dia-top.gif (8184 バイト)

【 双子旋風 ユックル&ニックル 】
〜Diablo Story No6〜



 ホビットの双子、ユックルとニックルは、名のある鍛冶職人の祖父の代行として、武具などを作り、創作の神から祖父に割り当てられたダンジョンへ、それらを納めている。
 でも、元来好奇心旺盛な彼らの事、思いついたものをどんどん混ぜて作る為、どんなものができるかは、本人たちですら見当もつかない。まだまだ子供の彼らは、自分たちの欲求のまま、今日もその原料を求め、次元を駆ける。

 そして、今日は・・・
「こんにちはでしゅ、ディアブロしゃん。」
なんと彼らの受け持つ区域の最深層、しかも最終ボスの所へやって来ていた。
「・・・・・・」
怖いもの知らずとはこの事。が、恐怖の魔王、ディアブロは、まだ再生途中の為、ぴくりともしない。
「ディアブロしゃん、寝ているんでしゅかねー?」
「・・・そうみたいでしゅよ。」
二人が巨大なディアブロの目の前で、そう話している時、ブン!と唸り音がし、10人ほどの黒騎士が転移の魔法で現れる。
「な・・何奴?」
侵入者を発見した彼らは、ばらばらと双子を取り囲む。
「な、なんなんでしゅか、急に?」
二人の3倍もあろうかと思われる彼らを見て、ユックルが思わず叫ぶ。
「ボクたち怪しいものじゃないでしゅよ。」
ニックルが落ちついて答える。
「怪しいものでないのなら、何者だ?」
黒騎士の一人が睨み付けながら聞く。
「ボク、ユックル!武器を作る〜!」
「ボク、ニックル!防具を作る〜!」
そして、声をそろえて歌った。
「ボクたち双子の鍛冶屋さん〜!今日も原料求めて、ゴーゴー!!」
黒騎士たちは、呆気に取られてきょとん。
「分かった?ボクたちこう見えても、ここのダンジョンを創作の神様に任されてるんでしゅよ!」
エヘンと得意気に胸を張る二人。
「鍛冶職人?ここを任されている?・・・お前たち、気は確かか?」
わーっはっはっは!と一斉に大笑いする黒騎士たち。
「本当でしゅよ。本来ならその世界の人達に、ボクたちの姿をみせてはいけないんでしゅけど、どうしても欲しい材料があってでしゅねー・・。」
「ほーう・・一体何なのだ、それは?」
「あのね・・それは・・ディアブロしゃんの角のかけらなんでしゅけど。」
「な・・何?!」
「ほんのちょこっとでいいんでしゅよ。削らせてもらえば・・。」
「な、何を馬鹿なことを!」
「ぶ、無礼なのもほどがある!」
−ジャキーーン!−
二人を取り囲んだ黒騎士が一斉に剣を抜く。
「あああああ・・・い〜けないんだ、いけないんだ!かーみ様に言ってやろ!」
一斉に斬りかかろうとした黒騎士は、拍子抜けする。
「あのでしゅねー・・いい大人が子供を取り囲んで、それもそんな危ないものを振りかざして、いいと思ってるんでしゅか?」
ユックルが隊長と思われる黒騎士に談判する。
「な・・な・・・・。」
あまりにも意外なことを言われ、黒騎士は、返す言葉もない。
「だ・・だ、だ、黙れー!」
そして、再び剣を構え直す。
「ふーーん、どうしても実力行使しゅるんでしゅか・・。」
ぐるっと見回してから、二人は向き合って手を繋ぎ、輪を作る。
「・・できるもんなら、やってみなしゃい!ボクたちは武器を作ってるんでしゅよ。武器は、みんなボクたちの下僕なんでしゅよ!」
「黙れ、こぞう!」
黒騎士が、二人に斬りかかろうとした時だった・・手にしていた長剣が宙を飛び、そして二人が作った輪の中へ行儀良く立って入る。
「な・・・何ぃ?」
驚く黒騎士に、ユックルが静かに言う。
「困った子ちゃんでしゅねー・・。すぉーいう悪いことをしゅる子は、お仕置きでしゅ!」
そして、ニックルが命令する。
「さあ、剣たちよ、お仕置きをしてやりなしゃい!」
輪の中の剣はふっと空中に浮かび、そして、一斉に自分たちの持ち主の額目掛けて飛んだ。
−シュン!シュン!シュン!−
−ザク!ザク!ザク!−
−ウオー!ウオー!ウオー!−
−シュン!シュン!シュン!−
−ザク!ザク!ザク!−
−ウオー!ウオー!ウオー!−
次々と倒れる黒騎士。
「安心しなしゃい、寸止めしてありましゅから。」
全員倒れたのを確認したユックルが静かに言う。
「ねーねー、ユックルぅ・・」
繋いだままの腕を揺すってニックルが言う。
「寸止め失敗したのもありましゅよ。」
見ると、突き刺さった剣の先から真っ黒な血が流れている。
「ち、ちょっと失敗しちゃいましたでしゅね。数が多すぎて、コントロールしきれなかったみたいでしゅね。」
「ん・・みたい・・・。」
「ま、いっか!」
「うん!まあ、いいでしゅよ!」
二人は、腕で作っていた輪を解く。すると額の上で直立していた剣は、力を失くし、パタン、と黒騎士の上に倒れる。
「お疲れしゃまでしゅぅ。」
「・・でしゅぅ。」
二人は剣に労をねぎる言葉をかける。
「でっとぉ・・・あとは、ディアブロしゃん、でしゅね−。」
「うん・・寝てるんなら、よじ登ってちょこっと削ってきちゃいましょうか?」
「うん、そうでしゅね。あんな大騒ぎしても起きないんでしゅから・・。」
二人はにっこりと笑みを交わすと、勝手にそうすることに決める。
「でも、おっきいでしゅねー。黒騎士しゃんの2倍はありそうでしゅよ。」
「うん。」
下から見上げたディアブロは、小さな二人にとって、まるで山のように思えた。
が、ひょい、ひょい、ひょいと、いとも簡単に肩まで駆け上がり、二人は、ごりごりと角を削って、持ってきた袋に入れる。その間ディアブロが動く気配はない。

 「ふーー・・これだけあれば、失敗してもまた挑戦できましゅね。」
「うん、そうでしゅね。念願の『アポカリプスの杖』!」
「うん!絶対成功させるでしゅよ!」
「うん!うん!」
二人がぺちゃくちゃ話しながらディアブロから下りた時だった、再び、ブン!
という移動魔法の音がして、大司教ラザルスが現れた。
「な、何者?お前たちは、ここで何をしているのだ?」
綺麗に円を作って倒れている黒騎士、そして、ディアブロの前にいる小人。ラザルスには、何が起こったのか、まるっきり検討がつかなかった。
「こんにちは。」
「こんにちは、おじいしゃん。」
すぐにでも火球で消し去ってやろうとしたラザルスは、丁寧にお辞儀をして、挨拶する二人に、毒気を抜かれ、あろうことかついつい返事をしてしまう。
「はい、こんにちは。」
そして、その瞬間、自分の間抜けさにじだんだを踏む。
それから、気を取り直して、杖を構える。
「お前たち、ここから生かしては帰さぬぞ!」
「ほらー、おじいしゃん、なんて言うから気を悪くしたんでしゅよ、きっと。」
ユックルがニックルを軽く睨みながら言う。
「そんな事言ってもぉ・・。」
「だって、ボクたちのじいちゃより若いでしゅよ、きっと。」
「・・そうでしゅねー・・5、60代ってとこでしゅかねー?」
ラザルスをじっと見つめて、ニックルが言う。
「お・・お・・お前たちぃ〜・・・!」
「ごめんなさい!おじちゃん!」
深々と同時に頭を下げて謝る二人に、怒りかけていたラザルスは拍子抜け。
「・・・。」
そして、はっとして、再び杖を構えなおす。
「そのような事、どうでもよい!とにかく、お前たちは、ここから生きて出る事、もはや叶わぬぞ!」
ブーン、特大の火球が杖の先に形成されていく。
「あ!その杖!」
ユックルが叫んで、トーン、と一跳びでラザルスの足下に。
「ねーねー、見て、見て!ニックルぅ!」
「え?何?」
ニックルもラザルスの所に一っ跳び。
「な・・・何なんだ、お前たちは?」
またしても、ラザルスは攻撃意欲を削がれる。
二人は、彼が手にしている杖をじっと見つめている。当然、火球はもう消滅してしまっている。
「これ、この間ボクが作ったものでしゅよ、ニックル!ほら、ここ!」
ユックルは杖の先を指さす。
「ホントだ!ユックルのイニシャルが彫ってあるでしゅ!」
そこには、確かにユックルのイニシャルがあった。だが、ホビット語なので、ホビット以外の者には模様としか取れない。
「・・・な・・なんだ・・こいつらは・・・」
呆気に取られているラザルスに、二人は親しみを込めて話しかける。
「この杖、15階の北にある宝箱で見つけたんでしゅよねー?」
「ねー、ねー、どんな具合、この杖?調子いいでしゅかぁ?」
「・・あ?・・・・う・・いや、あの、その・・・。」
二人のその物怖じしないあどけなさに圧倒され、たじたじのラザルスは、答えに詰まってしまった。
「ねー、ねー、どうなんでしゅか?」
「う・・いや、とても、調子がいい・・・が、それが?」
今や完全に毒気を抜かれ、すっかり二人のペースに乗せられたラザルスは、何気なく答えてしまっていた。
「わーーーい!嬉しいなーっ!」
飛び上がって喜ぶユックル。
「よかったねー!ユックルぅ!」
「うん!ニックル!」
自分の作ったものの調子を直接聞けるのは、これが初めての二人は、もう有頂天。しかも調子がいい!と言ってくれたんだから!
「よかったね!よかったね!」
二人は手に手を取り、ぴょんぴょん飛び跳ね、部屋中踊って回る。
「ランランラン!」
もうこれ以上ない上機嫌!そんな二人を、ラザルスはただただぽかーんと口を開けて見つめていた。何が起こっているのか、さっぱり理解できなかった。
「あ!」
踊るのを急に止めて、ユックルが叫ぶ。
「何でしゅか、ユックル?」
「早く帰って、新しい杖作るでしゅ!」
「あ!そうでしゅね!折角ディアブロしゃんの角を少しもらったんでしゅから。」
「な・・な・・何をしたのだ?」
ラザルスの頭はもう大混乱。
「あ、ちょこっと角を削らしてもらっただけでしゅよ。気にするほどじゃ、ありましぇんので。」
にこっとラザルスに微笑むと、二人は手にしていた小袋をみせる。
「じゃー、早速帰って作ってみましゅね!」
「・・みましゅね!」
そして、ラザルスにお辞儀をすると、二人同時に挨拶する。
「どうもありがとうございました。ディアブロしゃんが目を開けたら、よろしく言っておいてくだしゃいね!」
「・・・は・・・はあ・・・。」
「じゃー、ばいばいでしゅぅ!」
ラザルスに手を振ると、二人は手を繋ぎ、ジャンプの態勢に入った。
「・・ホップ、ステップ、ぢゃぁーんぷっ!」

・・・二人が姿を消した後も、当分の間、ラザルスは身動き一つせずにそこに突っ立っていた。今起きた事がまるっり理解できず、唖然として・・・。

「・・夢・・そうだ、夢だったんだ、・・忘れよう、忘れてしまおう・・。」



<<THE END>>

 

【DIABLO】