに入った。
「明日が楽しみでしゅ〜。」
「でしゅ〜。」
「お休みなしゃい、ニックル。」
「お休みなしゃい、ユックル。」

そして、しばらく興奮状態で寝付けれなかった2人も、いつしか夢の中。勿論、その日見た夢は、サーフィンの夢。迫り来るチェインライトニングの大波小波。その波に颯爽と乗り、風を切って進む2人・・岩壁までもその特製サーフボードの鋭い刃で切り裂きつつ・・。
「鬼さんこちら!手のなる方に!」
「ああ!ダメでしゅよ、ライトニングケチっちゃー!」
「おじしゃんたち、それでも魔物なんでしゅか?!」
同じ夢の中、2人は同時に叫ぶ。
『Come on、Big wave!!』
・・それは明らかに正夢!楽しい楽しいお仕事の夢。
が・・標的にされたストームデーモンたちにとっては・・正に、悪夢・・。
哀れ、ストームデーモン・・その魔力尽きるまで・・。

・・ああ、彼ら双子こそが『悪魔』・・・地上最強の小悪魔。

次の標的は・・ひょっとして・・・・あ・な・た・・?

 



<< THE END >>

 

【DIABLO】