合成奥義秘話 

〜PlayStation版【BASTARD!!】虚ろなる神々の器・サイドストーリー〜



〜その壱・不死身アタック〜


それはそれは、雲一つ無い青空の下、魔戦将軍バ・ソリーは、 迷いの森を彷徨ったあげく、ようやくその中心にあると思われる、 伝説の塔、奥義を与えてくれるという『混派云堵(こんぱうんど)の塔』 を見上げていた。

「うーーん・・これが、混派云堵の塔か・・・」
迷いの森にその四方をぐるっと囲まれた巨大な塔。その頂上は、遥か上空まで 続いており、精一杯背伸びをしても確認することはできない。
遠目ならば、見えるかもしれない・・が、容易にはここへはたどり着けなかった。
バ・ソリーはここまでの苦労を振り返っていた。
まるでその行く手を遮るかのように、もつれ合って生い茂る木々や蔦。様々な吸血虫や植物。 襲い来るどう猛な獣。決して晴れることのない霧。
確かに塔に出たこと事態、幸運だった。
今まで幾人、いや何百人の戦士や魔導士が、奥義を修得しようと、 この塔を目指して帰らぬ人となったことか・・・。
相当の実力と運を持ってしても、容易にたどり着ける所ではなかった。
また、たとえ、たどり着いたとしても、簡単に奥義を修得できるものでもない。

「ふう・・・打倒、虚神・・か・・その為には、ここで、合成奥義とかいうものを 修得する必要があるんだったな・・・。他の奴らどうしてるかな?、もう入ったのか、それとも まだ迷いの森に捕らわれているのか・・・?」
被っている網傘を上げ、しばし頂上の見えないその塔をじっと見上げるバ・ソリー。
「森に入ってすぐばらばらになってしまったからな・・・。」
ここは、バ・ソリーたちのいる世界ではなかった。どういう弾みかは分からない。が、 いつの間にかこの世界へ引き込まれてしまっていた。
ここから出る為には、虚神を倒さなければならない。そして、その為に、より強力な技が 必要だった。
お互い知らずにはいるが、この森に足を踏み入れたのは、バ・ソリーら魔戦将軍のみならず、D.S、四天王、鬼道3人衆、そして侍たちも だった。
そして、魔戦将軍たちは、森に入ってすぐ襲いかかってきた猛獣や植物との戦闘のうちにばらばらになってしまっていた。
その後、ここへ来るまでの道筋はおろか、塔の前でも、誰1人としてその姿は見かけない。

「ま、とにかく入るしかないだろうな・・・。」
バ・ソリーは、今一度仲間の姿を探して森にその視線を流すと、その大きな木の扉に手をかけた。
−ギギギギギィィーーーー−
大きく軋みながら開いたそこに見えたのは、ぽっかりと口を開いたような感じの暗闇。そして、 何やらただならぬ気配・・・。
「よ、よーーし!入ってやろうじゃないか?!野郎ども行くぜ!」
バ・ソリーは、お腹の中の可愛い蟲たちに声をかけると、塔の中に足を踏み入れた。

「な・・なんじゃ、こりゃー?」
予想はできたのだが、塔の中の迷路は、複雑なんてものではなかった。
感の鋭い蟲たちも、方向感覚を無くしたのか、助言にはならなかった。
「うるさいぞ、お前ら!分かんねーなら、ごちゃごちゃ言うなよ!」
可愛い蟲たちに怒ったことのないバ・ソリーも、いらついていたのか、ついつい怒鳴ってしまっていた。
「ふう・・横にある扉は一つも開かないしよ・・同じ所をぐるぐる回ってるみたいだし・・・、
かといって、今となっては、出口もどこだか分からねーし・・。どうなってんだ?」
ぶつぶつ言いながらも進むバ・ソリー。
−ギギ・・−
「お?」
バ・ソリーの目が輝く。それまで一つとして開いたことのない扉。
それもまたそうだろう、とは思いながら、それでも押してみたバ・ソリーは、 一つ事が展開したと喜んだ。
中は暗闇に慣れたとはいえ、一段と闇に覆われていた。
−シュン!−
何かがバ・ソリーに狙いを定めて襲いかかる。
「おっと・・。」
が、瞬間に、その攻撃筋を見切ったバ・ソリーは、紙一重の間で軽く交わす。
「俺様を襲うとは、身の程知らずも程がある。それでなくとも、同じような通路 ばかりで、退屈してたんだ。俺様も、そして、蟲たちもな・・。」
いい退屈しのぎになるな、とバ・ソリーがにやりと口元を上げる。
「蟲たち・・・と言うことわぁ・・・・」
バ・ソリーのセリフを聞いた相手が、暗闇の中で呟いた。
「ぬあ〜んと・・蟲マニアのバ・・・はて?・・なんと言いましたっけ?・・・うう・・私の美意識が 記憶するのを拒んでしまったようですよ・・思い出せませんねー・・うぷぷぷぷっ!」
軽い笑い声と共に、部屋の窓を覆っていたマントをたたんだそれは、間違いなく鬼道3人衆 が1人、吸血鬼伯爵のダイ・アモン。
「む?なんだ・・よりによってバンパイアか・・・・」
相手がダイ・アモンと知って緊張を解くバ・ソリー。
「よりによってとは何ですか?このビューチホーで、パワフリャーな私に向かって・・。 ここで逢った事を感謝すべきなのですよ〜。私がいるからこそ、無事塔から出れるというものです。」
「な〜にを言ってやがる。大方この部屋から出れなくて困ってたんだろ?」
自信たっぷりに、そして、恩着せがましく言うダイ・アモンを蔑視するバ・ソリー。
「し・失礼ではありませんか?!私は、D.S様の次に美しく、そして、D.S様の次に強い鬼道3人衆が1人、 不死身の吸血伯爵、ダイ・アモンですよ!魔戦将軍など、愚の骨頂・・。比べ物になりませんよ。」
わーっはっはっはっはーっ!と大笑いするダイ・アモンを静かに見つめるバ・ソリー。
「ふん!俺様だって不死身だ。吸血豚など怖くないわ!それにだ・・もし、ここから出れるのなら、とっくの 昔で出てるだろ?何も好きこのんでこんなところにいなくてもいいじゃねーか?」
「き・・き・・吸血豚とはなんですか!豚とは!・・そう言うお前は、蟲マニアのきのこのおっさんでしょぉ〜?!」
図星を指され、ダイ・アモンの声は少しうわずっている。
「きのこのおっさんで悪かったな。じゃな、お前と遊んでる暇はないんだ。」
くるっと向きを変え、入ってきたドアを明けようとするバ・ソリー。
「ん?・・・・開かないぞ?」
ドアノブをがちゃがちゃさせ、押したり引いたりするバ・ソリー。が、ドアはびくともしない。
「おっかしぃなぁ・・・さっきはすんなり開いたんだが・・・?」
「と・・ということわぁ・・・ひょっとして・・・」
ダイ・アモンの焦りを含んだ声に彼を方を振り向くバ・ソリー。
「ひょっとして・・何だ?」
「い、いや・・実は、出ようとすればいつでも出られるのを我慢して、ここにいるのは、 奥義を修得するためなのですよ。」
(うそこけ!)
バ・ソリーは、頭から信用していない。
「で?」
「この部屋の奥は無限状態になっている。つまり、ここは、数ある奥義修得の部屋の 一つなんですよ。」
「そうなのか?それは願ったり叶ったりじゃないか?」
顔にペイント(?)してるので分からないが、口調から判断すると、今のダイ・アモンの顔色は 真っ青だと判断でき、それがなぜだか分からないバ・ソリーは、不思議そうに聞いた。
「この塔は、合成奥義、つまり1人で放てる技でなく、だれかと協力して放つ技 を修得するところなのですよ。」
「ああ、それくらい知ってるぜ。だからここに入ったんだ。最も仲間とは、はぐれてしまったけどな。 まー、そのうち会えると思うんだが・・。会えたら、気の合いそうな奴と一緒に修行しようと思ってるんだ。」
「甘い・・甘いですよぉ〜!」
絶望的にダイ・アモンが弱々しくそして、いかにも悲しげに吐く。
「甘いとは?」
「あああ・・・・よりによって・・・」
へにゃへにゃと、頭を抱えてそこに座り込んだダイ・アモンにバ・ソリーはゆっくりと近づいた。
「どうしたんだ、いったい?」
「奥義修得の部屋からは、その奥義を会得するまで絶対出られないのですよ・・。」
「当たり前だろ?普通そうじゃないのか?」
ようやく本当の事を言った。しかし、それが、なんだんだ?といぶかしげにバ・ソリーは問う。
「つまり・・・今から修得する奥義の相手にあなたが選ばれたということなのですよ・・・」
「な・・なにぃーーーーっ?!」
恨めしそうな顔でバ・ソリーを見上げるダイ・アモンの口から出た答えは、バ・ソリーをも錯乱状態に 引きずり込もうとしていた。
「つ、つまり・・何か?お、俺様とお前とコンビで・・お、奥義を・・?」
「・・ということになりますねーー。」
2人は、しばし、絶望感と共に見つめ合っていた。

−パッ!パパパパパーーーーッ!−
突然、虹色のスポットライトが2人を照らし始める。
あまりにも予期せぬ出来事で、2人がぽかんとしていると、どこからか声が聞こえてきた。
「はぁぁぁぁい!私、この部屋の管理人さん、ルームマスターですよぉ〜!ダンス奥義修得ルームにようこそ!」
ハイティーンらしい少女の軽い声が部屋中を踊る。
「さー、奥義修得までみっちりしごくからねー!覚悟してねー!」
「ダ、ダンスぅ〜・・?」
バ・ソリーの目が点になる。
「おおーー!も、もしかして処女?」
沈んでいたダイ・アモンの目が一瞬にして輝く。
−ピッシャーーン!−
その途端に、雷がダイ・アモンを直撃する。
「甘い事言ってんじゃないの!さっさと始めますよ!では、手を取って!」
「手・・を?」
ぷすぷすと焦げているダイ・アモンの横でバ・ソリーがすっとんきょうな声を上げる。
「どういう奥義なんだ?」
そして、横のダイ・アモンをまるで不潔な物でも見るようにちらっと見る。
(なんで、こんな奴の手を・・・!!)
「この部屋の奥義は、ダンスなんです。ということで、お二人には、ダンスを修得して いただきます!」
「な、なんでダンスが奥義なんだ?」
姿が見えないので、天井に向かって怒鳴るバ・ソリー。
「なんででもです!とにかく奥義を修得するまで、出しませんからね。やりたくなければ、それはそれで 構いませんよ。一生ここにいるだけですから。・・・それもお2人で。」
「う・・・・・」
2人ともお互いこんな奴とダンスなど死んでもいやだ!と思っていた。が、奥義の修得は必要であり、 何より、ここから出たかった。こんな奴と一刻も早く別れる為にも、それは、必要条件だった。
それに・・お互い限りなく不死に近い2人・・それは、死ぬまででなく、永遠に2人でここにいる事を 意味している。そんな事は、到底耐えられない・・・。
「し、仕方ねーな・・。」
「ふーー・・、私の美意識には反しますが、仕方ありませんね、」
2人は、自分自身に言い聞かせながら、手を差し延べた。
が、震える2人の手は、指先をくっつけた状態で止まる。
「こらーーー!もっとぎゅっと握らないとだめですよーー!そんなんじゃ奥義は放てません!」
天井から甲高い怒鳴り声が降ってきた。
「・・・・・・・・・・」
気持ちが悪くて目眩がしそう、吐き気までもよおして、我慢できそうもない2人だった。が、 必死に自分自身に言い聞かせて、向かい合う。
そして、視線を避けながら、両手を合わせる。
(お、おえーーーーーー・・・・・)
2人の心情は全く一緒だった・・・ひたすら堪え忍ぶ、これしかなかった。
(かわい子ちゃんとまでもいかなくても、せめて女の子なら・・・)
目の前にいる野郎をちらっと見、その途端に絶望と吐き気に襲われた。
どう自分に言い聞かせても、直視に耐えられない。
がっしりタイプの肉体派吸血鬼とそのお腹の中に寄生させているという蟲マニアの中年男のダンス。 直視に耐えられないのは、本人だけではないだろう。
「それでは、修行開始します!」
『シャ〜〜ウィ〜・・ダンス!チャチャチャ・・Shall we dance?♪・・・』
音楽が流れる中、スポットライトを浴びたダイ・アモンとバ・ソリーの修行が始まった。

それは、ひたすら苦痛(心の)と忍耐の修行だった・・・。
そして、数日後、その苦痛に耐えきれなくなったダイ・アモンが、ダンスの最後に自らを爆発させ、敵へのダメージの相乗効果を 狙うという技となって完成した。

技 名 不死身アタック
キャラ バ・ソリー,ダイ・アモン
属 性 無し
消費MP 13
形 態 連続2人
範 囲 1×1
効 果 ダメージ+ランダム効果


「つ、使うのか・・・こ、これを・・・?・・し、しかも・・ひ、人前でぇ〜?!」
ようやくその部屋から解放された2人は、げっそりと痩せこけ、顔は真っ青。
呟く声も消え入りそうなほどか細い。
2人は部屋から出ると、別に言葉を交わすわけでもなく、足取りも重く二手に分かれて通路を去っていった。
(技の披露・・・させられるんだろぉなぁ・・・・・)
仲間と会うのが怖くなった2人だった・・・。

xxxxx 後 日 談 xxxxx

吐き気を催して、敵を戦闘不能にさせ、自爆で倒すのは、いいのだが、 味方まで吐き気で戦意喪失、最悪の場合には、失神してしまうという欠点が発覚。(当たり前 /^-^;)
それに加えて、当の本人たちの「できるならしたくない」という趣旨をのんで、禁止技となった・・。



xxxxx お・わ・り xxxxx


貴重なお時間、ありがとうございました!(^-^)


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