合成奥義秘話 

〜PlayStation版【BASTARD!!】虚ろなる神々の器・サイドストーリー〜



〜その弐・F.F.F.〜


 −コツコツコツ−
・・暗い通路に足早の靴音が響く。
−・・コツ・・−
それは、一つのドアの前で止まると、ドアを開ける音と変わる。
−ガチャリ・・−
−ギギィィィィ−
軋みながら開いたその部屋の中、足音の主は、奥にある小さな窓に寄りかかり、外を眺めている1人の女の姿に目を留めた。
長い亜麻色の髪を風に流させ、何やら唄を小さく口ずさんでいる。
「魔戦将軍、シェラ・イー・リー・・か?」
足音の主は、鬼道3人衆の1人、魔法戦士であるカイ・ハーン。
2人は、偶然にも奥義を伝授してくれるという、ここ『混派云堵(こんぱうんど)の塔』に来ていた。
ゆっくりとその視線を部屋に入ってきた女に移し、シェラは軽く微笑んだ。
活発な性格を表すかのように元気良く跳ねている艶やかな髪。均整のとれた身体を鎧で固め、 並の男など軽く震い上がらせてしまう鋭い眼光の持ち主。
「カイ・ハーン・・か。」
その視線を受け、シェラもまた鋭く返す。
「あと1人。」
「あと1人?」
「そう・・あと1人・・・この部屋が要求しているのは、女3人。揃わないうちは、技の伝授は行われない。」
「なぜ知っている?」
いぶかしげに聞くカイにシェラは、再び笑顔で答える。
「風の精霊が教えてくれた。ここでの合成奥義を修得する為には女が3人必要だと。そして、 修得しないうちは、何人たりとも、ここから出ることは叶わぬとも。」
「なるほど・・・それで、魔戦将軍ともあろう者が、のんびりしていたというわけか。」
「まー、そんなところ・・。」
「ふむ・・・・」
噂では聞いていたが、顔をあわせたのはこれが初めてだった。
2人はお互いの力量を測るかのようにしばらくじっと見つめ合っていた。
−ガチャリ!−
とその静けさを破るように、扉が開き、女が1人入って来る。
「やっと開くドアがあったわ!」
独り言を言いながら、中に入ってくる。
「あ、あれ?カイ、カイじゃないの?」
嬉しそうに叫んだのは、カイと同じ鬼道3人衆の1人、シーン・ハリ。
「シーン?お前もここへ来ていたのか?」
その意外さに驚きを隠せないカイが目を大きく見開いてシーンを見つめる。
「そうよ。強力な技を得るためにね。」
にこっと笑い返すシーン。
「なるほど・・・」
「揃いも揃ってD.Sに関係するほぼ全員が、この世界に引きずり込まれたということか。」
「らしい・・。」
目を閉じ、精霊のささやきに耳を傾けていたシェラが相づちを打った。
「で・・と、3人揃ったが、奥義はどうやってもらえるのだ?」
「さあ・・そこまでは、私も・・・」
と、シェラの言葉を遮るかのように、いかにもなまめかしい声が部屋中に響いた。
「そろったようねぇ〜ん・・それでは、早速奥義伝授といきましょうかぁ〜ん?」
「誰だ?!」
警戒したカイが背中の大剣に手を掛けて叫ぶ。
「あらあら・・そんな物騒な物に手をかけるものじゃないわよン。女の子でしょお? 私は、この部屋のマスター。あなたたちに奥義を授ける者なのよン。」
「ふん!マスターだかなんだか知らないが、男にならまだしも、女にそんな話し方 をしても気持ちが悪いだけだ。」
「まーまー、そんなにカッカしないで。せっかくの美人が台無しよン!うふっ!」
「オ、オレは、そういう男に媚びを売るような事が、一番嫌いなんだ!気分が悪い! ここから出してくれないか?」
「はいはい、分かりました。と言っても、技を修得するまでは、お出しできませんわ。 ということで、早速始めちゃいましょうねン!」
「だから・・その言い方止めろと言ってるだろ?」
「あらあら・・・じゃー、そうするわね。」
ふう・・、と大きくため息をつき、大剣からその手を離すカイ。
「では、早速伝授しますね。私の伝授する奥義というのは・・。」
「奥義というのは?」
カイが3人を代表して口にしたが、シーンやシェラもまた、ルームマスターの 次の言葉に神経を集中していた。
「奥義と言うのは・・・『魅惑』の技よ。」
「み、魅惑・・?」
3人同時にそう言ったのは、同じ悪い予感が脳裏を過ぎったから。
「そう・・お色気ポーズで、敵を虜にするのン・・。あ、あら、この言い方、気にいらなかったん だったわね。失礼。」
さらっと答えたルームマスターのその言葉に、悪い予感が当たったと、カイとシェラは愕然とする。
「お、お色気ポーズ?D.Sをたらし込んだシーンならまだしも(失敗には終わったが)・・オ、オレに男に媚びろと言うのか?・・・」
わなわなと腕を振るわせ、シーンを指さして声のする天井に向かって怒鳴るカイ。
「・・ミスキャストだな。私も下ろさせてもらいたい。」
シェラも静かに言った。
「私は、カル=ス様が配下。女であることは、疾の昔に捨てている。」
「あっらーーー、だめよぉ!ここへ入ったからには、何がなんでも修得していただきますわよ!」
「ならば、腕ずくで出してもらうだけだ。」
スラリと大剣を抜き、構えるカイ。そして、カイと同時に魔爪を出すシェラ。
「あらあら・・・そんな野蛮なことしちゃだめよぉ、女の子が。」
くすっと軽く笑うルームマスターの声。
「そんなことしても無駄よぉ!いい?!」
急にその口調がきつくなり、カイとシェラに激痛が走った。
「く・・・超音波か?」
いくら動こうとしても、身動きが取れない。
「ここでは、ルームマスターである私が全てなの。素直に従った方が身のためよ!」
「あ!」
カイの大剣が、突然出来た空間の隙間に吸い込まれる。
そして、シェラの爪は元に戻り、いくら魔爪を出そうとしても、伸びる気配は全くない。
「では、始めましょう。ここから出たければ、素直に従い、少しでも早く修得することです。 いいですね?」
こうして、手も足も出ず無言のうちに了承したカイとシェラ、そして、シーンの修行が始まった。

「じゃあ、カイが前面ね!その後ろにシーンとシェラがついて・・・はい、そこで悩殺ポーズ!」
「な・・何故オレが前なんだ?」
「あら、だって、カイの鎧って、お色気たっぷりでしょ?胸なんか半分以上みえてるし。シェラはしっかり全身包んでるから。」
「う゛・・・・」
「ほらほら、もっと笑って!女の子でしょ?今だけは、戦士であることは忘れるのよ!それに・・」
「それに?」
「メロメロになった所をぐさっと刺し殺すのもなかなかいいもんよ。」
「・・・・」
もはやルームマスターに逆らう気力は消え失せていた。
「ルームマスターが男だったら、セクハラで訴えてやるところだぞ!」
とカイが小さく呟いたとか・・・?
とにかく、修行は修行。こうして修行は進み、無事奥義の伝授は終わった。


技 名  F.F.F.
キャラ カイ・ハーン,シーン・ハリ,
シェラ・イー・リー
属 性 無し
消費MP 19
形 態 連続3人
範 囲 1×1
効 果 ダメージ+魅了

部屋を出て、別々の方向へと歩いていく3人の後ろ姿は、以前と打って変わってお色気たっぷりになっていた。
恐るべしルームマスター、恐るべし条件反射。
その我が身を姿見で見たシェラは、そのままでは、カル=スに女である事が ばれると真っ青になり、迷いの森でのリハビリにあと数日を費やしたのだった。
可愛そうだったのは、鬼人と化したシェラの魔爪の標的にされた魔物たち。その勢いには、 精霊たちもしばし近寄らなかったとか・・・。

xxxxx 後 日 談 xxxxx

魅了させ、その隙を狙って攻撃をする、というのはいいとして、どうせなら 敵にそんな色気をみせないで、俺様に!というD.Sの意見。そして、何よりも ヨシュアが大反対をして、その技は禁止となった。
だいたい、技を出そうと隊列を組むと、カイの前にヨシュアが仁王立ちして敵を睨み付けるものだから、 必要がなくなってしまったという理由もあった・・・。
ともかく、シーンはちょっとがっかり、そして、カイとシェラは、ほっとした結果に終わった。

 




xxxxx お・わ・り xxxxx


貴重なお時間、ありがとうございました!(^-^)

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